間接材購買は何故上手くいかないのか。− その2/野町 直弘
今回は先週に引き続き間接材購買が上手くいかない理由について述べています。
先週に引き続き「間接材購買」についてです。
今回の三週にわたる「間接材購買」については私の現場体験を踏まえて本音を書いています。これは多くの企業で間接材購買に従事している人たちが報われておらずそういう方々やマネジメントに対して気づきや動機づけの一途になればと考えているからです。
ご批判やご意見もあるでしょうがそういうことも含め将来に繫げていくために書いていることをご理解いただければと存知ます。またもしご批判やご意見がありましたら是非ともいただければ幸いです。
前回書かせていただいた通り、同じ企業で10年前と現在でも同じこと(やりやすい品目のコスト削減活動)をやっているだけで、多少対象品目の入れ替わりはあるものの、目的や活動は殆ど変わっていないことを指摘しました。
その一つの大きな理由として人の問題を上げました。人の問題とは異動によって何年かに一回人が入れ替わりスキルの継承や仕組みの構築ができている企業は少ないということ、それから間接材プロフェッショナルを単なる便利なコスト削減要員としてしか活用できていない、ことを上げました。
また前回外部企業の活用によるコスト削減の実行、という点もスキルが継承されない理由の一つだと申し上げましたが、一方でサプライヤ側はこのような活動をどのように捉えているのでしょう。
私はVOS(ボイスオブサプライヤ)を推奨しサプライヤの声を聞きなさい、と常に申し上げております。何故なら今後益々間接材であってもサプライヤやパートナーの力を活用しなければならないからです。しかしサプライヤのパフォーマンス評価も含む包括的なサプライヤマネジメントを間接材領域で実行している企業は数えるほどしかありません。
外部企業にコスト削減実行を委託している企業は本来であれば最も大切なサプライヤとのコンタクトポイントを他社に委託している訳ですから、サプライヤマネジメントなどできている筈はないのです。
またどちらかというと社内でも力が強くない間接材購買チームですから、社内的な抵抗があまり多くない「やり易い」品目が繰り返しコスト削減のターゲットになるので、その対象品目のサプライヤにとっては至って面倒な状況であることは容易に想像できます。
実際にそのような対象品目になりやすい競争環境の激しいマーケットのサプライヤからは悲鳴に近いような声を良く聞きます。彼らの言いたいことはこういうことです。
「競争が激しいのは止むを得ないが、業者ではなくパートナー、少なくともサプライヤとしてみて欲しい」
「価格だけでなくその他のことも評価して欲しい」
当たり前と言えば当たり前。
あるサプライヤから本音ベースでこのような話を聞いたことがあります。
「あの会社は我々をパートナーなんて考えていない、自分の会社だけよければそれでよい、彼らにとって我々は業者の一つにしかすぎないから。そういう会社とは本音では付合いたくない。」ショッキングなことですが、事実です。
調達・購買の仕事とは外部資源の有効活用です。自社にないものを外部の最適なリソースで埋めていくことが基本的な役割。こういう状態でそれができていると言えるでしょうか。
サプライヤにとって、もっと困るのは、コスト削減活動の波に襲われ大がかりなコンペを実施し、競争の結果利益をはき出しました。それで落ち着くかなと思ったらいきなり担当が変わります。変わった担当とのリレーションをまた1から作っていく必要があるだけでなく、その新しい担当は過去のコンペのことなど知らずにまた同じようなコンペがスタートする。
このような状況でついていけるサプライヤはいるでしょうか。サプライヤにとっては迷惑な話でしかありません。
次に間接材購買システムについて述べていきます。
間接材の特徴の1つに関連する人(会社)の多さを上げました。関連する人や会社が多いことはそれだけ情報伝達や情報共有の必要性がある訳ですから、インターネット技術の活用等システム化によるメリットは大きいです。しかし一方で間接材購買システムを上手く活用できている企業はほんの一握りです。
もし、御社が何らかの間接材購買システムを導入し使っているとしたらこういう質問に答えてください。
「それは全支出のどの程度をカバーしていますか?」
「そのカバー率は過去に比べて上がっていますか?」
この2つの質問に対して即答できる企業も多くないでしょうし、即答できたとしても当初想定していたカバー率には到底いたっていないというのが実態でしょう。
当初、間接材購買システムは間接材購買の集中購買化を進めていくのに必須だと考えられていました。購買システムを導入することで、集中購買が進みコスト削減の実行につながるので、システム導入でコスト削減が間接的に実現できるという誤った理解がそこにはあったのです。
