京急電鉄には、発車時に車両から発せられるノイズが音階に聞こえることから「歌う電車」などと呼ばれる車両の一群がありますが、このような電車が数を減らしています。あとどれくらい残っているのでしょうか。

インバーターの置き換えで「歌わなく」なっている

 京急の電車で、「歌う電車」などと呼ばれる一群があります。発車時に車両から発せされるノイズが、音階のように響くという電車ですが、このような音を発する電車が数を減らしています。


「ドレミファインバーター」が搭載されている新1000形の「1033編成」(2017年4月、草町義和撮影)。

 音の正体は、モーターを制御するインバーターが発する磁励音と呼ばれるノイズです。ドイツ・シーメンス社製のインバーターを搭載した一部の車両が発車時に発する音で、鉄道ファンなどから「ドレミファインバーター」などと呼ばれています。

 このインバーターは、1998(平成10)年から2000(平成12)年にかけて導入された2100形電車(8両編成10本)と、2002(平成14)年から導入された新1000形電車のうち初期に製造された8両編成5本および4両編成4本、合計19本の電車に採用されました。ちなみに、2100形登場当時の『鉄道ピクトリアル』1998(平成10)年7月増刊号によると、この音はシーメンス側でノイズを音階に聞こえるよう調整したもので、実際の音階としては「ドレミファ……」ではなく「ファソラシドレミファソー」だそうです。

 しかし近年、2100形および新1000形の初期車両は順次、更新工事が行われており、「ドレミファインバーター」が新しいインバーターに置き換えられています。それらインバーターが更新された電車は、“あの音”を発しなくなっているのです。

「歌う電車」残りはどれくらい?

「歌う電車」は2018年6月現在、どれほど残っているのか、京急電鉄に聞きました。

――「歌う電車」はどれほど残っているのでしょうか?

 新1000形の8両編成4本、4両編成2本(合計40両)が残っています。当社全体では現在128本の電車があるので、そのうちの6本ということになります。なお、2100形はすでに全編成でインバーターを更新済みです。

――どのような理由で更新しているのでしょうか?

 ひとつには経年です。更新時期がおよそ何年と決まっているものについて、各メーカーや当社内で協議したうえで更新しています。

――今後の更新計画は決まっているのでしょうか?

 年度ごとの更新計画のほか、車体の状況や、インバーターの開発状況にもよるので、何年までにどれほど更新するかとは言えない状況です。何社かの候補のなかから、そのときに合ったものを導入しています。


かつて「ドレミファインバーター」が搭載されていた2100形電車(2018年3月、草町義和撮影)。

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 京急電鉄では2017年度、同年度の鉄道事業設備投資計画で発表したとおり、新1000形8両(最初期に導入された8両編成1本)の更新を実施。2018年度も鉄道事業設備投資計画として新1000形8両の更新を行うとしています。

 同社によると、あの音を残してほしいという利用者の声も多々ある一方で、そうではない意見もあるとのこと。いずれにしても、「歌う電車」は今後ますます減っていくことが予想されます。

 ちなみに、京急の「ドレミファインバーター」と同様のシーメンス社製インバーターは、1995(平成7)年にJR常磐線用として登場したE501系電車にも採用されていましたが、こちらもすでにインバーターが交換されており、現在は歌わなくなっています。

【写真】JRにもあった「歌う電車」


かつて「ドレミファインバーター」が搭載されていたE501系電車。現在はおもに水戸線を走っている(画像:photolibrary)。