ブラジル対ウルグアイ。やはり個人的にはブラジルよりもウルグアイの方に目が行ってしまう。徹底的な堅守カウンターサッカー。まさに、徹底的な、という感じ。ウルグアイの選手は、1に忍耐、2に忍耐、3も4も忍耐で、5も忍耐、みたいな戦い方を、90分間、それどころか、何試合も何試合も、よくずっと続ける事ができるなぁ、と感心してしまう。しかも、そういう戦い方を続けている事に対して、ほとんどの選手がストレスを感じていないように見えるのも凄い。本当のところはどうなのか分からないが、少なくとも私の目にはそう見える。今季のセリエAで得点王となったカバーニまでもが、ネイマールをケアするために右サイドの低い位置で守備に奔走していたが、そのカバーニですら不満顔を一切見せずに最後までプレーしていた。

そして、前残り気味になっている事が多かったスアレスとフォルランにしても、攻撃の時に後ろの選手の押し上げによるサポートが得られなくても、その事に対して全くストレスや不満を感じているような顔をしない。更には、後ろの方の選手は前の方の選手の仕掛けが失敗しても、やはりその事に対して全くストレスや不満を感じているような顔をしない。偏見かもしれないが、日本人と南米人、どちらがイメージとして忍耐強そうな感じがするのかと言えば、それはやはり日本人なのかなと思うのだが、しかし、どうやらサッカーでは違うようだ。日本人は守備的である事にすぐ文句を言う。ストレスを溜める。負けてもいいから攻撃的に戦えと言う。攻撃の選手は後ろのサポートが少ないと、それに対してすぐに不満顔をする。

守備的に戦って負けると批判の嵐。選手にしても、守備的に戦って負けると、やはり守備的に戦ったから負けた、やはり守備的に戦うのは日本らしくない、そうやってすぐに守備的に戦う事から逃げようとする。ザックの、守備を強化して攻撃力を上げる、という采配も理解できていない人が多い。攻撃力を上げるためには攻撃的な選手を入れれば良いと思っている人が多い。確かにウルグアイはスペインとブラジルには勝てなかった。しかし、スペイン戦はスペイン対策を間違えてしまった事が大きかったし、スコアも後半には1点を返して「1−2」だった。そして、ブラジル戦は互角の戦いだったがブラジルのホームアドバンテージが大きかったし、やはりスコアも「1−2」だった。ハッキリ言って、日本人は戦うという事に対してシビアさが足りないと思う。

戦うという事に対してシビアさが足りないから、負けてもいいから、なんていう言葉が出てきてしまうし、守備的に戦うという事に対しての根拠の無い強い嫌悪感を抱いてしまう。勝たなくても良い、負けなければ良い、あるいは、得点を取る事よりも失点しない事を優先すべき状況でも、勝ちに行ったり得点を取りに行ったりして負けてしまう。更には、守るべき時間帯でも守備に集中していない、守るべき時間帯でも守備をサボる選手がいる。チャレンジしない、という事と、守備的に戦う、という事とは、全くイコールではない。オシムの云う「リスクを冒す哲学」とは何か? それは攻撃的に戦うという事ではない。まずはしっかりタイトな守備を行って、そして、その中でチャンスを見つけたら、チャレンジしよう、リスクを冒す勇気を持とう、という事。

トルシエが何を言ったか、ジーコジャパンがなぜ惨敗したのか、それを知らないか忘れている人が多い。トルシエは「日本には守備の文化が無い」と言った。もちろん褒めているのではない。日本人選手の守備意識や守備能力の低さを嘆いた言葉だ。ジーコジャパンの惨敗は、攻撃的に戦うのか、守備的に戦うのか、ヒデとその他の選手たちとの間で意見が対立し続け、結局最後までヒデがエゴイストであった事が大きな原因の1つだった。ボランチであったヒデが守備を放り出して攻撃に出て行ってしまうので、そのぶんだけ他の選手には守備の負担がかかり、結局は攻撃力も上がらなかった。ヒデはそうする事で自分の良さを見せる事はできたが、しかし、それは自分だけが良ければ、という我侭でしかなかった。もし本田や香川がヒデと同じような事をしてしまったら、やはりザックジャパンはジーコジャパンの失敗を繰り返してしまうだろうと思う。