「手のこわばり」は更年期の症状? 正しい知識で安心な備えを

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執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ


「指や手がこわばる」という訴えが更年期世代の女性に多いということ、ご存じですか?

これは意外と知られていない、更年期特有の症状です。

更年期に現れる手の不調とはどのような症状なのでしょうか。

更年期は早くから予備知識を持つことで、少なからず不安を解消できるものです。

ご一緒にみていきましょう。

更年期世代の手の不調

手がこわばる、指のグーパーがしづらい、ビンのふたやペットボトルのキャップが開けられない…

など、更年期世代の女性が訴える症状のなかにこうした手の不調がみられます。

加齢のせいなどと見過ごされがちなこの悩みが、更年期症状の一種であると近年分かってきたとのこと。

しばらく手を休めたり、炎症を湿布で抑えたりすることで自然に治まる場合もあるようです。

しかし、手の外科、平瀬雄一医師(※)によると、放置すれば指が変形し悪化していく可能性もあるため、手の外科の専門医を受診するなど早めの対応を呼び掛けています。

それでは、実際にはどのようなことが原因なのでしょうか。

※東京新聞『手指の痛みは更年期症状かも 女性ホルモン影響 変形する恐れ』(http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201706/CK2017061302000166.html)

エストロゲンの減少による影響

女性ホルモンのエストロゲンは、関節の動きを滑らかにする働きがあります。

また、皮膚のハリや弾力を保つコラーゲンの分泌にも関わっています。

ですから、更年期になりエストロゲンが減少するとこうした働きが衰えてくるわけです。

具体的には、皮膚が乾燥したり薄くなったりするほか、手足の先など末梢のしびれやこわばり、皮膚の知覚過敏などの症状が現れます。

つまり、手足のこわばりや痛みといった症状は、関節や腱に炎症やむくみが起こりやすくなっているからなのです。

ちなみに、出産後、更年期障害と似た症状が現れる場合がありますが、これは出産による女性ホルモンの急激な減少が原因です。

また、20〜30代に出現する更年期障害のような症状を若年性更年期障害といいます。

こちらは女性ホルモンの減少はそれほど顕著でなくても、自律神経の乱れがなどから似たような症状が起こるものです。

間違えやすい他の病気に注意

更年期の手の不調は、関節リウマチと間違われやすいので注意が必要です。

関節リウマチは免疫機能の異常によるものです。

本来身体を守るはずの免疫細胞が自分自身を攻撃する病気で、自己免疫性疾患と呼ばれます。

関節リウマチでは、左右対称に関節の腫れ・痛み・2時間以上続く朝のこわばり、微熱や倦怠感などの症状が出ます。

進行すると骨や軟骨が破壊されて、関節が変形する場合もあります。

関節リウマチ以外にも、変形性関節症のひとつで指の第1関節が赤く腫れて曲がってくる「へバーデン結節」や、甲状腺機能低下症による手指のこわばりや関節痛など、間違えやすい病気との区別が大切です。

更年期障害の基本知識

更年期障害は、閉経をはさんで前後約10年間(45歳〜55歳位)に起こる不調をいいます。

女性ホルモンの極端な減少によって起こるさまざまな症状です。

関節痛や手指のこわばり以外に、突然のほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)、イライラ、不安感、憂鬱感、集中力の低下、めまい、耳鳴り、動悸、倦怠感、うつ状態…などがあります。

関節リウマチや甲状腺機能低下症などと区別するには、関節症状以外に出ている症状によりますので、注意深く観察してください。

ポイントは更年期のケアと適切な診断

更年期による手指の不調には更年期症状の治療が有効です。

自律神経調整薬や漢方薬などの薬剤療法、ホルモン補充療法(HRT)などがあります。

また、メンタルな要因が不調をもたらしている場合は、カウンセリングや心理療法もおこなわれています。

こうした治療が症状を軽減させる可能性があります。

いずれにしても、他の病気との区別を含め、早期発見・早期治療が重要です。

関節症状の診断には整形外科やリウマチ科、甲状腺の検査であれば内科や内分泌内科、さらには婦人科や更年期外来を受診するなど、除外診断を経て専門医にたどり着くことがポイントといえるでしょう。

日常生活におけるケア

栄養の偏り、運動不足、睡眠不足、ストレス過多などに心当たりがあれば、まずは見直してみることも大切です。

症状が改善する可能性があります。

リラックスする

ハーブティやアロマオイルなどを取り入れて、ホルモンバランスを整えましょう。
脳の視床下部まで届く香りは、症状緩和に期待できます。

ぬるめのお湯にゆっくりつかってのんびりする時間も大切です。
ハーブやアロマの入浴剤を入れてもよいでしょう。

身体を動かす

運動やマッサージを取り入れて血液循環を促進しましょう。
ウォーキング、ストレッチ、ラジオ体操などが奨励されています。

たとえば、朝起きる前に布団のなかで、手を握ったり閉じたりする、足首をクルクルと回す…などの簡単な運動をしてみましょう。手足の動きがスムーズになります。


更年期症状は気にし過ぎるとより悪化する傾向があります。

今回のお話をきっかけとして、更年期症状のひとつに手の不調がある…と知っておくだけでも不安は軽減されると思います。

また、無気力感のまま何もしないで寝ている…という状態は極力避けましょう。

趣味や気晴らしをして、少しでも外に目を向けるように心がけていると症状緩和につながります。


<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供