「結婚は?」「男のくせに!」 男性も傷つく無意識セクハラワードとは…

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元フィギュアスケーターの安藤美姫さん(27)が、テレビ番組で「男のくせに」「男なのに」と連発して、ネット上で物議を醸したことが報じられています。こうした発言は、発するほうはあまり意識していなくても、なかには性的な差別的言動として受け取り傷つく人がいます。
近年では、「男らしく」「女のくせに」「結婚はまだ?」「彼氏(彼女)いるの?」など、これらがたとえ同性からの言葉であったとしても、職場でのこうした発言がセクハラに該当する可能性も出てきました。これは、昨年7月に施行された改正「男女雇用機会均等法施行規則」によるものですが、コミュニケーションのつもりで気軽に口にした言葉が知らないうちに「セクハラ」と取られてしまわないためにも、「セクハラって一体何なの?」という定義についておさらいしておきましょう。

セクハラが該当するケースは幅広い


もともと職場におけるセクシュアルハラスメントでは、性的な言動に拒否や抵抗をした労働者に対して、解雇や降格、減給、取引停止といった不利益を与える「対価型」と、性的な言動で職場環境を悪化させる「環境型」の2種類が定義されていました。

またこれまでセクハラは、男性から女性に対しておこなわれるものというイメージが圧倒的に強く、問題となる行為も「性的な冗談・からかい」「体に触る」「性的な関係を要求する」といった内容でした。
しかし、「性別に関わる言動で相手を傷つける」行為もセクハラとして問題となることが増えています。

一昨年、大阪市の中学校の校長が、女性教職員に「なぜ結婚しないの?」と質問し、教職員からの抗議を受けて謝罪した事例がありましたが、こうした「結婚」や「恋愛」に関する話も、相手が不快と感じ「心身に重大な影響を受けた」場合は、セクハラに該当する可能性があります(上記の例は当時はセクハラと認定されず)。

表面化しにくい同性間のセクハラ


また冒頭で紹介した、改正「男女雇用機会均等法施行規則」では、従来のセクハラに関する表記に加えて、「職場におけるセクシュアルハラスメントには同性によるものも含まれる」という条文が明記されました。

同性間でのセクハラは、表面化しにくく、問題になりにくいという面があり、そのことが問題を深刻化させてしまう場合があるのです。

たとえば、男性同士では、上司や先輩が、イヤがる部下や後輩を風俗店に連れて行く行為や、宴席で衣服を脱ぐことを強要する行為がセクハラに該当しますし、女性同士では「彼氏」「結婚」「子ども」「妊娠」といった話題も、言い方や相手の受け取り方によってはセクハラになってしまう可能性があります。

さらに、職場においては、「男だから」「女だから」というだけの理由で、本人の能力や資質とは関係なく、力仕事やお茶くみといった仕事を割り振られたり、本人の望まない部署に配属されたりという「性差別」に基づくセクハラがおこなわれるケースもあります。こうした行為の根底には、「男性はこうでなければならない」「女性はこうあるべき」といった旧来の固定観念がまだまだ根強く、その延長線上に「男らしく」や「女のくせに」といったセクハラにあたる物言いが存在するともいえるでしょう。

処分の対象となることも


男女雇用機会均等法では、「職場のセクハラ対策」は事業主の義務とされており、企業がこの義務に違反し、是正勧告にも応じない場合には、企業名が公表されるなどの行政処分がおこなわれる場合もあります。

現代は、生まれ持った性別以外にも「どのような性を生きたいか」「どんな性を生きるのが自然か」ということや、恋愛対象の性別などについても、多様な選択肢が認められつつある時代。これまでの、「ある一定の年齢になったら結婚していたり、恋人がいたりして当たり前」といった考え方は通用しなくなりつつあるのかもしれません。

セクハラの定義が広がることについては、自由に発言が出来なくなる「言葉狩り」に通じることが懸念される部分もありますが、少なくとも公共の場である職場・オフィスにおいては、「知らない間に相手を傷つけない」ためのマナーとして、セクハラへの理解は深めておく必要があるといえるでしょう。

<参考>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151113-00000001-jct-ent

(安藤美姫、今度は「男のくせに」連発で炎上 「好感度低い」自覚しているのに、また反感買う J-CASTニュース)

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/sekuhara1.pdf

(職場でのセクシュアルハラスメント相談窓口 厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/120120_05.pdf
(職場におけるセクシュアルハラスメントの種類は 厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/sekuhara_1_3.pdf
(改正「男女雇用機会均等法施行規則」 対照表・当該部分 厚生労働省)