ドラマ「天皇の料理番」(TBS系・毎週日曜よる9時〜)第6話では主人公篤蔵(佐藤健・写真左)と師匠・宇佐見(小林薫)が再会する

写真拡大

「いくらうちでも、もう少しマシな人がおると思います。
お願いですから、もううちの前から消えてください。
二度とうちに関わらんといて」

TBS日曜劇場「天皇の料理番」第5話(5月24日放送)では、とうとう主人公・篤蔵(佐藤健)に妻・俊子(黒木華)が三くだり半を突きつけた。いったい、ふたりの間に何が起きたのか。俊子のセリフから振り返ってみたい。

■篤蔵さん東京で修行を続けたいんでしょうし……離縁したほうがお互いのためかって……うちも思います

華族会館をクビになった篤蔵が大衆食堂で働き始めて1ヶ月半近く経った頃、かつての同僚(桐谷健太)が郷里からの手紙を持って訪ねてくる。3日おきに届いていたというその手紙は、俊子の流産を知らせるものだった。あわてて列車に飛び乗り、俊子のもとに向かう篤蔵。俊子の父親は「こちらとしては潮時やと思ってますけん」と怒りを隠さない(当たり前だ)。「東京で店持つんやったら、俊子と離縁せんでもいいですか」と食い下がる篤蔵に、俊子の妹たちは大喜び。「ついてったらええやんか」と盛り上がるが、俊子は逡巡。「お店やるってなったらお金の苦労も並大抵やないし、篤蔵さん正気なのかなって思うし……」という不安は的中。ちょうどその頃、篤蔵は実家で開店資金を借りようとし、「お前はヤクザけ!」と父親に罵倒されていた。

■「食堂の女房はいやです。愛想笑いは苦手ですさけ。務まるとは思いませんし」

父親に借金を断られ、店を開く算段も諦めもつかないまま、篤蔵は鯖江連隊を訪れる。そこへ、俊子が現れ、思いがけず夫婦で将来を語り合うことになる。「ワシ、俊子とやったらやってけるって思うとるんや」と能天気な篤蔵に対し、俊子は「うち……やっぱり、いやです。食堂の女房はいやです」とキッパリ。「宇佐見さんのような料理人ならまだしも、街場の食堂の亭主なんていくら、うちでもいやです」とも告げる。相手のことを思ってわざと嫌われるよう仕向けるという話は昔からよくあるが、それにしても大胆。無情の全否定に篤蔵はポカーン。妻に愛想をつかされる日が来るとは夢にも思ってない男の身勝手さとマヌケさがたまらなくキュートな一場面でもあった。

■「ほんならもう、東京なんか行かんといて。料理人なんてやめて、松前屋継いでください……できんでしょ?」

愛情がないわけではないけど、ちょっとズレてる篤蔵。夫婦の危機が最高潮に達する場面でも、ちょいズレ発言はあちこちに登場する。普段おだやかな俊子が「うちはもう、篤蔵さんの子なんて産みたくないって言ってるんです!」と声を荒げるのは相当な覚悟だっただろうに、篤蔵のリアクションは「やや子、ほんなにつらかったんか」と、ややピンボケ。そりゃ、俊子も「つらいって……」と絶句するはずだ。気を取り直した俊子の「ほんなん、つらいに決まってるやないですか。どんなんやったか教えてあげましょうか! どんなん思いやったんか教えてあげましょうか!!」から始まる長ゼリフはつらく切ない。これまで言えずにいた本音もぶちまけつつ、最後は間違いなく男が拒否するであろう条件を突きつける。やっぱりデキすぎた嫁なんである。自由と一緒に「俺は悪くない」の免罪符まであげちゃって、あーあー。

俊子の思惑通り、篤蔵は離縁を受け入れる。「華族会館をクビになったんは誰のせいやと思ってるんじゃ」と怒り狂い、幼さを見せつけたあと、「パリに行って、誰もがひれ伏すような料理人になって戻ってくるんです!」と宣言。でも、東京に戻ってさっそく飛び込んだ先はパリではなく、食堂の女将(高岡早紀)の胸の中だった。おーい!!! 篤蔵と俊子はこのまま別れてしまうのか。ますますげっそり痩せてきたお兄ちゃん(鈴木亮平)の病状も気になりつつ、今夜9時から。
(島影真奈美)