インドで働く日本人に聞く、「異文化の相手と仕事をするコツ」

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ゆとり世代、氷河期世代、バブル世代。同じ日本人でも、生きてきた時代の背景が違うだけで、お互いに「なんでこんな当たり前のことも分からないの」と理解に苦しむことだってありますよね。価値観や文化が違う人同士で仕事をしていくためのコツが知りたい。誰か教えて!

今回のちょいたつ(ちょい達人の略)は、インドで旅行会社の代表として奮闘する日本人男性、chinyoさん(27歳/男性)「インドに来て約5カ月。朝歯みがきをしていると、窓から猿が見えるんですよ、煙突の上に。ああ、俺はインドにいるのかってつくづく感じる瞬間です」と笑うchinyoさんに、異文化同士で仕事をしていくコツについて聞いてみました。

−インドは近年凄まじい経済成長を遂げていると耳にします。実際にインドで働いていて、現地の人をどう感じますか?

「あくまで僕個人の印象としては、国全体の勢いを感じる一方で、まだインド人のなかでは仕事よりも自分のことが優先、という人が多く、日本との違いを感じます。僕が『時間を守って』と言っても理解されないこともあります。文化が違うから、彼らに悪気はないのですけれどね」

−日本では、あまり考えにくいことですよね。そんな相手に仕事を頼むのってなかなか骨が折れそうですが……。

■どうしたら仕事を「したく」なる?
「仕事を頼むときは、とにかく相手が仕事をしたくなるように仕向けます。例えば先日、観光客を送迎するための車を手配したのですが、急遽時間が変更になり、対応をお願いしても、ドライバーがなかなか動いてくれなかったんです。日本では『仕事だから!』の一言で動いてくれるかもしれないけれど、インドではそうはいきません。

そんなときは、『この仕事をすると、これだけの報酬がある』と、相手にとっての利益をきちんと伝え、『あなたがこの仕事をしてくれることで、この人が助かるんです。彼らを助けるためにやってあげてくれませんか』と、とにかく情でも何でも使って訴える。彼らも、誰かが困っていると思えば、助けようとしてくれるんですね。目先の利益重視の人達もいますが、実際はとても思いやりの心を持った優しい人たちなんです」

−相手への理解がなければ、お互いにたくさんの誤解を生みそうですね。そこまで価値観の違う環境で仕事をしていくコツはズバリ何ですか?

■相互理解をとるか、プライドをとるか
「まずはその場ごとの優先順位をはっきりさせることだと思います。彼らの仕事意識に任せるのか、もしくは自分の価値観・プライド、日本の商慣習に合わせてもらうのか、どっちが今必要なのか。僕はインドにいる以上、どんなに理不尽でも彼らと仕事をしていかなければなりませんから、前者の考えを大事にしています。ですから、こちらも『時間を守るのは当たり前』『仕事を進んでやるのは当然』など、日本で当たり前とされている文化に固執せず、『どうしたら彼らが動いてくれるか』『時間を守ってくれるか』をなるべく柔軟に考えながら仕事をしています。頭ごなしに『日本と仕事する以上は守ってもらわないと困るんだよ』と伝えるより、実はその方がずっと効率的なんですね」

−とはいえ、もちろんプライドも大事なもの。だからこそ、タイミングを見極めながら主張し、柔軟に対応する必要があるのでしょうか。とにかくまずは相互理解が最優先ですね。

ひとことアドバイス
「紹介したエピソードは一部の例ですが、日本社会ならあり得ないこと。一方で、これらの例は日本の社会人の意識が、必ずしも世界へ通用するわけではないことを物語っていると思うんです。自分の価値観が通用しない絶望感、そこから新しい価値観を構築して自立心を養う経験を若いうちに味わっておくかどうかで、社会人としての成長度も全く変わってくるのではないでしょうか」

上司に対して、後輩に対して……。生きてきた場所や文化、年代が違えば「なにこの人、全く理解できない!」感じることもたくさんあります。しかし、もしかしたらそれは自分が成長できるチャンスなのかも。加速する国際社会化に対応していくためにも、まずは身近にある『異文化』と、もっと真剣に、かつ柔軟に向き合っていきたいですね。
(小野田弥恵/プレスラボ)



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