赤澤燈 「人見知りだけど人が好き」 “人間力”で座長として引っ張る!
マントのついた衣裳を身にまとったこの男が現れると、都会の高層ビルの一角が、一瞬で巨大な漂泊船“泥クジラ”に変わった。ミュージカル『テニスの王子様』、『リボンの騎士』など次々と話題の舞台に出演し、注目を集める赤澤燈。独特の世界観で人気の同名漫画の舞台化となる『クジラの子らは砂上に歌う』では主演を務める。「とにかく楽しみで仕方がない」――。自他ともに認める“人見知り”の座長の顔は期待に輝いていた。

撮影/平岩亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

泣きながら家路につく日もあります



――梅田阿比さんの原作漫画は緻密かつ壮大な世界観が特徴的です。どのように舞台化されるのか、正直、想像がつかないのですが…。

僕は実は、いわゆる2.5次元の作品への出演が多いわけではないんです。『テニスの王子様』、『リボンの騎士』、『ライチ☆光クラブ』くらいかな…? だから最初に話を聞いて、漫画を読んで「これは大変そうだな…」って思いましたね。

――砂の海に浮かび外界から閉ざされた漂泊船“泥クジラ”に暮らし、不思議な超能力“サイミア”を操る人々が、外からやってきたひとりの少女との出会いをきっかけに戦いに巻き込まれていくというファンタジーですね。

原作の画のタッチもすごく繊細だし、そもそも砂の世界を舞台でどうやって表現するんだ? とも思ったけど、やっぱり、舞台って想像をかき立てるものだと思うんです。そう考えると、舞台化するのにぴったりの作品なんじゃないか? って。



――この壮大な原作を「舞台化にぴったり」と思える感性がスゴいと思います!

演じる側にとっても面白そうなんですよね。僕自身、好きな漫画が映画化や舞台化されるって聞くと「マジかっ!」って思っちゃうんですけど(笑)、それって興味の表れでもあると思います。じゃあ、舞台化する上で原作に寄せるのか? 舞台独特の世界の良さを前面に出すのか? そういう選択肢も含めてどう作っていくのか楽しみです。

――赤澤さんが演じる主人公・チャクロは14歳の少年ですね。

まだまだ発展途上の14歳なので、ちょっとずつ成長していく姿を見せられたらと思ってます。すごく泣き虫なんですよ。僕も普段、泣き虫なので、そこは同じだなって(笑)。



――よく泣くんですか? どういうシチュエーションで…?

映画とかを見て感動して泣くこともあるし、舞台の稽古で追い込まれて、駅から家に帰る途中で泣いてることもあります(苦笑)。涙もろくなったというか、泣くとスッキリするってわかっちゃったんですね。お酒も好きなので、酔うと余計に泣けてきちゃいます(笑)。

――稽古が終わってみんなで飲みに行って…

稽古がしんどくて、終わってからパーッと飲んで、泣いて…(苦笑)。そういうところも含めて、チャクロと一緒に強くなっていけたらと思います!(笑)



――共演陣も初めての方が多いですね?

そうなんです。ここ最近は、知っている人ばかりの現場が多かったんですけど…。人見知りだから、新しい人と会うのは不安なんですけど、今回は座長ですからそうも言っていられないので、みなさんを巻き込む形で盛り上げていきたいですね。

人見知りだけど、「ひとりでいるのはイヤ(笑)」





――共演と言えば、以前、染谷俊之さんにお話を伺ったとき、赤澤さんを「最多共演者」と仰ってました。

僕にとっても染ちゃんが、最多共演者ですね。映画も一緒に出たし、そもそも僕の初舞台(美童浪漫大活劇『八犬伝』)から共演してますから。年齢は染ちゃんのほうが2つ上なんですけど、普段から仲がいいんです。

――染谷さんは“おひとり様”でいるのが心地よいと仰ってましたが、赤澤さんだけが例外的な存在なんでしょうか?

どうなんでしょうね?(笑)僕はひとりでいるのは好きじゃなくて、むしろ誰かといたいタイプなんですけど。染ちゃんとはご飯もよく行くし、家に泊まりに行ったりもしますよ。でも、そうやってひとりと仲良くなると、ずっとその人とばかりいる傾向があるので…今回は座長として、早くみんなと打ち解けたいです。

――人見知りなのに、ひとりでいるのはイヤなんですか?(笑)

そうなんですよ。一番、タチが悪いタイプかもしれないですね。自分からは行かないのに「みんな、仲良くしてきてよ〜」って思ってる。仲良くなる準備だけはできてます!(笑)



――人見知りを自認されてる一方で、舞台で演技し、共演陣と絡むことがすごく楽しそうで、演じることが好きなんだということが言葉の端々から伝わってきます。

めんどくさい性格ですけど(笑)、人見知りなのに、人が好きなんですよね。1か月弱の稽古期間で知らない人たちとひとつの作品を作り上げていく。それがすごく楽しいですね。

――公演期間中も含め、ほぼ毎日、顔を合わせて、密度の濃い時間を過ごすことになりますね。

映像作品と違って1回きりではなく、毎日公演があって、やはり舞台は生ものなので空気感は毎回違うんです。その刹那的な部分もたまらないですね。

――それだけ濃厚だからこそ、公演が千秋楽を迎えると、切なくなってしまいそうですね。

特にひとつ前の公演は、帰り道で泣くくらい(苦笑)、追い込まれていたので、それだけ没頭していたものがパッとなくなってしまうと寂しくて…。いつも、ひとつの公演が終わると早く次の稽古を始めたくて仕方なくなります。