陳澄波氏の作品と孫の陳立栢さん=陳澄波文化基金会提供

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(嘉義 25日 中央社)山口県立大学国際文化学部の教員と学生の一行は24日、日本統治時代に活躍した台湾の画家、陳澄波の理念やその故郷である嘉義について理解を深めようと、陳の作品を紹介する展示室が設置されている嘉義市立博物館を訪問した。訪問の背景には、昨年山口県内の図書館で見つかった陳の絵画の存在がある。

その作品「東台湾臨海道路」は、第11代台湾総督を務めた上山満之進が退任前、台湾の風景を日本に持ち帰りたいとの思いから、陳に依頼して製作した絵画。防府市立防府図書館の書庫に眠っていたところを、同市の歴史執筆に携わる研究者の児玉識さんによって発見された。同図書館は上山が遺した資金で建てられた三哲文庫を前身としており、陳の絵画は開館時に上山家から市に寄贈されていた。

児玉さんは陳澄波文化基金会に連絡した後、昨年8月に訪台。陳の孫で、基金会董事長(会長)の陳立栢さんらとともに絵画が描かれた場所を探し出した。

この日博物館を訪問した安渓遊地教授によると、一行は滞在中、上山が阿里山を視察した際の路線も巡る。上山が陳に製作を依頼した理由を探りたいとしている。

立栢さんは、作品が85年後に日本で見つかったのは「奇妙な縁」だと語る。児玉さんから連絡を受けて作品を確認しに行った際、保存状態が良好なことに驚いたという。だが、現在分かっているのは表面的な情報だけだとし、作品の背後にある意味の探求はスタート地点に立ったばかりだと今後の研究に期待を示した。

(江俊亮/編集:名切千絵)