「布陣なんてものはひとたび試合が始まれば、崩れていくものですから……」と、述べるテレビ評論家は日本に多くいるが、日本の場合は崩れすぎ。崩れ方にルールがない。そしてそれが決してプラスに作用していないことは、バルサを見れば、これまた一目瞭然だ。

 バルサは、センターフォワードのスアレスもその機会を絶えず狙っている。少し開き気味に構えて対角線パスを受けようとする。出し手も同様。相手に気付かれないように対角線パスに至る、そのボールの運び方に、チームとしての熟練度を感じる。思えば、昨季のチャンピオンズリーグ決勝対ユーベ戦(ベルリン)でも、バルサはこの対角線パスで鮮やかな先制点を奪っている。この時の送り手は0トップのメッシ。ユーベがメッシのボール操作に気を取られているその隙に、左サイドを長躯駆け上がったジョルディ・アルバの鼻先に、サイドチェンジのボールが通ったのだった。

 この原稿は、決勝戦を前に書いている。対リーベル戦でバルサのサイドチェンジは炸裂するのかがその注目点だと言いたいが、その価値は、俯瞰が利きにくい横浜国際の観戦を通しては伝わりにくい。鮮やかな対角線パスが、たいして鮮やかに見えない可能性がある。日本のサッカーが非バルサ的であるのはスタジアムの造りと大きな関係がある。眺めの悪いスタジアムで世界一展開が美しいサッカーを観戦しなければならない不幸を、恨まずにはいられない。