ほかにも、気分転換がうまく出来ずストレスを溜め込む人、物事を悲観的に考え、クヨクヨしてしまう性格もこの症状になりやすい。また、神経質で些細なことが気になり、一つのことにこだわりやすいタイプは、体調に変化が起きると途端に気になってしまい、自分で自分を悪い方へと陥れてしまう傾向があるという。
 具体的な症状にはどんなものがあるのか。人によって違いはあるが、次のような症状が同時に現れる場合もある。
 〈倦怠感、無力感〉特に疲れるような事をしていないのに、疲れを感じる。重症化すると何もする気が起こらない。
 〈不眠〉布団に入ってもなかなか眠れない。眠りが浅く、夜中に何回も目が覚めてしまう。
 〈便秘・下痢〉胃腸の働きをコントロールする副交感神経の働きが鈍くなると、この症状が出やすく、便秘、下痢を繰り返す事がある。
 〈目まい、立ちくらみ〉何の原因もなく目まいや立ちくらみ、ふらつきが起きる。
 〈頭痛〉交感神経が緊張し、血液の循環が悪くなると起こる。筋緊張性の頭痛が多く見られる。
 〈情緒不安定・憂うつ感〉小さな事でもイライラ、人に当たり散らすなど喜怒哀楽の感情が不安定に。気分の切り替えがうまく出来ず、必要以上に落ち込む。重症化するとうつ症状になる。
 〈集中力の低下〉今まで簡単に出来ていたことが出来なくなり、仕事でも間違いが増えたりする。

 「自律神経失調症は、なりやすい体質や性格があるからといっても、それだけで発症はしません。何といってもストレスです。ごく普通の人でも、その人の限度を超えるストレスがかかると発症しやすくなる」
 こう話すのは、東京社会医学研究センター主任の村上剛志さんだ。
 ストレスは、肉体的ストレスと心理的ストレスの2種類がある。睡眠不足や不規則な生活は肉体的ストレス。心理的なものは人間関係における葛藤や不和、孤立、失恋、離婚、金銭問題…と上げたらきりがない。

 こうしてみると、誰でも思い当たるところが一つや二つはあるはず。裏返せば、誰もが自律神経失調症になる可能性があるわけだ。
 「診察を受ける場合、担当医に体の具合だけでなく、精神的な症状も伝える事が重要です。自律神経失調症を軽く見てはいけない。症状が悪化して完治が困難になる場合があり、早期に適切な治療が必要だと自覚すべきです」(村上さん)

 あとは自律神経を自ら整える努力をすること。入浴や軽い運動と食事、特に栄養のバランスは脳や体のバランスに密接に関連するので、ビタミンやミネラル、カルシウムなど栄養の片寄らない食事を摂る事。音楽を聴いたり、好きな趣味に興ずる事も大切だ。とにかくジッとしていてはダメ。体を動かしながら気分転換を図り、自律神経を整えることが大事である。