家族や親戚、友達にクルマを貸す際に安心できる、というニーズを想定した、24時間単位で契約する自動車保険の加入が増えています。背景には「クルマ離れ」があるといいますが、保険会社は将来をどう描いているのでしょうか。

貸すのが気になる… 借りる人が手軽に入れる保険を

 自動車保険は年単位で契約するのが一般的ですが、近年、「1日だけ」という商品が登場しています。

 たとえば東京海上日動(東京海上日動火災保険)の「ちょいのり保険」は、スマ―トフォンで申し込むことができ、保険料は1日(24時間)500円から。三井住友海上(三井住友海上火災保険)の「1DAY保険」もスマートフォンのほか、提携しているセブン-イレブン店頭の機器で加入が可能です。いずれも、必要なときに、必要な日数分だけ、手軽に加入できるといった点を売りにしています。


1日だけの自動車保険商品は、他人のクルマを借りて運転する際に利用することが想定されている(画像:Rui Santos/123RF)。

 これら商品のターゲットは、クルマを持っていない人。友達や親のクルマを運転する際に加入するといったことを想定しています。業界でいち早く2012(平成22)年から「ちょいのり保険」を本格展開してきた東京海上日動によると、利用者の約9割は10代、20代で、特に22歳以下の大学生が多くを占めるといいます。東京海上日動に話を聞きました。

――1日だけの自動車保険商品をなぜ作ったのでしょうか?

 いわゆる「クルマ離れ」の実態を見据えてのことですが、このような商品のニーズは昔からあったと認識しています。一般的な自動車保険でも、条件によっては他人が運転した場合もカバーできるので、たとえば無保険車が走り回って問題になっていたようなことはありません。ただ、クルマを貸して事故を起こされると保険料が上がってしまうこともあり、貸すのが気になる、という声があります。そこで、借りて運転される方が手軽にご加入いただける商品を打ち出しました。

――保険内容は、一般的な自動車保険と異なるのでしょうか?

 大きくは変わりません。一般的には車両保険を付けると保険料が上がりますが、「ちょいのり保険」でも車両保険を付けると24時間1500円〜になります。加えて、「ちょいのり保険」を利用して事故がなければ、将来、当社の自動車保険に加入される際に保険料を割り引く制度も設けています。

右肩上がりの利用率 今後さらに増える?

 このように、1日だけの自動車保険商品は、クルマを所有しない若者と保険会社との接点ともなっているようです。「1DAY保険」を展開する三井住友海上によると、自動車保険の加入率自体はほぼ横ばいではあるものの、若年層ではクルマを所有する人が減っているといい、レジャーなどで使いやすい保険を作ったと話します。

 これら商品は、企業が展開するレンタカーやカーシェアでは利用できませんが、
近年はインターネットを通じた個人間のカーシェアサービスも登場しています。三井住友海上は、「カーシェアの形態も変化しており、『借りる』頻度は高くなっていくでしょう。1日単位の自動車保険商品も、使用頻度が増えると考えています」と話します。

 利用率はどう推移しているのでしょうか。2012年に始まった東京海上日動の「ちょい乗り保険」は、まもなく利用件数400万件(2018年5月現在)に達するとのこと。これを猛追しているのが三井住友海上の「1DAY保険」で、2015年開始と後発ではあるものの、2018年4月に300万件を突破、右肩上がりで増えているといいます。「『1DAY保険』の大きな伸びは、セブン-イレブンという独自の販売チャンネルを設けている点でしょう」と分析します。

 この好調を受け、三井住友海上は2018年4月に、ゴルフなどのアクティビティを1日単位で補償する「1DAYレジャー保険」も発売しました。今後もこのような「1日だけ」の保険商品を強化していくといいます。

【グラフ】ちょっと特徴的? 利用件数の推移


「ちょい乗り保険」利用件数の推移(2017年1月現在)。学生の利用を反映し、夏休みや春休みに利用が増える(画像:東京海上日動)。