4年ぶりに日本ハムに復帰する吉井理人投手コーチ【写真:富樫重太】

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「(大谷の速球は)えげつない?」の質問にも「そう見えますか?」、 右腕の課題を明かす

 来季から4年ぶりに日本ハムに復帰する吉井理人投手コーチが29日、都内のホテルで就任会見を行い、今季リーグ最多の15勝(5敗)を挙げ、最優秀防御率(2.24)、最高勝率(7割5分)の3冠に輝いた大谷翔平投手の課題について、独自の視点で見方を示した。

「弱点よりも良いところをもっと伸ばしていきたい。その方が本人も楽しく取り組める。投手として中6日で回したいし、イニング数もできる限り多く投げさせたいと思っています」

 吉井氏は就任会見で、すでに日本を代表する投手に上り詰めている21歳に対する指導方針を明かした。

「順調に成長していると思います」としながらも「エースと言われるピッチャーは200イニングくらい投げないといけないので、まだ段階を追って成長しないといけない」と指摘。今季、160回2/3を投げた右腕の投球イニングの増加を課題に掲げた。

 ただ、その解決策は、単純にスタミナ面の向上や、登板間隔など起用法の変更ではないという。

 大谷の直球の威力について「えげつないのでは?」と記者から質問されると、吉井投手コーチは「そう見えますか? 個人的にはそうは思わないです」と答えた。球速こそ日本最速を誇り、素人目に“えげつない”直球を投げ込んでいるように見える右腕。しかし、大谷とは今季4戦で2勝1敗と勝ち越したホークスの元投手コーチは「もっと操れるようになると…」とさらなる伸びしろがあるとした。

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栗山監督も大谷の投球回増に期待「エースと言われるイニングを投げること」

「やはりコマンド(=狙ったところに投げられる能力)ですね。スピードは出るので、バッターをやっつけていく作戦の部分。投手として速い球だけではないピッチャーにならなければならない」

 大谷には制球力が不足していると指摘。打者との駆け引きの中で無駄な球が減少すれば、同じ体力、起用法でも大幅な投球イニングの増加が狙えると分析した。

「(大谷の投球回が増えることで)勝てるチャンスをチームに与えていきたい」

 エースの総合力をアップさせることは、チームにとっては最も相手打者を抑える確率が高い投手が、より長くマウンドに立つことを意味する。それがチームの白星を増やしていくことにつながるというわけだ。

 会見に同席した栗山監督も、大谷への期待を問われると「エースと言われるイニングを投げること」と投球回増を求め、吉井投手コーチの手腕についても「(ホークスで)あれだけのピッチャーたちを活かし切り、ダントツの成績を収めた功績はすばらしいこと」と絶賛した。

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今季対ホークスの大谷の防御率は6.58、栗山監督は「色々教えてもらいます」

 さらに「こうなった以上、色々教えてもらいながらやります」と、ライバルチームから強力な“援軍”が加入したことに不敵な笑み。今季、大谷はソフトバンクに対して防御率6.58と苦手としていただけに、吉井コーチの“獲得”はエースにとっても大きな改善につながりそうだ。

 現在は在籍する筑波大学大学院の論文執筆中という吉井投手コーチ。「学校に入り浸りです。(論文を)なめていました。3時くらいまでいます」と研究漬けの毎日を送っているという。

 論文では「プロ野球投手に関するクイックモーションの研究」を題材としている。選手、指導者としての豊富な経験に加え、野球人としての幅を広げている新コーチは、大谷に「200投球回」と「コマンドの向上」を求めていく。

 2009年、2012年と日本ハムをリーグ制覇に導いている名コーチの加入で、大谷はさらなるレベルアップを遂げるのか。来季起こるかもしれない“化学反応”に期待せずにいられない。

富樫重太●文 text by Shigeta Togashi