「剛」か「論」か、民主党の選択
「立候補の最終決断を伝えていない前に、そういうことは、これまたちょっと筋違いというか、批判も招くというか・・・」──。
民主党代表選への出馬表明をめぐって6日、小沢一郎前副代表と菅直人元代表の記者会見のスケジュールが2転3転。一時浮上した両氏による共同記者会見が急きょ頓挫した経緯について、小沢氏はこう説明した。
共同記者会見を持ちかけたのは、選挙後の挙党態勢の構築を懸念する菅氏側。調整中に話が漏れ、一斉に報道された状況に小沢氏側が不快感を示したため、結束をアピールする演出は実現しなかった。「政治的な生い立ちもある意味、対照的」(菅氏)とされる両氏の政治手法の違いが浮き彫りになったとも言える。
別々に行われた記者会見で、小沢氏側は議員会館の会議室を会場に旧自由党系の議員18人を同席させ、小沢氏の登場を拍手で迎える演出。政策の提示は7日まで先送りされた。小沢氏に約1時間遅れて国会近くのホテルで会見した菅氏は、広い宴会場に1つ置かれた椅子にひとり座り、15分以上にわたって持論を訴えた。
政界での経験も対照的で、急逝した父の地盤を受け継ぎ、27歳で初当選した後、田中角栄元首相の薫陶(くんとう)を受け、歴代最年少の47歳で自民党幹事長の座に登りつめた小沢氏。一方、菅氏は市民運動を原点に、3度の落選を経験した後、社会民主連合、新党さきがけなど小政党を歩んできた。政策面でも、「国家」を意識し、市場原理を重視する小沢氏に対し、菅氏は会見で「最小不幸社会」の実現を強調。社会保障の充実や、団塊層の社会参加など「地域」を基本としたネットワーク社会を提唱した。
その反面、前原執行部で「寄り合い所帯」の弱点を浮き彫りにした外交・安保政策では、類似点も見られる。両氏ともに、戦闘地域への自衛隊派遣には慎重な姿勢を示しているが、国連主導で行う平和維持活動への参加には積極的。米国だけでなく、中国などアジア諸国との外交も重視しており、首相の靖国参拝にも反対する。その意味では、小泉純一郎首相の政策とは、はっきりと一線を画している。
旧社会党系議員をとりしきる横路孝弘衆院副議長は、記者団に対し「ハードパンチャー同士の打ち合い」と今回の代表選を評した。新代表に選出された後の挙党態勢について、小沢氏が「適材適所」での人材登用を強調すれば、菅氏は「私が先頭になれば小沢さんにも主要な役割を担っていただきたい」と青写真を示した。
前原誠司代表の後任選びは、7日午前9時の立候補受付を皮切りに、東京都千代田区の赤坂プリンスホテルで午後3時から投票が行われる。午後5時には、小沢氏、菅氏のいずれかが新代表に決まり、記者会見を行う予定。
【了】
民主党代表選への出馬表明をめぐって6日、小沢一郎前副代表と菅直人元代表の記者会見のスケジュールが2転3転。一時浮上した両氏による共同記者会見が急きょ頓挫した経緯について、小沢氏はこう説明した。
共同記者会見を持ちかけたのは、選挙後の挙党態勢の構築を懸念する菅氏側。調整中に話が漏れ、一斉に報道された状況に小沢氏側が不快感を示したため、結束をアピールする演出は実現しなかった。「政治的な生い立ちもある意味、対照的」(菅氏)とされる両氏の政治手法の違いが浮き彫りになったとも言える。
政界での経験も対照的で、急逝した父の地盤を受け継ぎ、27歳で初当選した後、田中角栄元首相の薫陶(くんとう)を受け、歴代最年少の47歳で自民党幹事長の座に登りつめた小沢氏。一方、菅氏は市民運動を原点に、3度の落選を経験した後、社会民主連合、新党さきがけなど小政党を歩んできた。政策面でも、「国家」を意識し、市場原理を重視する小沢氏に対し、菅氏は会見で「最小不幸社会」の実現を強調。社会保障の充実や、団塊層の社会参加など「地域」を基本としたネットワーク社会を提唱した。
その反面、前原執行部で「寄り合い所帯」の弱点を浮き彫りにした外交・安保政策では、類似点も見られる。両氏ともに、戦闘地域への自衛隊派遣には慎重な姿勢を示しているが、国連主導で行う平和維持活動への参加には積極的。米国だけでなく、中国などアジア諸国との外交も重視しており、首相の靖国参拝にも反対する。その意味では、小泉純一郎首相の政策とは、はっきりと一線を画している。
旧社会党系議員をとりしきる横路孝弘衆院副議長は、記者団に対し「ハードパンチャー同士の打ち合い」と今回の代表選を評した。新代表に選出された後の挙党態勢について、小沢氏が「適材適所」での人材登用を強調すれば、菅氏は「私が先頭になれば小沢さんにも主要な役割を担っていただきたい」と青写真を示した。
前原誠司代表の後任選びは、7日午前9時の立候補受付を皮切りに、東京都千代田区の赤坂プリンスホテルで午後3時から投票が行われる。午後5時には、小沢氏、菅氏のいずれかが新代表に決まり、記者会見を行う予定。
小沢一郎(63) | 菅直人(59) | |
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政治経験 | 父・佐重喜の急逝を受け、2世として27歳で初当選 当選13回(岩手4区) 自由民主党→新生党→新進党→自由党→民主党 | 市民運動出身、落選3回ののち初当選 当選9回(東京18区) 社会民主連合→新党さきがけ→民主党 |
党再建 | 適材適所で、それぞれ自分の得意とする分野で責任を持って力を発揮してもらう。特別な方法、テクニックはない。 | 全議員、全党員が代表選後も一致結束し、老壮青、それぞれの能力をフルに使う。 |
目指す社会 | 将来にわたって、一生懸命誠実に生きている人たちが報われるような社会にしなければならない。 | リストラや失敗によって厳しい状況に置かれた人が、ホームレスや自殺に追い込まれないよう、不幸を最小化する。 |
外交・安保政策 | 日米、日中関係は特に重要。国連の平和活動に積極的に参加すべき。 | アジアとアメリカに2つの軸足を持った外交。自衛隊を戦争のために海外には出さない。 国連を通じた平和活動については、主体的な判断のもとで積極的に関わっていく。 |
対抗馬の評価 | 政策全般にわたって議論したことはないので、ここが違うとかは言えない。 | 尊敬すべき政治家のひとりで、リーダーシップも期待し、その実力も大きく認めている。 政治的な生い立ちもある意味対照的だが、この2人が組めば自民党に絶対負けない。 |
過去の役職 | 自治大臣(中曽根康弘内閣) 自民党幹事長 新生党代表幹事 新進党党首、幹事長 自由党党首 民主党代表代行、副代表 | 新党さきがけ政調会長 厚生大臣(橋本龍太郎内閣) 民主党代表、幹事長、政調会長 |
主な実績 | 非自民連立政権樹立 副大臣制の実現 民主党・自由党合併 | 薬害エイズ問題の追及 らい予防法廃止 民主党・自由党合併 |
政治の師匠 | 田中角栄 | 市川房枝、江田三郎 |
座右の銘 | 「百術は一誠にしかず」 | 「人生唯一度」「同行二人」 |
著書 | 「日本改造計画」 | 「改革政権準備完了」 |
【了】