アジア開発銀行(本部・マニラ)総裁特別顧問の河合正弘・東京大学教授が20日、東京都千代田区の帝国ホテルで講演し、「アジア諸国が為替レートを安定させるために、対米ドル安定化を図るのは実情に合わなくなっている」と話した。河合氏は、同銀行が主催した「アジアサミット後のアジア経済統合の課題」と題するセミナーに、講師として出席した。

 欧米の地域主義の拡大により、東アジアでも自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)への関心が高まってきたことについて、河合氏は「FTA/EPAが重層的になりすぎて、複雑に絡み合う懸念がある。これらの協定は、カバーする地域が広いほどそのメリットがあるので、多数のFTA/EPAを1つにまとめていくべき」と話した。

 また、東アジア域内で、実質GDP、消費、投資など実質的な景気循環が大きな連動性、同調性を持つようになっており、マクロ経済的な相互依存の程度が大きくなっていると指摘。域内為替レートの安定化のための協調が必要で、対米ドルペック制から通貨バスケット制に移行するのが第1歩と説明した。

 日本がすべきことについて「金融市場のノウハウを提供し、手本となること。日本の貯蓄が、まだまだ潜在的に高い投資機会があるアジア市場に向かえば、日本のアジアに対する関心も高まるだろう」と述べた。

 アジアの基軸通貨に関する質問には「このまま発展すれば、中国は2010年半ばに日本経済を追い越すと言われるが、基軸通貨になるには国際的な信頼性も必要。貧困や政治体制など問題もある。日本円が基軸になるのが、アジアの中では最も現実的」と話した。【了】