『連続テレビ小説 まれ Part1』NHK出版

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朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)6月1日(月)放送 第55話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出:一木正恵

第10週「逆転一発パンケーキ」のはじまりが、横浜の赤い靴の少女像の前で、
希(土屋太鳳)が大悟(小日向文世)にもう一回弟子入りさせてくれとお願いする予行演習をしているところ。
これ必要? と首をかしげかけましたが、横浜のランドマークを映さないといけない縛りがあるのかもしれませんね。

意気込んで戻ったものの、お店はまた閉店していました。いつもと状況はちがって、経営資金がなくなったというヘヴィーな理由で。
「信用金庫の男(一応鶴巻という名前もある)」、「返済滞納」「原価割れ」「要企業努力」などでかいテロップで説明します。「まれ」は最初のころからテロップ使いがポップです。
希は研修不合格だったのに、しれっとお店や天中殺に出入りして、店の問題に首をつっこみます。これは、能登で育んだ、住人みな家族的感覚なのでしょう。
そういえば、「けんかしとっても 何かあってきまずくても なにかあると集まってしまう」と54話で圭太(山崎賢人/崎の大は立)が語っていましたしね。

それにしても、子供のときからお菓子つくっているから陶子(柊子)よりもキャリアがあるなんてよく言うなあ。悪気ない大らかなひとというのも能登的なのでしょうか。
大らかといえば、徹(大泉洋)。心機一転、横浜で希と一緒に暮らそうとする彼は彼で、これまたしれっと「わたし、こう見えましても 経営には詳しいんですよ」と大悟に声をかけます。
父娘ともども根拠なき自信家。こうなったら、ここをもっと突き詰めておもしろ親子ドラマにするしかないのでは。
でも今週は、叙情あるリアリズム演出の正木一恵回。一子(清水富美加)が
大阪行きを決意して、お母さん・はる(鈴木砂羽)に髪の毛を切ってもらっている場面は情感溢れておりました。
それを窓越しで見る洋一郎(高畑裕太)の切なさと、その横で口笛を吹く高志(渡辺大知)。鏡を効果的に使った画面もいいし、こういうのがときどきあるから、「まれ」から離脱できません。

今日の、小姑ツッコミ


クリスマスケーキが大赤字で店がピンチ。
凝ったルセット考えた希のせいと陶子が責めますが、能登の食材は安いはずでは? お客さんの家族ごとに上にのっけたクッキーみたいのにお金がかかったのかな?

今日の、勝手に名言1


「人間ちゃね やりたい事して 生きとる人の方や少ないげんよ。」(はる)

「まれ」は、こういう地味なひとたちへの眼差しがあるところが魅力。

今日の、勝手に名言2


「何べんでも直して使えるがや 輪島塗の底力やさけ。」(圭太)

一子に負けじと仕事にはりきる圭太。漆の修理の注文うけようと提案します。
「何回でも直して使える」は「何回でも挑戦すればいい」という意味に置き換えられそう。ぐずぐずしている徹とか希、そして、テレビを見ているいろいろうまくいかない人たちへのエールに聞こえます。ドラマもがんばれ。
(木俣冬)

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