ツイッターで何気なくつぶやいたことがネット上で批判され拡散、はては一般メディアにも取り上げられ、つぶやいた人の個人情報までもがさらされてしまう「炎上」。いまやネットでは日常茶飯事の光景となっている。

 炎上するパターンは、職場内での不正行為や未成年の違法行為など“罪の告白型炎上”が一般的だ。どうして、ツイッターではこんな“迂闊(うかつ)な人々”が増えてしまったのだろうか。社会学者の濱野智史氏はこう分析する。

「この手の発言をするのは往々にしてネットリテラシー(情報処理能力)の低いリア充の人ばかりで、それを叩くのは非リア充というかネト充(ネット世界で充実している)の人という構図があるんですね。で、リア充のネットユーザーは、ネットが広い空間という認識がとにかく薄い」

 濱野氏によると、実生活が満たされているリア充は基本的にネットの書き込みを「自分の文章なんて誰も読まない」と考えがちで、ブログでもツイッターでも、まるで携帯メールのように気軽にプライベートな情報を書き込んだり、犯罪行為を告白するのだという。

「こういう問題を解決するには、リテラシーを高めよう、情報教育を徹底しようみたいな話になりがちですが、実際に中学・高校の頃からそういう教育を受けてきたはずの大学生が迂闊な発言をして炎上しているのを見ると、少なくとも学校の情報教育ではリテラシーは向上しないなと。そういう意味では、今後もツイッターは“バカ発見器”として機能し続けると思います」(濱野氏)

 リテラシーが低いリア充をネト充が攻撃するという構図には、階級闘争的なルサンチマン(強者への嫉妬)が見え隠れし、それを解決しない限り争いは消えないと濱野氏は指摘する。そのため、作家の岩崎夏海氏は「ツイッターの寿命はもうあまり長くないだろう」と自身のブログで発言。その理由をこう語る。

「ツイッターは人の倫理観を吐き出しやすい装置ですが、そもそも、今の日本が“高倫理社会”に突入しているのが前提としてある。少しでも倫理に反するような人間は徹底して叩く。高潔でなければ日本は立ち行かない、という危機感というか正義感がまずあって、ツイッターユーザーのなかにもそういった考えの人が多いわけです。で、自警団のつもりでネットを徘徊して、倫理観に反するような発言をしている人を叩くんです」

 しかも、ツイッターではその様子をリアルタイムで見られるため、“やじ馬”も雪ダルマ式に多くなる。「もはやそこにあるのはスキャンダリズム」だとして、そんなサービスが「人を幸せにしますか?」と岩崎氏は問いかける。

 殺伐としたつぶやき合戦の果てに、ツイッターの終焉は思いのほか早くやって来るのかもしれない。

(取材/コバタカヒト、撮影/五十嵐和博)

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