学生の窓口編集部

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紙おむつや生理用品のCMで耳にすることもある「高分子吸収体」。「吸収性ポリマー」などと呼ばれることもある、その物質の正体は、白色で顆粒状の「ポリアクリル酸ナトリウム」です。

高分子吸収体は、一度、水分を吸収すると、粘性のあるゼリー状に変わり、簡単に離水しないため、その特性から、紙おむつや生理用品など、さまざまな製品に利用されています。現在、食品などの保冷には、ドライアイスより「保冷剤」が主流ですが、保冷剤も、まさに高分子吸収体を水に溶かして袋詰めしたもの。急な発熱時には、高分子吸収体が含まれる紙おむつを水に浸して冷凍すると、即席の保冷剤が作れるので、覚えておくと便利ですね。

■「高分子吸収体」の性質・用途

アイスクリームやケーキ、冷凍食品などの冷却にはドライアイスが定番でしたが、マイナス79℃の二酸化炭素のかたまりであるドライアイスを、直接触って凍傷を負う/二酸化炭素中毒を起こすなどの事故がおきる危険性があるため、現在はあまり見かけません。代わりに主流となっているのは、自重の500〜1,000倍ほどの水を吸収/保持できる「高分子吸収体」を主成分とする「保冷剤」です。白色のサラサラとした顆粒状の高分子吸収体は、一度、繊維の網目に水分を吸収すると、粘性のあるゼリー状に変わり、圧力をかけても簡単に離水することはありません。その特性から、保冷剤や紙おむつ、生理用品のほかにも、

・スーパーで売られている肉や魚 … トレー上にシートをしき、水分を吸収する

・ペットのトイレ … 砂+高分子吸収体で、ペットの尿を吸収

・野菜や観葉植物、砂漠で育てる植物の保水 … 土+高分子吸収体で保水

・飛行機内の防水 … 貨物からの水漏れに備え、倉庫内の壁を防水加工

など、吸水性/保水性を要する身近な製品に、幅広く利用されているのです。

■保冷剤の仕組み

保冷剤は、全体の2%ほどの高分子吸収体を水に溶かして袋詰めしたもの。水を加えてゼリー状にすることで、内部の対流が起きにくく、溶け始めても循環しにくいので、氷より20%ほど長く冷却することが可能なうえ、繰り返し使えて経済的です。成分のほとんどが水でできているため安全性が高く、万が一食べてしまってもほぼ無害と言われていますが、乾燥時は粒0.3mmほどの微粒なため、吸い込むと肺の内部の水分を吸い取ってしまう危険性があります。紙おむつや生理用品の高分子吸収体も、急な発熱時などに「即席保冷剤」として使えますが、分解せずにそのまま水に浸し、冷凍して急場をしのぐ…に留めておいたほうが安心でしょう。

また、保冷剤が知らず知らずのうちに冷凍庫に溜まり、使い道に困る! 捨てるべき? と悩ましい場合は、解凍してゼリー状の高分子吸収体を小瓶にうつし、アロマオイルなどを垂らして芳香剤を作ったり、雑巾につけて鏡を拭くと、水垢や汚れを吸収し掃除にも役立つので、再利用してみるのもオススメですよ。

■まとめ

・保冷剤や紙おむつに使われている「高分子吸収体」の正体は、「ポリアクリル酸ナトリウム」

・高分子吸収体は、自重の500〜1,000倍ほどの水を吸収でき、一度吸水すると、粘性のあるゼリー状に変わり、簡単に離水しない性質を持つ

・高分子吸収体が含まれる紙おむつを、水に浸して冷凍すれば、即席の保冷剤が作れる

・「約2%の高分子吸収体+水」で出来たゼリー状の保冷剤を袋詰めすると、氷より20%ほど長く冷却できる

(熊田 由紀/ガリレオワークス)