近年、おいしいコーヒーの代名詞として世界的ブームとなっている「スペシャルティコーヒー」。日本国内でもスペシャルティコーヒーを提供する店舗は急速に増加し、その名前をよく見かけるようになりました。しかし、スペシャルティコーヒーという言葉を知っていても、普通のコーヒーとの違いを説明できる人はまだまだ少数派ではないでしょうか。そこで、日本スペシャルティコーヒー協会の佐々木真一事務局長に聞きました。

消費者が「おいしい」と満足するコーヒー

 佐々木さんによると、そもそも、スペシャルティコーヒーの定義の大原則は「飲んだ消費者が『おいしい』と評価して満足するコーヒー」。その、おいしいコーヒーを提供するためには以下のことが必要です。

・生産国における栽培管理や収穫、生産処理、選別、品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること

・適切に輸送、保管されることで、劣化のない状態で焙煎(ばいせん)され、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること

・適切に抽出され、その生産地特有の素晴らしい風味特性(テロワール)がカップに表現されていること

「コーヒーの栽培から抽出まで(=From Seed to Cup)の全段階で細心の品質管理と適切な対応が求められるのです。また、私たちはスペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティーとトレーサビリティーの考え方を重視しています」(佐々木さん)

 佐々木さんによると、国によってスペシャルティコーヒーの定義はやや異なりますが、世界で生産されるコーヒーのうち、それと認められるのはわずか5〜10%との情報もあり、コーヒーの“エリート”であることは間違いないようです。

 具体的には、日本スペシャルティコーヒー協会がスペシャルティコーヒーを判定する際の基準は以下の7項目です。

【カップのクオリティー】

「カップ」とは容器のことではなく「抽出されたコーヒーの液体」のこと。そのコーヒーの風味に「汚れ」や「欠点・瑕疵(かし)」が全くないことがポイントです。

【甘さ】 

 コーヒーの実は、サクランボのように赤く熟すため「コーヒーチェリー」と呼ばれます。このコーヒーチェリーの熟度と均一度がスペシャルティコーヒーの重要な指標の一つ。「コーヒーの甘さは、焙煎後の豆に含まれる糖分の量だけでなく、ほかの成分との結合によっても左右されます。また、強すぎる酸味や辛さのある苦み、渋みなど甘さを阻害する要因も勘案されます」。

【酸味の特徴】

 酸味は「強さ」ではなく「質」が評価対象で、さわやかさや繊細さの度合いで判定されます。「良質の酸味はコーヒーに生き生きとした印象を残しつつ、繊細さを与えます。酸味にキレがなかったり、刺激が強すぎたりするものはNGです」。

【口に含んだ質感】

 口に含んだ時の粘り気や密度、濃さ、重さ、舌触りの滑らかさなど、コーヒーが触覚に伝える質感が評価されます。

【風味特性】

 スペシャルティコーヒーと一般のコーヒーを区別する最も重要な項目です。コーヒー豆の栽培地域が持つ特性(土壌や気候など)や、育った環境の違いによる豆の風味の個性が表現されているかどうかを判定します。

【後味の印象度】 

 飲んだ後、口の中に残るコーヒー感を評価。甘さの感覚で消えていくのか、強い刺激が残るのかを判定します。

【バランス】

 コーヒーが持つ風味の調和度を判定します。基準は「風味が主張しすぎていないか」「不足しているものはないか」。

背景に「米国人のコーヒー離れ」

 ところで「スペシャルティコーヒー」という言葉は40年ほど前から存在していました。そのコンセプトは1978年の「コーヒー国際会議」で米国人によって提唱され、1982年には、コーヒーの品質向上や適正価格での取引を目的として、米国でスペシャルティコーヒーの協会「SCAA(Specialty Coffee Association Of America)」が設立されました。当時、コーヒーの消費量が低迷し、米国人のコーヒー離れが加速していたことがその背景にあるそうです。

「1960〜70年代の東西冷戦時代、中南米諸国の共産化を防止する手段として、コーヒーは米国や西欧諸国によって大量に買われる状況にありました。一方、特に米国市場においてはメーカー間のし烈な価格競争の下、コーヒーの味が劣化し続け、『米国のコーヒーはまずい』というイメージから米国人のコーヒー離れが進んだのです」

 しかし、1990年代後半からは、おいしいコーヒーを求める消費者の声が大きくなり、それが一つの社会現象となって、米国でスペシャルティコーヒーが求められる時代が訪れたそうです。

(オトナンサー編集部)