調達購買の役割を超えて/野町 直弘
ある企業でのアンダー・ザ・テーブルの開発テーマからスタートしたある製品開発、これを支援したのは調達購買部門のキーマンでした。
「公共工事、入札不調相次ぐ、北関東、資材高や人手不足影響、膨らむ事業費、整備に遅れ。」
「公共投資は有効か 供給制約の壁」
よくニュースになっているのが工事建設関連の人手不足。
特に最近は現場の職人さん獲得競争だけでなく、建設会社の現場監督や設計者などの人手が不足しており仕事を取りたくても取れないような状況のようです。
このような人手不足は震災からの復興需要と所謂五輪特需によるものと言われていますが、背景には建設投資額が底をついた2010年頃から多くの技能労働者が廃業や転職を行ったためと言われています。
確かに一度廃業や転職をした職人がまた建設業に戻らないことは容易に想像できます。また一方で低賃金や労働条件が他業種に比べても厳しい建設業界は若者にとっても魅力が高くない職種のようです。労働者の高齢化はどの業界も少なからず抱える問題ですが、建設業の場合はより深刻です。
これは建設業従業者全体で29歳以下の若手が占める割合がバブル時代の20%から、現在は約10%にまで低下してしまっている状況が示しています。
現状新しい職人の担い手として女性の活用や外国人の活用を目指すべきという声も出てきていますが、女性の活用については建設業が持つ3Kイメージが活用を遅らせているとの指摘もあるようです。現在建設業における就業者全体に占める女性の割合は14%だそうで、製造業の30%や販売・小売業の51%と比べると、その少なさは目立ちます。一方外国人の活用については期間限定で事実上の外国人労働者に対する門戸開放が実施されることになりましたが現行の法体系の中でどこまで活用できるか疑問視する声も出ています。
このように現状の建設業界においては如何に職人を獲得していくか、それから同じ職人の数で如何に生産性を上げていくか、が大きな課題となっているのです。
製造業では部品・原材料などの供給リスクを回避することが調達購買部門の重要な役割の一つです。同様に建設業においては人員確保が調達購買部門の重要な役割の一つとなっています。
この様な時代背景からとても興味深い製品の販売が発表されています。それは調達購買部門が旗振り役として製品開発したものです。製品開発というと建設業
でいう製品とは建築物や土木工事なのですが、今回の製品は「疲労軽減ウェア」。
今年の9月16日に竹中工務店がプレスリリースした「職人DARWING(ダーウィン)」というウェアです。http://www.takenaka.co.jp/news/2014/09/03/index.html
これは建設作業を楽にする疲労軽減を可能にしたウェアであり、実際の製品開発及び製造は様々なサポーター・コルセットなどの医療用品のトップメーカーであるダイヤ工業http://www.daiyak.co.jp/という企業と共同開発をしたものとのこと。
最近は疲労軽減のための機能性ウェアがランニングなどのスポーツ用として普及し初めています。私も何着か機能性ウェアを愛用しているところです。一方でこの「職人DARWING」は本格仕様であり、下半身用と上半身用に分かれ上半身用は作業によって3種類のタイプが用意されています。また医療用品メーカーが開発製造していることからもわかるように疲労度の軽減に関しても大きな効果(作業によって40%〜50%)があることが実際の効果検証により実証されています。
プレスリリース後まだ1ヶ月しか経っていませんが建設業だけでなく様々な企業から問合せがよせられているとのことです。
この「職人DARWING」の開発については非常に興味深い裏話があります。元々「職人DARWING」の開発はある研究者のアイディアからスタートしたものです。彼らは建設作業の省人化や生産性向上を目的にして当初は建設ロボットや建設
作業をアシストするマッスル系のデバイスの開発を検討していたようです。
しかし、これらを実用化するにはまだまだ時間がかかります。そういったことからこの研究者が「アンダー・ザ・テーブル」的にボトムアップで1年前に検討をスタートしたのがタネだったのです。この研究者からアイディアを相談されたのが調達購買部門のキーマンでした。このキーマンは研究者の面白いアイディアを具現化するために研究者とタッグを組んで社内調整を進めながら製品開発を支援推進し約1年という非常に短期間で「職人DARWING」の発表にいたったということです。
アイディアを持ち開発をスタートさせた研究者も凄いですが、このアイディアを支援推進し、短期間で製品化のサポートをした調達購買マンも凄い。
このような役割を担った調達購買人材は日本企業の中でも数少ない人材と言えます。
現場人材の確保が急務の経営課題であるとは言え、自社の製品やサービスとは程遠い製品の開発を支援するだけでなく、それを短期間で成し遂げている、また拡販の為の役割まで担っている。従来の調達購買の役割を超えたことを実行しているのです。
私は従来から調達購買部門の役割はようやく「便利なコスト削減請負人」になったが、それだけではなく「自社製品やサービスの競争力強化に寄与」する役割を持つようにならなければならない、つまりこれが「イノベーション調達モデル」であるということを述べてきました。
