『日本懐かし10円ゲーム大全』(駄菓子屋ゲーム博物館館長岸昭仁・辰巳出版)

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『日本懐かし10円ゲーム大全』(駄菓子屋ゲーム博物館館長岸昭仁・辰巳出版)の表紙を観て懐かしさのあまり子供みたいにわっと声をあげてしまった。
よゐこの有野晋哉さんが推薦。
“人生ではじめて全財産つぎこんだ『10円ゲーム』そのすべてがこの一冊に! でも、勝ち方は書いてありません。”

10円ゲームって何?


昭和50年代。駄菓子屋の前や、デパートの屋上に置いてあった10円で遊べるゲーム機だ。
テレビゲームではない。
エレクトロメカニカルマシン、略してエレメカとも呼ばれる。
機械的なカラクリでゲームが作られているものが多い。
特に10円ゲームは、どういう仕組みになっているのか、そのカラクリがむき出しなのが魅力のひとつ。

大ヒット「新幹線ゲーム」


たとえば大ヒットした「新幹線ゲーム」は、投入した10円玉そのものがプレイヤーキャラになる。
10円玉を、バネ仕掛けのレバー(クロムメッキ仕様!)で打つ。
アウト穴に入れないように打つ強さを調整して、目的地に進む。
東京からスタートして、名古屋、京都、新大阪、岡山、広島、最後が博多だ。
左右に3つずつ合計6つのレバーがあって、進むにつれて難易度アップ。
最後の博多は、あたり通路がはずれとはずれの間にあって極むず。
あたり通路に10円が入ると、ガシャコンと無骨な機械の音がして「当たり券」が出てくる。
「当たり券」を持っていくと、駄菓子屋のおばちゃんが、駄菓子と交換してくれる。

新幹線ゲーム徹底解剖


『日本懐かし10円ゲーム大全』のトップを飾るのは、もちろん「新幹線ゲーム」。
基本データ、徹底解剖、攻略法、内部メカニズム、シリーズ紹介、当たり券、裏ワザ。
懐かしい懐かしい。
wikipediaには“新幹線ゲームはパネと重力しか使わず、当たり券の排出も重りやバネなど機械的構造のみに頼っている、つまり電気を全く必要とせず”と書いてあるが、内部メカニズムのページを見ると、電球と制御基板はあるみたい。
取り扱い説明書も載っていて、そこには「消費電力17W」と明記されている。
とはいえ、内部構造はめちゃくちゃシンプル。取扱説明書もB51枚きりだ。

スーパーの屋上で、駄菓子屋の前で。


『日本懐かし10円ゲーム大全』、他にも懐かしいゲームがいっぱい。
「10円はじき系」「玉はじき系」「小型機」「パチンコ系」「ルーレット系」「ドライブゲーム」「クレーンゲーム」」「ユニーク系」、全8ジャンルに区分けして、懐かしのゲームがカラー写真と詳細な解説で紹介されている。
「mini ROULETTE」(ベットという言葉を憶えた)、「JUMP☆UP」(ドンと叩くとパッドが飛び上がる一発ゲー。強く叩き過ぎるとアウト)、「ミニドライブ」(ベルトコンベアの道を棒がついた車を操作して進む)、カーレース(スーパーカーブーム!)など、遊びまくったものが懐かしいのは当たり前だが、遊んだ記憶がないものまで懐かしい。懐かしさのクオリア満載だ。

スーパーの屋上で、駄菓子屋の前で。


『日本懐かし10円ゲーム大全』、10円ゲーム三昧スポット、カタログコレクション、10円ゲームと昭和の風景、インタビュー、対談もあって、充実の内容。
『パスボール』を開発製造した楠野製作所の楠野博美さんがインタビューの中で語られている言葉が印象深い。
「私がこれからも大事にしたいのは、ゲームというのは、やはり“賑わい”の中でやるというのが前提だということです。どんなに面白い機械があっても、一人でやってもつまらないですよね。うちのスローガンにもなっていますが、「賑わいのお手伝い」ということを常に考えて、今も独自性のあるゲームの開発を目指しています」
(米光一成)