去る5月2日(土曜日)、ネブラスカ州オマハでバークシャー・ハザウェイの年次株式総会が開かれた。

 世界中から集った出席者の数はなんと3万5000人――。新型インフルエンザの流行で参加を思いとどまる株主も多いだろうと予想されていたが、ふたを開けてみれば、過去最大の参加者数となった。会場のクエストセンターは、老若男女で埋め尽くされた。


バークシャー・ハザウェイの株主総会は、「投資家の巡礼」とも「資本主義者のウッドストック」とも呼ばれる。写真は株主総会後に開かれる恒例のブリッジ大会でのバフェット(中央)。

 もともと1930年代に創設された紡績会社に端を発するバークシャー・ハザウェイの株式をウォーレン・バフェットが買い占め、保険・投資会社に転換させたのは1967年のことだ。それ以後、バフェットは、ともすれば目先の出来事に振り回されがちな投資の世界にあって、堅実かつ長期志向の投資哲学にもとづいて企業のアセットを見極め、着実に資産を増やしてきた。1964年から2008年の年平均利回りは20.3%、1965年から2008年の累積利回りは36万2319%にも達する。改めていうまでもないが、彼は今、世界で2番目の金持ちであり、「投資の神様」とアメリカ人に敬われる対象だ。

 そのバークシャーの年次株主総会は、「株主の巡礼」とも「資本家のためのウッドストック」とも呼ばれる。

バフェットと共に資産を増やしてきた投資家らがホクホク顔で集い、カジュアルな雰囲気の中で交流する。壇上からは、会長のバフェットと、長年のビジネス・パートナーで副会長のチャーリー・マンガーが、長時間にわたって投資の心髄について語り、株主が気さくに質問をする。総会後は、いかにも中西部風の飾り気のない肉料理のピクニック風パーティーで打ち上げをする。筆者も参加してみて、この心を通わせるような雰囲気は、“ラブ&ピース”を合言葉に集った1960年代のヒッピーたちのメッカ、ウッドストックに確かに通じるところがあると実感できた。

 とはいえ、今年の総会は、そんな甘い雰囲気は期待できないだろうというのが、もっぱらの前評判だった。「百年に一度」といわれる不況の影響を、バークシャーも免れなかったからだ。2008年の1株当たり純資産価値は9.6%減少したが、これはバフェットが同社を率いた過去44年間で最大の落ち込みだ。また、2007年12月に14万8220ドルをつけていた同社の株価は、今年3月には半値以下の7万2400ドルまで下がった。「2008年は、最悪の年だった」とバフェットも株主への手紙で打ち明けている。

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