【プロ野球】松坂大輔がソフトバンク入り…豪華すぎる松坂世代の軌跡
メジャーリーグのニューヨーク・メッツからFAとなった松坂大輔投手(34)の、福岡ソフトバンク・ホークス入りが決定。3年総額12億円、背番号はプロ入りからボストン・レッドソック ス時代まで背負っていた18番だ。
そこで、平成の怪物と評される松坂大輔の原点を振り返ってみたい。
松坂大輔の名が全国に轟いたのは、横浜高校3年の1998年。MAX152キロの剛速球と高速スライダーを武器に、他を寄せ付けないピッチングを披露。圧倒的な強さで、第70回選抜高等学校野球大会を優勝に導いた。
<第70回選抜高等学校野球大会の試合結果>
2回戦 ○ 6-2 vs 報徳学園
3回戦 ○ 3-0 vs 東福岡
準々決 ○ 4-0 vs 郡山
準決勝 ○ 3-2 vs PL学園
決勝 ○ 3-0 vs 関大一
そして迎えた、第80回全国高等学校野球選手権大会。準々決勝でのPL学園との激闘や、準決勝の明徳義塾戦。春夏連覇を達成した、決勝、京都成章戦でのノーヒットノーランなど、その活躍は周知の通りである。
<第80回全国高等学校野球選手権大会の結果>
1回戦 ○ 6-1 vs 柳ヶ浦
2回戦 ○ 6-0 vs 鹿児島実業
3回戦 ○ 5-0 vs 星陵
準々決 ○ 9-7 vs PL学園
準決勝 ○ 7-6 vs 明徳義塾
決勝 ○ 3-0 vs 京都成章
そして、怪物・松坂大輔擁する横浜高校は、新チームになった1997年の秋から1998年秋の国体まで、公式戦44戦無敗という大記録を打ち立てている。松坂大輔の高校通算記録は以下のとおりだ。
<松坂大輔の高校通算成績>
登板試合:59
登板イニング:379回
防御率:1.12
完投:34
完封:13
奪三振:423
<甲子園での通算成績>
登板試合:11
登板インング:99回
防御率:0.78
完投:10
完封:6
奪三振:97
松坂が今なお圧倒的な存在感を示しているのは、これだけの実績を残した高校時代があるからなのは間違いない。そして、1998年ドラフト会議で、西武ライオンズ、日本ハムファイターズ、横浜ベイスターズの3球団競合の末、西武ライオンズに入団。1年目から最多勝のタイトルを獲得するなど、エース格として活躍。新人王に選ばれる。その後、3年連続で最多勝を獲得するなど、ライオンズのエースという枠を超え、日本のエースに成長。WBCでのMVP、メジャー移籍、ジャイロボール論争、ワールドシリーズ制覇など、活躍の場を世界に広げていった。
超豪華メンバーが名を連ねる“松坂世代”そして、松坂大輔という投手の存在をさらに際立たせるのは、のちに松坂世代と呼ばれる同世代の存在があるからでもある。松坂が指名された、1998年のドラフト会議では、75選手が指名され、そのうち松坂世代と呼ばれる高校生の指名は30選手。さらにそのうち8選手が1位指名を受けている。大学、社会人選手に逆指名制度があった当時としては、異例の数字である。しかも、この年の大学、社会人選手は不作だったわけでない。それどころか、上原浩治、二岡智宏、福留孝介、岩瀬仁紀、小林雅英、里崎智也ら、そうそうたる顔ぶれが揃う中でのドラフトだったのだから、松坂世代がどれほど期待されていたかがわかる。
そんな松坂世代、1位指名された選手は以下のとおりである。
<松坂世代の1位指名選手>
横浜ベイスターズ 古木克明(豊田大谷高校)
ヤクルトスワローズ 石堂克利(愛知工業大学明電高校)
広島カープ 東出輝裕(敦賀気比高校)
阪神タイガース 藤川球児(高知商業高校)
日本ハムファイターズ 實松一成(佐賀学園高校)
オリックスブルーウエーブ 新垣渚(沖縄水産高校)※入団拒否
福岡ダイエーホークス 吉本亮(九州学院高)
1位指名以外の選手も、帝京の森本稀哲がファイターズへ、日南学園の赤田将吾がライオンズへ入団し活躍している。その3年後には、夏の甲子園1回戦でノーヒットノーラン、2回戦で松坂と好勝負を演じた鹿児島実業の杉内俊哉が三菱重工長崎から福岡ダイエーホークスに3位指名され入団。
さらに2002年には、大学に進学していた松坂のライバル達が、大挙プロ入りする。この年7球団が自由獲得枠を使い大卒選手を獲得している。
<松坂世代の自由獲得選手>
読売ジャイアンツ 木佐貫洋(亜細亜大学)/久保裕也(東海大学)
広島カープ 永川勝浩(亜細亜大学)
阪神タイガース 杉山直久(龍谷大学)/江草仁貴(専修大学)
横浜ベイスターズ 村田修一(日本大学)/土井竜太郎(法政大学)
福岡ダイエーホークス 和田毅(早稲田大学)/新垣渚(九州共立大学)
西武ライオンズ 後藤武敏(法政大学)/長田秀一郎(慶応大学)
オリックスブルーウエーブ 加藤大輔(神奈川大学)
いずれも、各球団の主力として名を連ねた実力者達揃いだ。特に、ホークスの和田、ジャイアンツの木佐貫は共に1年目から2桁勝利をあげ新人王のタイトルを獲得している。
自由枠以外では、タイガースが久保田智之、スワローズが館山昌平らを指名している。その後の2006年には、春の準優勝投手「松坂世代最後の大物」久保康友が松下電器から千葉ロッテマリーンズに入団。2桁勝利を挙げ新人王に輝いた。その後、梵英心が日産自動車から広島カープに入団。レギュラーに定着し新人王を獲得。そして、2009年の森田丈武まで、じつに94名の松坂世代がプロの門を叩いている。
しかし、主力級としてチームを牽引してきた松坂世代だが、近年は年齢や、怪我、若手の台頭から主戦選手から離れる選手、ユニフォームを脱ぐ選手すらも増えてきている。最大で94名いた松坂世代の選手も、現役はわずか29名。その中でも、常時スタメン出場あるいは、ローテーションを守っている選手は、久保康友、杉内、村田の3選手くらいになってしまっている。世代交代の波が早い野球界。この現実はなんら不思議なことではない。しかし、これだけの黄金世代、その輝かしい歴史に幕を閉じるのはまだ早いように思えてならない。
そんな中での、松坂大輔の日本復帰。黄金世代の頭目が、再びその力を見せつけてくれるに違いない。若きエース、前田健太、大谷翔平、藤浪晋太郎ら、現在の日本のエースと、あの松坂大輔が投げ合う。想像するだけで胸が高鳴るのは、プロ野球ファンの総意だろう。
平成の怪物の活躍に、期待したい。
(取材・文/井上智博)