NFL元GMの失言から考えるアメフトの安全性

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■NFL元GMの言葉

 「アメフトは人間のやるスポーツではない」いかにもスポーツ好きの子供を持つ親が言いそうなセリフだが、これを発したのは何とNFLのGMだ。バッファローヒルズで今年4月までGMを務めたダグ・ウェイリー氏が言った言葉だ。彼は発言を撤回しているが、このセリフが波紋を広げたのは間違いないだろう。

 アメリカンフットボールは全米で一番人気のあるスポーツであるがその反面、毛嫌いしている人も多い。特に息子にアメフトをやらせたくないという母親は多い。理由は至極簡単で怪我をしやすいからだ。ポジションによってはヘルメットをかぶりながらではあるが頭同士をぶつけに行ったり、トップスピードで走っている選手を止めに行かなければいけない。

 私が大学生のアメフトの試合を見た際にマネージャーが負傷した選手の元へ駆け寄り、コーチに平然と「鎖骨折れてると思います」と言ったのが印象的だった。彼らにしてみればそれくらいは許容範囲なのだ。

■さらに恐ろしいデータがある

 アメリカのトップリーグであるNFLの選手111人が死後に脳を提供した。その脳を研究したボストン大学の研究チームは、このうちの110人の脳に慢性外傷性脳症(CTE)の兆候が認められたと発表した。

 CTEの症状として挙げられるのはめまい、うつ病、記憶障害などで、アメフトを引退して何年もたった後に現れる可能性もあるといわれている。NFLの選手同士の衝突はまさに事故と言っても過言ではない。

 だからと言ってアメフトが行われなくなるのも、劇的にルールが変わってしまうのも、さみしいものだ。「危険だから」の一言でアメリカンフットボーラーの活躍の場を奪ってほしくはない。

■防具の改良

 昔はアメリカで毎年アメフト選手の死亡者が出ていた。社会問題にもなりヘルメットの改良を余儀なくされた。それにより劇的に頭部のけがは少なくなった。しかしそれでももうワンランク改良する必要が出てきたのではないかと思う。

 スポーツに命を懸ける選手はたくさんいる。その選手に対してスポーツが単なるエンターテイメントだとは言いたくはない。それでも観客がいなくなれば競技は行われない。怪我をするのは自分だから、責任も自分で取ればいいという問題ではないのだ。

 スポーツ選手を応援する観客や、その親、友人はプレーヤーの怪我を望まない。安心してアメフトを観戦できるような防具とシステムを構築して安全性を高めていってほしい。