伝説の不条理四コママンガ『GOLDEN LUCKY 完全版』Kindle版が199円なう

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『GOLDEN LUCKY 完全版 (上)』(榎本俊二)がKindle月間セール中で199円である。


『モーニング』で1990年から約6年間連載された伝説の不条理ギャグ四コマ漫画。全10巻の単行本で出ていたが絶版。その後、上中下の分厚い三冊組で完全版が出た。Kindle版はこの完全版を電子書籍化したものだ。

しりあがりにやみつきに


いがらしみきお『ネ暗トピア』で四コマ漫画が実は新しい形式になりえるのだと興奮し、吉田戦車の『伝染るんです。』の不条理さに四コマ漫画まだ進化するのかと驚き、『GOLDEN LUCKY』で行き過ぎた行き過ぎちゃったと人類の滅亡を心配する気持ちになったあの青春の日々を思い出しながら、いま『GOLDEN LUCKY』が読める幸せ。

最初読んだときは何が何だかまったく判らず、どうしたんだ『モーニング』だいじょうぶか?と思ったものだが、読み続けるうちに何が何だかまったく判らないのは判らないまま妙に癖になってきて、しりあがりにやみつきになってくる。
『GOLDEN LUCKY 完全版』は上中下の三分冊で、上より中、中より下がおもしろいですというか、どんどんこちらが教育されていくというか、いや今回読み返してみて、どんどん洗練されていっていることに気づきましたが、だが洗練されながらもデタラメさ無謀さは増していくという不思議な読書体験に乗せられ、下巻の「ラスト20週のストーリーシリーズ」にたどり着くころにはすでにこちらも洗脳されており、「次のページはつじつまが合わないがそんなことはどうでもいいのさイェイーイ行くぜ!!」の超暴走っぷりに煽られて、ついついつじつまが合ってしまう人間のサガを乗り越えるとてつもないパワーと技術とテンションを原動力にヒトコマごとにつじつまをぶち壊す爽快さに呑み込まれ共に疾走。読み終わるとこちがら疲れてしまうほどのハイテンションっぷりが感動を呼ぶので、このさい全部をイッキに読むとよいです(脳が開きすぎてクレイジーになっちゃうかもですが)。

『GOLDEN LUCKY 完全版 (上)』には幻のデビュー作、『GOLDEN LUCKY 完全版 (中)』には「アフタヌーン」四季賞89年受賞作とあとがき漫画、『GOLDEN LUCKY 完全版 (下)』には単行本未収録作と「読者の手紙から完全版」「衝撃の処女小説」とあとがき漫画を収録。

発見の連続


というわけで、『GOLDEN LUCKY 完全版』を読んで勢いづいてしまいKindleで読める榎本俊二作品をガンガン買ってガンガン読んだので、ズラっと紹介。

『火事場のバカIQ』『火事場のバカIQ 羊』
真剣にスポーツをする男たちを描いた感動のシリーズ(ただし下半身丸出し)。四方から走ってきてうまくすれ違う男たち。携帯電話を巡る群像劇(大傑作)。親切をするとガンになる世界を描いた「もあみはよそもの」、不気味な都市伝説的短編「サンダルジャージ」など、ギャグを超えて新しい世界がひらける「ある一点がズレるだけでこんなにも気持ちが動かされるのか」という発見の連続のショート漫画シリーズ。

『反逆ののろし』
初期短篇集。マンガで縦横無尽に展開するリズムネタセリフらしいセリフは皆無)の「反逆ののろし」シリーズ、かわいいワンちゃん漫画「ジャッキグー」、シルエットで描かれるリズムと意味と凝縮の傑作「風前の灯ジョー」。

『えの素』全9巻
前田一家を軸にした不条理マンガ。全裸、下半身、排泄、エロとハイテンションで突っ走る全9巻。

『榎本俊二のカリスマ育児』
「うるせー」「くせー」「寝ねえー」オロオロ、喘息、アトピー、第二子の誕生と母親の入院。たいへんなことの連続をまるごと描いた育児エッセイ漫画。ハイテンポ・ハイテンションはいつもの榎本節で、思ったことをズバリと言う爽快さで、すくすく読める。

『ムーたち』『ムーたち2』
ちょっとした法則にこだわって世界がどんどんズレていく様子をビジュアルで描き出す哲学ファミリー漫画。この世界のしくみをすべて解明できる法則は見つかるのか? エロや人体破損が少ないのでファミリーにオススメの連作短編集。2巻は齋藤環の解説つき。ゴッド・ブレス・ユー。(米光一成)