そのため、2000年頃から大手企業を中心に間接材購買システム導入に数億円も投資するといった状況が生まれました。しかし導入企業側もシステム導入をしても自動的に支出カバー率が100%になる訳ではないことにようやっと気が付き始めました。
そうなると数億円もの投資をすること自体がナンセンスになります。リーマンショックの影響やクラウド環境の整備もあり、当初のインストールベースの購買システムは売れなくなりました。
売れなくなるとシステム開発会社は(だいたいのケースで)買収という形でお亡くなりになります。2000年当初に片手では足りないほどの数もあった間接材購買システムの開発会社ですが、今はインストールベースでの商売をやっているシステム開発会社は数社しか思い当たりません。
一方で、SaaS形式の安価なサービスが主力になってきます。
システムというものはとてもやっかいなものです。一度お客さんがつくとお客さんが使い続ける限り新たな投資を行い、バージョンアップをしなければなりません。しかし、会社がなくなる場合にはその限りではありません。
システム開発会社が統廃合されると一度大金をかけて導入した購買システムを
リプレイスしなければならなくなります。「そもそもあまり使われていないのだから、リプレイスもしないで捨ててしまう」という考え方もありますが、例え部分的にでも間接材購買システムを導入し運用を始めた企業が、またメールとワークフローでの半マニュアル的な運用に戻しましょうというケースを私は殆ど知りません。
このように使いこなせないシステムとそのシステムのサポートも終わり、止むを得ず、また再投資を行う、しかし未だにカバー率は伸びておらず、使いこなせていない状況は変わらないのです。
ここにも間接材購買の進歩がない典型的な状況が見られます。
先進的な企業の中には会計システムと購買システムを連携させてどのサプライヤーに毎年いくら支出しているかを全バイヤーが自分のパソコンから見られるようにしています。
またある企業では購買システムをカスタマイズし、直接材同様に全ての購買をマスター登録することでほぼ100%のシステムカバー率を達成しています。
しかし、このような企業の事例は非常に稀です。
これまでの二回で人の問題、サプライヤマネジメントの問題、購買システムの問題を取り上げてきましたが、いかに10年前と同じ繰り返しをしていて進歩がないことがよく理解できたと考えます。
じゃあどうすればいいのか、この点は次回のメルマガで示せればと考えております。次回は私が考える間接材購買の今後の方向性について述べていきます。
先週に引き続き「間接材購買」についてです。
今回の三週にわたる「間接材購買」については私の現場体験を踏まえて本音を書いています。これは多くの企業で間接材購買に従事している人たちが報われておらずそういう方々やマネジメントに対して気づきや動機づけの一途になればと考えているからです。
ご批判やご意見もあるでしょうがそういうことも含め将来に繫げていくために書いていることをご理解いただければと存知ます。またもしご批判やご意見がありましたら是非ともいただければ幸いです。
その一つの大きな理由として人の問題を上げました。人の問題とは異動によって何年かに一回人が入れ替わりスキルの継承や仕組みの構築ができている企業は少ないということ、それから間接材プロフェッショナルを単なる便利なコスト削減要員としてしか活用できていない、ことを上げました。
また前回外部企業の活用によるコスト削減の実行、という点もスキルが継承されない理由の一つだと申し上げましたが、一方でサプライヤ側はこのような活動をどのように捉えているのでしょう。
私はVOS(ボイスオブサプライヤ)を推奨しサプライヤの声を聞きなさい、と常に申し上げております。何故なら今後益々間接材であってもサプライヤやパートナーの力を活用しなければならないからです。しかしサプライヤのパフォーマンス評価も含む包括的なサプライヤマネジメントを間接材領域で実行している企業は数えるほどしかありません。
外部企業にコスト削減実行を委託している企業は本来であれば最も大切なサプライヤとのコンタクトポイントを他社に委託している訳ですから、サプライヤマネジメントなどできている筈はないのです。
またどちらかというと社内でも力が強くない間接材購買チームですから、社内的な抵抗があまり多くない「やり易い」品目が繰り返しコスト削減のターゲットになるので、その対象品目のサプライヤにとっては至って面倒な状況であることは容易に想像できます。
実際にそのような対象品目になりやすい競争環境の激しいマーケットのサプライヤからは悲鳴に近いような声を良く聞きます。彼らの言いたいことはこういうことです。
「競争が激しいのは止むを得ないが、業者ではなくパートナー、少なくともサプライヤとしてみて欲しい」
