検索は、つねに容易なことではない。とくに抽象的な概念について知りたいときには、なかなか難しい。

「検索の方法」について解説したものはいくつかあるのだが、適切な方法論を論じたものを、私はまだ見たことがない。「検索」という技術は比較的新しいものなので、われわれはまだその使い方に慣れていないのだ。体系的な理論も開発されていない。現段階では、検索の方法論は「チップス」や「ノウハウ」のレベルでしか提供できない。

 ただし、「効率的な検索法とはなにか」をつねに意識していることが必要だ。そして、試行錯誤する。それだけでも、仕事の効率はだいぶ違うものになるだろう。

 検索の方法論は、学校で教えるべきことだと思う。それは、IT社会においては、「読み」「書き」と同じような基本的方法になるからだ。さらに、この能力をテストすることも必要である。

「夏休みの宿題を、ウェブの情報をコピーしてペーストするだけで作って提出してくる生徒がいる」と嘆く先生がいる。しかし、ウェブで調べればわかることを、わざわざ図書館に行って調べる必要はない。ウェブの検索機能を活用すればよいだけのことである。そして、ウェブにある情報なら、わざわざ書き写す必要はない。「コピーしてペーストするだけ」というのは、当然のことだ。

 問題は、教師の側にある。つまり、ウェブで調べればわかることを宿題にしていることこそ、問題なのだ。この話は、教師が生徒に追い越されてしまっていることを示しているだけのことだ。

 学校の試験も入学試験も、「何でも持ち込み可」という条件で行なうべきだ。知識ではなく、問題解決能力をテストする必要があるからである。「問題解決能力こそ重要」と言いながら、その能力をテストしていない。そして、依然として知識をテストしようとしている。

 入社試験も、同じだ。「時事用語の意味の説明」などという試験問題を出している会社は、受けないほうがよい。数年経てば左前になる危険が大きいホープレスな会社だからである。

「時事用語の意味の説明」ではなく、インターネットに接続しているパソコンを置いた試験場で、検索の能力をテストすべきだ。たとえば、「インターネットの検索機能を活用して、新しい業務の企画書を作れ」というような問題にしたらどうだろう。将来会社の役に立つ人材を見つけられることは間違いない。

ダイレクト検索:
対象の「名前」を検索語として用いる 以下では、検索の方法について論じることとしよう。検索には、いくつかの方法がある。

 第一は、対象の名称を直接に検索語として用いる方法だ。これは、誰もが日常的に行なっている方法である。この方法を、「ダイレクト検索」と呼ぶことにする。

 ここでの問題は、検索語として何を用いるかである。一般的な普通名詞では、ヒットする対象数が多くなりすぎて、あまり有効でない。たとえば、「ITが経済活動に与える影響」を調べたいとき、「IT」でも「経済活動」でも駄目である。これらを用いて「and検索」をしても、あまり有効でない。検索語としては、できるだけ限定的なものを用いるべきだ。


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