関西で多くの店舗を展開するお菓子の専門店「まるしげ」で約20年前から販売されている、「呼吸チョコ」なる 不思議な名前のチョコをご存知だろうか。1袋598円(税別)と市販のチョコよりややお高めな値段にもかかわらず、もはや大阪人の定番となっている。
2017年からはパッケージも高級感あふれるものに一新され、最近は外国人観光客にも大人気!! 爆買いの波にのり、その勢いはなんと現在「呼吸チョコ」のみの新工場を建設するほどらしい。
っていうか、「呼吸」って何? 「まるしげ」にわきあがる疑問をぶつけてみることに。

「呼吸チョコ」という名称の意味は?


「呼吸チョコ」という名称になったのは2006年から。「つくりたての風味が息づいている、まるで呼吸をしているように新鮮」という意味だそうな。さらに、家族、恋人、友人など「呼吸(いき)」の合う大切な人との時間に食べてほしい、そして「意気」投合してほしいとの意味合いも込められているという。


現在のラインナップはこんな感じ。まずおさえるべき定番は、ココア味の「北新地」。最初はこれだけだったのだが、約20年のあいだに少しずつ種類が増えていったらしい。ほか、宇治抹茶味の「京都祇園」、コーヒー味の「神戸北野」、きなこ味の「奈良吉野」、春らしい「いちご」の5種類がある。



こちらが「まるしげ」本社のある大阪・京橋のオフィスビル「ツイン21」内にある直営店。外観からして「呼吸チョコ」を猛プッシュしているのがわかる。近隣はニューオータニなどホテルが多い立地ということもあり、「関西限定」「関西土産に!」などの POPが目立つ。


春らしい「いちご」は女子人気No.1だそう(秋から春までの限定販売)。 外国人観光客には定番の「北新地」と同じくらい、宇治抹茶味の「京都祇園」がやはり人気だそうだ。


英語や中国語で書かれた解説シートを置くなど、外国人観光客向けのアピールもばっちり。「北新地」や「祗園」などの地名がわからない外国人のために、わざわざ説明しているページもあった……。

25年前に発売されたロングセラー



ちなみにこちらが、旧パッケージの「北新地」。
正確な発売年はいつだったのでしょう?

「1992年です。弊社のプライベートブランドとして、最初は『ティラミスチョコレート』という名称で発売しました。時代の流れとともに大資本のスーパーが増えて、いわゆる“まちのお菓子屋さん”が減りつつあるなか、生き残っていくためには、ここでしか買えないオリジナル商品の開発が急務だったんです」

「当時はイタリアンスイーツのティラミスが大ブームだったことから、そのテイストを気軽につまめる新感覚のチョコレートとして注目を集めました。ティラミスブームが去った後も、おがげさまで順調に売り上げを伸ばしロングセラーに。いまでは、弊社の看板商品となっています」

なるほど、90年代のティラミスブームの波に乗るかたちで生まれた商品だったんですね……。それにしても、「ショコラティエ」という言葉がまだ日本に定着しておらず、海外製の高級チョコなどもいまほど一般的でなかった頃から、時代に先駆けて大人向けのチョコをつくっていたのはある意味すごい。


中身はこんな感じ。キャラメルコーティングしたアーモンドをマスカルポーネチーズクリームでくるみ、ココアパウダーをまぶすというまさにひとくちサイズの「ティラミス」。
甘さ控えめで、ウイスキーなどのお酒にも合う。値段が高めなのは、やはり上質なアーモンドやマスカルポーネチーズといった原材料にこだわっているからだそうだ。傾斜をつけた回転釜を使い、熟練した職人がひと粒ずつ仕上げているそう。

北新地で人気に火がつき、愛称が正式名称に


実は「ティラミスチョコ」の人気に火がついたのは、大阪有数の歓楽街として知られる北新地のスナックやラウンジから。お酒に添えるチャーム(ちょっとしたつまめるもの、お菓子) として出されていたものが人気になり、ホステスさんたちが「北新地チョコ」と呼ぶほど定着していたのだそうで……(その愛称がのちのち正式名称に )。そんな夜の街で愛されていたという背景もあって、どこか大人の香りが漂うチョコでもあるのだ。キラキラした包み紙も、なるほどお酒の席の間接照明に映えそう。


「ナッツや豆菓子といった乾きものは食べずに残すことも多いかと思うのですが、ティラミスチョコはその場で食べなくてもポケットに入れて家族に持ち帰るなど、お皿に残っていることはなかったようですね。また、出張などで大阪を訪れたビジネスマンが関西土産として持ち帰り、奥さんやお子さんに『あのおいしいチョコ、また買ってきて!!』とせがまれるなどして、口コミで首都圏などでも少しずつ知名度が上がっていきました」。

最後に「呼吸チョコ」が購入できる場所だが、現在は関西圏にある「まるしげ」店舗のほか、空港(関空、伊丹、成田)やターミナル駅(JR新大阪駅・JR京都駅)、ネット通販などだそう。東京では有楽町の「東京交通会館」1Fにある「大阪百貨店」(「蓬莱本館」の豚まんや、「北極」のアイスキャンデーなど、大阪人のソウルフードを集めたアンテナショップ)でも手に入るそうだ。
いつか、「呼吸チョコ」=日本土産の代名詞として地位を築く日がやってくるのか? 引き続き、奮闘を見守っていきたいと思います。
(まめこ)