【速攻試乗】中谷明彦が鈴鹿サーキットで新型ホンダNSXを全開!

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EV走行でピットを加速する新型NSX

ついに新型NSXに試乗できるチャンスが巡ってきた。それも鈴鹿サーキット・フルコースで。

思えば2008年に当時の本田技研社長・福井威夫氏が、ほぼ完成の域にあった2代目NSXの開発中止を発表した衝撃の会見から8年。2012年にハイブリッドスポーツとしての新生NSXコンセプトが発表されてから4年も経つ。

この間にさまざまな情報やスクープ写真が流され、またスーパーGTでは2014年から新型NSXのボディフォルムを纏ったGT500マシンがデビューするなど新型でありながらデザイン的には鮮度が褪せてしまっていた感は否めなかった。だがやはり乗って走らせて初めて明らかになることがもっとも重要であり、勇躍鈴鹿サーキットへ駆けつけた。

ピットロードに並べられた新型NSXはリヤバンパーのセンター下部に設けられた排気管からアイドリング状態ではなかなかいい感じの排気音を発しながら搭乗を待っていた。

ドアを開けコクピットに乗り込んだ最初の印象は「視界がいい」ことだった。旧モデルから引き継がれたという視界のよさは、新型の美点として開発エンジニアからも特筆点として挙げられていた。

そして操作系のインターフェースも配置がよく操作しやすそうだ。ステアリングは変形楕円で頭頂部が平になっていることも視界確保に一役買っている。

暖気を終え、一旦カットオフされているパワーユニットはボタンスイッチで目覚めるが、すぐにアイドルストップでエンジン停止する。

トランスミッションの作動はボタンスイッチとなり、D/M(D:ドライブ/M:マニュアル)ボタンを押すことで発進可能となる。ゆっくりアクセルを踏み込み発進させるとEVモードで走行を始める

EV走行は93km/hまで可能で、前輪モーターによるFF状態だがアクセルを踏み増すと直ちにエンジンが起動しハイブリッドモードとなる。

全開加速では4WDのトラクションでシートに身体がめり込む!

ピットロードからコースインするときはアクセルを全開とし、フルパワーで加速性能を試したAWDによるトラクションはさすがに強力で体がシートに押し付けられる。このシート、アメリカ人好みなのかクッションが厚く加速Gで体がめり込みポジションが遠くなってしまうほどだった。

ツインターボエンジン+モーターがフル加速時に発するサウンドはあまり官能的とはいえないが、クイックにシフトアップしていく9速DCTはシフトショックもほとんどなく抜群に小気味いい。
コーナーに向けて減速旋回を始めて行くとミッドシップらしいリニアな回頭性を見せるが、思いのほかロールが大きい。どうやらサーキット走行用に特別装着されたピレリP-ZERO・トロフェオRがハイグリップであることと、タイヤサイドウォールが1780kgの車重に対してたわみロール感を助長させているようだ。

さらに旋回加速に移行する場面になると加速Gで後輪サイドウォールがたわみリヤがスクウォートし、フロントはリフトアップするピッチング挙動を示し、若干アンダーステア傾向になる。

そこでコンソールセンターのダイヤルスイッチを操作してトラックモードを選択する。3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジンは、後輪用モーターとドッキングしており、ターボのタイムラグ分をモータトルクピックアップで補うシステムだ。

しかしデフォルトモードでアクセル開度が大きいとモータートルクとエンジンのブーストトルクの繋がりが悪く、微小なタイムラグのあと、ドカンとシステムトータルトルクが発生することも車体のピッチングを誘発している。

これがトラックモードだとモーターもエンジンのピックアップも向上して繋がりがよくなり、またサスペンションも磁性流体により減衰力がコントロールされるアクティブダンパーシステムが瞬時に作動し、車体姿勢のフラット化に貢献している。


これらの効果や変化が手に取るように感じ取れるのはボディ剛性が非常に高くしっかりしているためで、防振や静粛性も究められていて質感も非常に高い。

サーキットでの速さを阻害しない「賢い」電子制御

前輪は2モーターで左右個別に制御され、加速時も減速回生時もステアリングに応じて適切なトルクベクタリングが行なわれライントレース性を高めている。

逆バンクやダンロップコーナなど難しいコーナーも難なくクリアできる。試しに破綻を引き起こすようなステアリング入力を試してみたが、電子制御が介入して姿勢を瞬時に正してしまう。

トラックモードではトラクションコントロールは解除されるがVSAは有効で、状況に応じて介入する。それはサーキットでの速さを阻害しない制御なので、オフにしないほうが安全も担保されお薦めだ。

ちなみにストレートではあっと言う間に180km/hの速度リミッターが作動し6速までしか使えなかった。だがこの速度リミッターは任意で解除できるので心配ない。他社と違うのはGPSによる位置制限がないので一般道でも解除できること。それだけに新型NSXドライバーは大きなモラルと責任感も求められることになる。

数ラップしてピットに戻るときは「QUIET(クワイエット)」モードを選択し、EV走行でスルスルと静かに戻れる。サーキット走行をしてもバッテリー残量はほぼフルチャージに保たれていた。

全開走行中でもバッテリーチャージを繰り返しハイレベルな充電状態を維持する制御が導入されているからだ。充電ため若干のシステム出力低下は起こるが、他社のハイブリッドのようにバッテリー電力が低下した途端に動力性能低下を引き起こしてしまうことがなく、安定して速さを発揮できるのだ。

ほかにもローンチコントロールは常時アクティベート可能であり、誰でも簡単に最大加速を引き出せるなど魅力は多い。


ウエット路面では標準タイヤのコンチネンタル装着モデルも試したがグリップレベルが低い分ロール感も少ない。一般道でさまざまな路面で走らせればマッチングのいい場面も多いことだろう。


新型NSX、今後は速度リミッターを解除して国内外のさまざまなサーキットで全開走行を試していきたい!

(試乗&リポート:中谷明彦/写真:小林 健・増田貴広)

【中谷明彦インカー動画】