ピム監督は日本との対戦を前に岡田監督を褒めていたという。

「岡田監督はとてもグレートな男でクレバーだ。オーストラリアをアジアで最も強いと言っている。それは私たちにプレッシャーを与えるためだ。私たちを傲慢にさせようとしているんだよ。本当はJリーグがとても規律正しく運営されていて、アジアでも最高峰のリーグであることは間違いないのだから、オーストラリアがおごってはいけない。それに今回は満員のスタジアムで試合をすることになるから、そこでもオーストラリアにはプレッシャーがかかる。岡田監督はオーストラリアがどれくらいメンタル面で強さがあるか試そうとしているんだ」

 マックスはピム監督ならではの、日本代表と岡田監督に対する冷静な分析に満足しているようだった。

「日本はこの試合に必ず勝たなければいけない。でもオーストラリアにとってはアウェイ戦なのだから引き分けでもハッピーだ。だから本当は日本のほうにプレッシャーがかかっているね」

 ピム監督はそう語ってから日本に向かったらしい。マックスは自分の予想メンバー(オーストラリア)をもとに、試合展開まで自信たっぷりに語った。

「ボランチにグレッラとカリーナが入ると思う。特にグレッラがいるおかげで左サイドにいるカーニーにすばらしいパスが出る。カリーナもケーヒルと息が合っているので、この2人が中盤にいればゲームを支配できるだろう」

 逆に、こちらが日本の予想メンバーを伝えると、マックスは「思ったとおり」とまず一言言った。

「もちろん中村俊輔が一番警戒しなければならないのは分かっているよ。でも今日本代表に欠かせないのは遠藤と闘莉王のはずだ。この2人のコンディションがどうか、それが今最も関心のあることだね」

 マックスの予想スコアは2-2の引き分け。オーストラリアの2点は自信の表れ、日本の2点はリップサービス、あるいは早朝に電話したことへの負い目も加わったスコアだろうか。ところで、と最後にマックスが聞いてきた。予想どおりだと言い切ったものの、一人だけ想像していた選手とは違ったようだった。

「FWは玉田だな。玉田ってあの背の大きな選手だろう? いや速い選手? その玉田が先発なのか。あの大きな選手はどうしているんだ。巻、そう巻だ。けがじゃないのか。巻を警戒していたんだけど…」

 いずれにせよ、引き分け以上の結果を確信している口ぶりだった。

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