父親と幼い息子の物語と聞くと、読みたい気持ちがあまり沸いてこないというのが正直なところだ。それでも買ってしまったのは、戌井昭人氏の久々の長編小説だからだ。読み始めてみるとやっぱり愉快で、ずっと読んでいたいような小説なのである。父ちゃんはミュージシャンだ。二十代の頃にはヒット曲もあったのだけれど、その後はさほど売れることもなく、ギターを持って日本中を回りながらライブハウスで歌っていた。