軽自動車にハイオク仕様がない理由とは
軽に求められるコスト要件と64馬力規制からハイオクを選ぶ意味が少ない
ハイオクガソリンというのは、オクタン価が高いガソリンのことです。オクタン価というのは、ノッキング(異常燃焼)の起きにくさを数値化したものです。そのためオクタン価が高いと、エンジンの圧縮比を高くすることができ、その結果トルクが大きくなります。またエンジンの回転数を高くすることができるので、パワーも高くなります。そのためハイパワーを狙うスポーティなクルマや、高級車ではハイオク指定となっています。
ちなみに輸入車はほぼ全車がハイオク指定になっていますが、それはヨーロッパなどでレギュラーガソリンとして扱われているガソリンが95オクタンなのですが、日本のレギュラーガソリンは89オクタンなので不十分で、96オクタン以上であるハイオクガソリンが必要になるためです。
ハイオクガソリンはレギュラーガソリンに対して、1リッター当たり約10%前後、価格が高くなっています。これはレギュラーガソリンに対して、さまざまな添加剤を加えることでオクタン価を高めるだけでなく、エンジン内部の浄化機能などを持たせているためです。最近は低コスト化も含めて、ほとんどのモデルがレギュラー仕様となっています。
軽自動車でハイオク仕様の設定がないのは、ひとつはそうした運用コストの問題でしょう。低コストな軽自動車だけに、レギュラー仕様であることは大事な要件かもしれません。
もう少し探ってみましょう。大きな理由は、すでに64馬力というパワー規制値が存在することです。それ以上のパワーを出すことはできないので、ハイオク仕様にしてパワーアップさせる意味がないのです。
かつてはハイオク仕様の軽スポーツモデルも存在した
しかし、そうはいっても、かつてはスバルがヴィヴィオR、スズキがアルト・ワークスRといったハイオク仕様モデルを登場させていました。それらはモータースポーツ志向のモデルだけに、速さを追求する必要がありました。
それらは実際に走らせてみても、レギュラー仕様の64馬力モデルよりも明確に速かった記憶があります。
ちなみに、別にハイオク仕様を設定できない規制はありません。自動車メーカーの意志で自由に決めることはできます。
しかし軽自動車の660ccエンジンというのは日本国内専用の、いわばガラパゴス規格です。輸出するのであれば95オクタン仕様のエンジンが作られることになりますから、国内向けハイオク仕様が生れる可能性もありますが、輸出仕様は存在しないので、一般的にはハイオク仕様は出てこないでしょう。
エンジン技術を考えると、高圧縮化やダウンサイジングターボなど、ハイオクガソリンの有効性は高くなっています。ハイオク仕様か、レギュラー仕様か、その差は、そうした先進的なエンジンになればなるほど、大きくなります。
とくに低回転域でのトルクの差が大きいので、燃費にガッツリと効いてきます。そういう意味では、基本全車ハイオク仕様にして、ガソリンの種類を一本化してコストダウンを図るほうが、一般的なユーザーにとってのメリットは大きくなることでしょう。