育児休業に対する考え方が変わるかもしれません(写真:Ushico / PIXTA)

昨年の冬に待望の第1子が生まれたMさん(男性35歳)。Mさんは、職場のみんなに勧められ、記念すべき職場第1号の男性育児休業の取得者として、5日間の育児休業を取得したのでした。

先日、前職の同期会で久しぶりに会ったYさんにそんな話を上機嫌でしたところ、Yさんも同じく育児休業を5日間取得していました。しかも、Yさんは事前にいろいろと調べていたようで、育児休業を取得した月の給与の手取りがいつもより15万円ほど増えたとノリノリで話してきたのです。Mさんは、いまいち内容を理解できず、ただただ自分の無知さにがっかりしたのでした……。

どうせならお得に育児休業を取得しよう

「自分は育児休業なんて」と思っている男性会社員の皆さん。これを読んだら育児休業に対する考え方が変わるかもしれません。そこで今回は、どうせ育児休業を取得するなら社会保険の仕組みを理解して“超お得に取る方法”をご紹介したいと思います。

1. 育児休業は1日から取得できます

育児休業(原則子が1歳まで)は、数週間や数カ月などある程度、長い期間取得するイメージを持たれている方が多いでしょう。しかし、実は1日からでも取得できます。

とはいえ、育児休業期間については、多くの会社で無給となっているため、その日については給与が控除されてしまいます。

一応、育児休業を取得した期間については、一定の要件を満たせば雇用保険から育児休業基本給付金が支給されます。しかし金額は、直近の給与で算出された額の67%(育児休業6カ月目からは50%)になってしまい、手続きの煩雑さや振り込まれるまでの時間も考えて、数日程度の育児休業を取るくらいなら年次有給休暇を取得される方が多いのが現実だと思います。

しかし、育児休業と年次有給休暇では、社会保険の取り扱いがまったく違うのです。

育児休業を取得した月は、原則として社会保険料〔健康保険料(40歳以上の場合は介護保険料も)、厚生年金保険料〕が免除されます。しかも、社会保険料の免除は本人分だけでなく、原則折半している会社負担分についても免除になります。そのため、会社にとっても育児休業を社員に積極的に取得してもらうことはコスト面でもインパクトがあるわけです。

免除された期間も「ひょうげつ」は変わらない

ちなみに、将来の年金への反映について、気になった方もいるかもしれませんが、社会保険料の免除期間については、あくまでも社会保険料が免除されるだけであって、将来の年金には、登録されている標準報酬月額(ひょうげつ)が反映されます。つまり、将来の年金には、免除された期間も保険料を払ったものとして金額に反映されるわけです。なお、「ひょうげつ」については、過去の記事「給与が減ったと思ったら『この表』を見よ!」をご覧ください。

2. 社会保険料が免除されるためには

前述のとおり、育児休業を取得した月については、原則として社会保険料が免除されるわけですが、短期で育児休業を取得する場合は、社会保険料の免除の仕組みを理解していないと保険料が免除されない可能性が極めて高いです。

そもそも、社会保険料は月単位で考え、育児休業期間の社会保険料免除については、法的には「育児休業を取得した月から育児休業を終了した日の翌日の属する月の前月まで」保険料が免除されると定められています。そのため、たとえば9月1日から9月7日まで(1週間)取得した場合は、育児休業を取得した日は9月1日ですので9月分から免除の開始になりますが、終了した日の翌日は9月8日であり、免除の終了は前月の8月分までになるため、このケースだと免除されないのです。つまり、育児休業を取得した日と終了した日の翌日が同じ月だと社会保険料は免除とはならないのです。

逆に同じ1週間でもたとえば、9月24日から9月30日まで取得した場合では、取得月が9月で、終了日の翌日は10月1日になるため、前月の9月分の保険料が免除になるのです。要は、短期で取得する場合は、月末に育児休業しているかどうかが重要なポイントになるということです。極端な話、月末の1日だけ育児休業した場合でも、その月の社会保険料は免除になるので、タイミングが非常に大事になります。

育児休業を取得した期間については、一般的には給与が支払われないため、雇用保険から給付金をもらうことになりますが、育児休業の日数によっては、給与から差し引かれる額より社会保険料の免除額のほうが多くなり、結果的に手取りが増えることもあるのです。なお、育児休業は、もともと働く義務のない休日には取得できないため、月末が日曜日で休日のようなケースはご注意ください。

3.ボーナス月なら賞与分の保険料もダブルで免除

社会保険料の話をしても、自分の給与明細をあまり見ない方は、金額のイメージがつかめないと思います。そこで、具体例を出してご説明します。

たとえば、月給36万円の人の場合。社会保険料の基となる「ひょうげつ」が36万円だとすると健康保険料は1万7820円(2018年協会けんぽ東京支部)、厚生年金保険料は3万2940円(2018年)となり、合計した5万0760円が基本的には毎月社会保険料として給与から控除されています。

この金額が免除されるだけでも大きいですが、もっとお得にしたい場合は、ボーナスが支給される月に育児休業を取得すれば、ボーナスに掛かる社会保険料も併せて免除になるので、かなりインパクトが大きくなります。

育休取得のタイミングを計ることができるなら

たとえば、ボーナスが6月10日に70万円支給され、育児休業を6月26日から30日まで5日間取得した場合。賞与分の保険料が、健康保険料が3万4650円(2018年協会けんぽ東京支部)、厚生年金保険料が6万4050円(2018年)。給与のひょうげつが上記と同じく36万円だと、通常の給与分の保険料は上記計算のとおりになるので、なんと合計して14万9460円も社会保険料が免除されるのです。冒頭のYさんはいろいろ調べてボーナス月にタイミングよく育児休業を取得して、15万円ほど手取りが増えて喜んでいたわけです。

4.有給なのに育児休業給付金がもらえることも

育児休業期間に対して、雇用保険から支給される育児休業給付金。給与額に応じて調整され、給与が全額支払われているような場合には給付金は支給されません。大企業では特に男性の育児休業取得促進のため、最初の5日間は有給として全額支給されている会社もあります。しかし、育児休業期間中に給与が全額支給されていた場合でも、一定の要件を満たせば給付金がもらえる場合があります。

実は、育児休業給付金は育児休業期間中に給与支払い日があった場合に限り、給与が支払われたものとして考えるため、育児休業期間に給与支払い日がなければ給与の支払いがなかったものとして取り扱われ、育児休業給付金がもらえるのです。

したがって、たとえば、上記ケースで6月26日から6月30日まで育児休業を取得し、その期間有給だった場合に、その会社の給与支払い日が6月25日だったケースは、あくまでも育児休業期間中に給与支払い日がないため、給与の支払いがなかったものとして、育児休業給付金が全額もらえるわけです。つまり、有給で給与が全額支払われているのに、雇用保険から育児休業給付金がさらにダブルでもらえてしまうということです。上記のケースだと社会保険料も免除になるので、ボーナス月だったとすると、かなりの恩恵を受けることになります。

冒頭のMさんも、社会保険の仕組みを知っていたら、育児休業の取得時期をもう少し考えたかもしれません。ただ、育児休業は、そもそも、子の養育のためにお休みする期間であるので、休んだ日は当然しっかり育児に参加していただくのと、職場のみんなの助け合いによって休めることもお忘れなく。