「価格だけでなくその他のことも評価して欲しい」
当たり前と言えば当たり前。
あるサプライヤから本音ベースでこのような話を聞いたことがあります。
「あの会社は我々をパートナーなんて考えていない、自分の会社だけよければそれでよい、彼らにとって我々は業者の一つにしかすぎないから。そういう会社とは本音では付合いたくない。」ショッキングなことですが、事実です。
調達・購買の仕事とは外部資源の有効活用です。自社にないものを外部の最適なリソースで埋めていくことが基本的な役割。こういう状態でそれができていると言えるでしょうか。
サプライヤにとって、もっと困るのは、コスト削減活動の波に襲われ大がかりなコンペを実施し、競争の結果利益をはき出しました。それで落ち着くかなと思ったらいきなり担当が変わります。変わった担当とのリレーションをまた1から作っていく必要があるだけでなく、その新しい担当は過去のコンペのことなど知らずにまた同じようなコンペがスタートする。
このような状況でついていけるサプライヤはいるでしょうか。サプライヤにとっては迷惑な話でしかありません。
次に間接材購買システムについて述べていきます。
間接材の特徴の1つに関連する人(会社)の多さを上げました。関連する人や会社が多いことはそれだけ情報伝達や情報共有の必要性がある訳ですから、インターネット技術の活用等システム化によるメリットは大きいです。しかし一方で間接材購買システムを上手く活用できている企業はほんの一握りです。
もし、御社が何らかの間接材購買システムを導入し使っているとしたらこういう質問に答えてください。
「それは全支出のどの程度をカバーしていますか?」
「そのカバー率は過去に比べて上がっていますか?」
この2つの質問に対して即答できる企業も多くないでしょうし、即答できたとしても当初想定していたカバー率には到底いたっていないというのが実態でしょう。
当初、間接材購買システムは間接材購買の集中購買化を進めていくのに必須だと考えられていました。購買システムを導入することで、集中購買が進みコスト削減の実行につながるので、システム導入でコスト削減が間接的に実現できるという誤った理解がそこにはあったのです。
そのため、2000年頃から大手企業を中心に間接材購買システム導入に数億円も投資するといった状況が生まれました。しかし導入企業側もシステム導入をしても自動的に支出カバー率が100%になる訳ではないことにようやっと気が付き始めました。
そうなると数億円もの投資をすること自体がナンセンスになります。リーマンショックの影響やクラウド環境の整備もあり、当初のインストールベースの購買システムは売れなくなりました。
売れなくなるとシステム開発会社は(だいたいのケースで)買収という形でお亡くなりになります。2000年当初に片手では足りないほどの数もあった間接材購買システムの開発会社ですが、今はインストールベースでの商売をやっているシステム開発会社は数社しか思い当たりません。
一方で、SaaS形式の安価なサービスが主力になってきます。
システムというものはとてもやっかいなものです。一度お客さんがつくとお客さんが使い続ける限り新たな投資を行い、バージョンアップをしなければなりません。しかし、会社がなくなる場合にはその限りではありません。
システム開発会社が統廃合されると一度大金をかけて導入した購買システムを
リプレイスしなければならなくなります。「そもそもあまり使われていないのだから、リプレイスもしないで捨ててしまう」という考え方もありますが、例え部分的にでも間接材購買システムを導入し運用を始めた企業が、またメールとワークフローでの半マニュアル的な運用に戻しましょうというケースを私は殆ど知りません。
このように使いこなせないシステムとそのシステムのサポートも終わり、止むを得ず、また再投資を行う、しかし未だにカバー率は伸びておらず、使いこなせていない状況は変わらないのです。
ここにも間接材購買の進歩がない典型的な状況が見られます。
先進的な企業の中には会計システムと購買システムを連携させてどのサプライヤーに毎年いくら支出しているかを全バイヤーが自分のパソコンから見られるようにしています。
またある企業では購買システムをカスタマイズし、直接材同様に全ての購買をマスター登録することでほぼ100%のシステムカバー率を達成しています。
しかし、このような企業の事例は非常に稀です。
これまでの二回で人の問題、サプライヤマネジメントの問題、購買システムの問題を取り上げてきましたが、いかに10年前と同じ繰り返しをしていて進歩がないことがよく理解できたと考えます。
じゃあどうすればいいのか、この点は次回のメルマガで示せればと考えております。次回は私が考える間接材購買の今後の方向性について述べていきます。