「たかがファウルスロー」では片付けられない<br>(Photo by Tsutomu KISHIMOTO)

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明文化されたルールに基づいて試合が進行すると言っても、実際はグレーゾーンがあるのがサッカーである。ワールドカップのような国際大会では、主審の判定基準をいち早く感じ取ることが必要だ。

今シーズンのJリーグは、手を使ったファウルへの対処が厳格となった。FIFA(国際サッカー連盟)の通達を裏付けとしたものだが、ヨーロッパのリーグはそこまで敏感に反映されていない。リーグ戦をテレビで観ていたかぎりでは、手を使ったプレーへの判定がことさらシビアになった印象は薄い。ワールドカップへ向けた直前のテストマッチもしかりである。

大切なのは主審の判定基準を見極め、試合の流れに乗っていけるか。日本国内の感覚をそのまま持ち込むのは危険だ。思わぬ形でファウルを与えたり、ファウルを取ってもらえなかったりする。拮抗したゲームではディティールが勝負を分けるだけに、主審を味方につけるような意識で臨みたい。

6月4日に行われたコートジボワール戦で、気になる場面があった。後半42分に長友がファウルスローを取られた。自陣の深いエリアでなく、そこから相手に攻め込まれたわけでもないので、ゲームのなかへ埋もれていったプレーである。試合はすでに0−2となっており、大勢に影響はなかった。

しかし、である。これがカメルーン戦で、1点を追いかける終盤だったらどうだろう。

攻守が入れ替わってしまい、逃げ切りを許すことにつながりかねない。したたかな試合運びをする国ならば、スローインの機会を使って時間稼ぎをしてくるはずだ。貴重な反撃の時間を、不注意なプレーで削り取られてしまうことにつながる。

コートジボワール戦では、前半にも駒野がファウルスローを取られていた。判定基準はすでに示されていたのだ。それなのに、後半終了間際に同じミスを冒しているようでは、戦い方にスキがあると指摘されてもしかたがない。長友はもっと注意深くボールを投げ入れるべきだった。

振り返れば5月30日のイングランド戦でも、前半に今野がファウルスローをとられていた。ボールを失うという意味では、パスミスもファウルスローも同じである。ワールドカップで失点につながれば、「もったいないミス」では済まされない。たったひとつのファウルスローで、完璧なゲームプランが壊れてしまうこともあるのだ。