この調達購買キーマンは「職人DARWING」を今後建設現場だけでなく製造業の工場現場や女性向けにもラインナップし、疲労軽減だけでなく人手不足の解消や疲労軽減ウェアという新しい製品市場創造を考えています。今回の疲労軽減ウェア「職人DARWING」の開発製品化は今までの調達購買部門の役割を超えた新しい調達購買の姿につながる活動であるでしょう。
「公共工事、入札不調相次ぐ、北関東、資材高や人手不足影響、膨らむ事業費、整備に遅れ。」
「公共投資は有効か 供給制約の壁」
よくニュースになっているのが工事建設関連の人手不足。
特に最近は現場の職人さん獲得競争だけでなく、建設会社の現場監督や設計者などの人手が不足しており仕事を取りたくても取れないような状況のようです。
確かに一度廃業や転職をした職人がまた建設業に戻らないことは容易に想像できます。また一方で低賃金や労働条件が他業種に比べても厳しい建設業界は若者にとっても魅力が高くない職種のようです。労働者の高齢化はどの業界も少なからず抱える問題ですが、建設業の場合はより深刻です。
これは建設業従業者全体で29歳以下の若手が占める割合がバブル時代の20%から、現在は約10%にまで低下してしまっている状況が示しています。
現状新しい職人の担い手として女性の活用や外国人の活用を目指すべきという声も出てきていますが、女性の活用については建設業が持つ3Kイメージが活用を遅らせているとの指摘もあるようです。現在建設業における就業者全体に占める女性の割合は14%だそうで、製造業の30%や販売・小売業の51%と比べると、その少なさは目立ちます。一方外国人の活用については期間限定で事実上の外国人労働者に対する門戸開放が実施されることになりましたが現行の法体系の中でどこまで活用できるか疑問視する声も出ています。
このように現状の建設業界においては如何に職人を獲得していくか、それから同じ職人の数で如何に生産性を上げていくか、が大きな課題となっているのです。
製造業では部品・原材料などの供給リスクを回避することが調達購買部門の重要な役割の一つです。同様に建設業においては人員確保が調達購買部門の重要な役割の一つとなっています。
この様な時代背景からとても興味深い製品の販売が発表されています。それは調達購買部門が旗振り役として製品開発したものです。製品開発というと建設業
でいう製品とは建築物や土木工事なのですが、今回の製品は「疲労軽減ウェア」。
今年の9月16日に竹中工務店がプレスリリースした「職人DARWING(ダーウィン)」というウェアです。http://www.takenaka.co.jp/news/2014/09/03/index.html
これは建設作業を楽にする疲労軽減を可能にしたウェアであり、実際の製品開発及び製造は様々なサポーター・コルセットなどの医療用品のトップメーカーであるダイヤ工業http://www.daiyak.co.jp/という企業と共同開発をしたものとのこと。
最近は疲労軽減のための機能性ウェアがランニングなどのスポーツ用として普及し初めています。私も何着か機能性ウェアを愛用しているところです。一方でこの「職人DARWING」は本格仕様であり、下半身用と上半身用に分かれ上半身用は作業によって3種類のタイプが用意されています。また医療用品メーカーが開発製造していることからもわかるように疲労度の軽減に関しても大きな効果(作業によって40%〜50%)があることが実際の効果検証により実証されています。
プレスリリース後まだ1ヶ月しか経っていませんが建設業だけでなく様々な企業から問合せがよせられているとのことです。
この「職人DARWING」の開発については非常に興味深い裏話があります。元々「職人DARWING」の開発はある研究者のアイディアからスタートしたものです。彼らは建設作業の省人化や生産性向上を目的にして当初は建設ロボットや建設
作業をアシストするマッスル系のデバイスの開発を検討していたようです。
しかし、これらを実用化するにはまだまだ時間がかかります。そういったことからこの研究者が「アンダー・ザ・テーブル」的にボトムアップで1年前に検討をスタートしたのがタネだったのです。この研究者からアイディアを相談されたのが調達購買部門のキーマンでした。このキーマンは研究者の面白いアイディアを具現化するために研究者とタッグを組んで社内調整を進めながら製品開発を支援推進し約1年という非常に短期間で「職人DARWING」の発表にいたったということです。
アイディアを持ち開発をスタートさせた研究者も凄いですが、このアイディアを支援推進し、短期間で製品化のサポートをした調達購買マンも凄い。
このような役割を担った調達購買人材は日本企業の中でも数少ない人材と言えます。
現場人材の確保が急務の経営課題であるとは言え、自社の製品やサービスとは程遠い製品の開発を支援するだけでなく、それを短期間で成し遂げている、また拡販の為の役割まで担っている。従来の調達購買の役割を超えたことを実行しているのです。
私は従来から調達購買部門の役割はようやく「便利なコスト削減請負人」になったが、それだけではなく「自社製品やサービスの競争力強化に寄与」する役割を持つようにならなければならない、つまりこれが「イノベーション調達モデル」であるということを述べてきました。
この調達購買キーマンは「職人DARWING」を今後建設現場だけでなく製造業の工場現場や女性向けにもラインナップし、疲労軽減だけでなく人手不足の解消や疲労軽減ウェアという新しい製品市場創造を考えています。今回の疲労軽減ウェア「職人DARWING」の開発製品化は今までの調達購買部門の役割を超えた新しい調達購買の姿につながる活動であるでしょう。