女優・江角マキコさんがブログで「ママ友いじめがあった」という主旨を書いたことが発端になり、江角さんの子供が通う都内・名門私立小学校が注目されている。

江角さんのブログの発言への反論が週刊誌に掲載され、また、江角さんと対立するママ友リーダーもセレブリティの妻と、華やか、かつ激しいママ友の世界が連日報道されている。

今回の騒動の舞台になっている小学校だけではなく、名門私立小学校の実情というのは一般に理解しづらい。もし、自分の子供を小学校受験させることになったとして、大丈夫なのだろうか、と感じる人も多いだろう。そこで『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)の著者で、ママ友の世界を取材しているノンフィクションライターの杉浦由美子さんにお話を伺った。

自主性を重んじる名門校は“放任主義”でもある

――江角マキコさんは、名門私立小学校でモンスターペアレンツ化しているという報道もありますね。また、「江角さんの子供がいじめにあっていた」「理事長に直接手紙を渡していた」といった記事も目にしました。それらが事実か否かは別として、希望して子供を入学させた名門小学校で、モンスターペアレンツ化するママは多いのでしょうか。

杉浦由美子さん(以下、杉浦):今回の騒動で、舞台になっているとされる名門私立小学校は、プロテスタントのミッションスクールです。プロテスタントは個人の自主性を重んじるので、自由な校風かつ放任主義のところが多いのです。いじめがあった時に、いちいち教師が対応していたら、児童や生徒の自主自立を育てる妨げになりかねないですからね。

これは中学の話になりますが、他のプロテスタント系有名私立校で、女子生徒がいじめ被害を担任の教師に訴えたら「あなたの美貌が周りの女子をイラッとさせるのよ」と、冷たく追い返されたという話もあります。

放任主義の名門校に比べたら、公立の学校の方が実は手厚い部分は多いんですよ。そのあたりを理解せずに、ブランド力に惹かれて、子供を名門校に入れ、「高い学費を払っているのに、放任主義でなにもしてくれない」と不満を持つ保護者もでてきます。そういうミスマッチは、保護者、子供、学校にとって悲劇ですよね。

なので、私立小学校では、身内に卒業生がいる子を優先的に入学させるケースがあるわけです。近親者に卒業生がいたら、学校の教育方針を理解しているわけですから、ミスマッチが起こりません。

ママどうしは感覚の格差から対立することが多い

――ママ友関係でのミスマッチなども気になります。子供は楽しく学校に通っているけれど、ママが他のママとの付き合いで苦労するというケースが名門校では多いと聞きますが。

杉浦:冒頭の名門私立校は、ママたちはエルメスのケリーやバーキンを持って保護者会にくると聞きますが、一方で、カトリックの名門女子校・雙葉や白百合などのママたちは地味なんですよ。雙葉ママは伝統的に地味が美徳で派手なママは浮きますし、白百合では「シックで上品な服装のママが多いのでかえって大変。黒や紺の服は値段で差がでるから」とぼやくママもいます。

上流階級の女性は、一般的な感覚から見ると野暮ったいほどに地味なものです。雙葉や白百合は中学受験で外部生といわれる子たちが入ってきます。小学校から進学してくる内部生と中学から入ってくる外部生は、子供同士なので自然となじんでいくのですが、ママたちは対立することが多いと言われますね。原因は、やはり、感覚の格差だと思います。地味で上品な内部生ママの中に、事情を知らない外部生ママが全身華やかにブランド品で固めてやってきたら、水と油という感じになるんじゃないでしょうか。

小学校受験前に多くの視点から情報収集を

――お話を聞くと、やっぱり名門小学校に子供を入れるのは大変だと感じてしまいます。でも、なにかしらの理由で小学校受験させたいということもあろうと思います。そういう場合、どう学校を選べばいいのでしょうか。

杉浦:学校をブランド力で選ばずに、家庭の教育方針や子供の気質で選ぶことですね。そのためには情報を入手することが大切です。小学校受験対策の塾に通えば、受験ママ同士と知り合えますよね。そこでの人脈などをたどって、希望する小学校に現役生のママたち複数から話を聞くのが大切だと思いますよ。冒頭に登場する話題の名門小学校も、手厚さを求めるママからしたら絶望的かもしれませんが、自由を求めるママからしたら素晴らしい学校なわけですし。多くの視点から学校の情報を集めて検討することをお勧めしたいですね。

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(木原友見)