ワールドカップでベスト4へ進出するために、日本は何をしていかなければならないのだろうか。答えは簡単で、そして難しい。やるべきことならすぐに、いくらでもあげられるが、あまりに多過ぎて「これとこれ」といった特定はできないからだ。

 W杯まで一年というスパンで、いきなり個々の能力が高まるとは考えにくい。それだけに、チームとしてできることをいかに増やしていくのかが現実的な目標となるだろう。チームの土台となる個人の資質をあげていくのは当然で、それなしにチーム力の向上はあり得ない。W杯に初めて出場した当時のように、「個人」か「組織」かの二者択一でなく、組織を生かすために個人を磨かなければならず、個人が生きるような組織を作り上げていかなければならないと思うのだ。

 そこで、オーストラリア戦である。

 闘莉王が孤軍奮闘し、ケーヒルがまたしても日本キラーぶりを見せつけたこの試合で、個人的に気になったのは前日の練習だった。

 オーストラリアの練習は、前日にも関わらず非公開なしのオープンだった。ウォーミングアップ、ボール回し、11対11でのフォーメーションの確認で全体練習が終わり、ポジションごとの個別練習となる。メディアの目の前のゴールでは(実際の試合では1点も入らなかったゴールだ)、FW陣のシュート練習が行われた。サイドバックやサイドハーフが両サイドからクロスを入れ、中央の選手が合わせる。日本でもおなじみの練習だ。

 ゴール前で待ち構えるのは、ケーヒル、ケネディ、マクドナルド、ジテの4人だった。ブルース・ジテはアフリカ出身の両親を持つ22歳で、将来を嘱望される若手のひとりと言われている。その他の3人については、細かな説明は不要だろう。

 10分足らずで終了したシュートを見ていると、日本との違いに気付かされた。ワクを逃すシュートが少ないのである。総シュート50本強のうち、ゴールマウスを外れたのは3本しかなかった。

 これが日本になると、なかなかシュートが決まらない印象が強い。「あと何本決まったら終わり」という条件をなかなかクリアできず、あと5本が3本に減る──日本の練習をみていると、そんなことがある。いつもではないが、珍しくもない光景である。

 彼我の違いはどこにあるのか。

 オーストラリアの4選手は、きっちりコースを狙っていた。パワフルな一撃はほとんどないが、その代わりにGKが届かないコースを狙っていた。実戦を強く意識している練習だった。ゴールへパスをしているようだ、と感じられた。
 それに比べると、日本は「シュートを打つこと」が第一義となっている気がしてならない。「ゴールネットを揺らす」ことよりも、「クロスに合わせる」ことや「シュートを打つ」ことが先行している印象を拭えない。クロスの精度にしても、オーストラリアのほうが明らかに高い。シュートの威力はそれほどでないが、GKが触れないシュートが多いのがオーストラリアで、パワフルなシュートをGKがセーブする機会が多いのが日本、とでも言えばいいだろうか。

 日本の選手が実戦を意識していない、などと言うつもりはない。ただ、日本では「実戦を意識している」と理解される練習への取り組み方が、世界基準ではまだまだ物足りないのは、たぶん間違いでない。いまさら指摘することではないが、ベスト4進出のためのやらなければいけないことは、本当に、本当に、本当に多い。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