履正社・永谷暢章 試練の9回を乗り越え、勝利を呼び込む 

9回追い上げの二塁打を打つ東大阪大柏原・古川

 選抜準優勝の履正社は2011年選手権出場の東大阪大柏原と対戦した。履正社は東大阪大柏原の粘りある打撃にかなり苦しめられたが、なんとかベスト4を決めた試合だった。

 試合前半は完全に履正社ペースで進む。1回表、二死一塁から4番吉田 有輝が右中間を破る二塁打を放ち、一塁走者が生還し、1点を先制。さらに5番後藤が右前適時打を放ち、2対0。二死一、二塁となって、7番八田 夏の左前適時打で、3対0。4番の富井の犠飛で1点を返され、3回表、履正社は6番絹田の適時打などで2点を追加し、さらに7回表にも2点を追加し、ここまで7対1。あと1点を入れれば、7回コールド勝ちという試合展開に、さすが選抜準優勝の履正社と思わせる戦いぶりだった。

 だが8回裏、東大阪大柏原は履正社の先発・溝田 悠人に襲い掛かり、7番島野の2ランホームランで追い上げ、8番松田の三塁打、9番土井の内野安打で、7対4で追い上げ、試合はいよいよ分からない展開に。ここで履正社は先発の溝田を諦め、最速147キロ右腕の永谷 暢章を投入。永谷は139キロのストレートで、見逃し三振に打ち取り、ピンチを切り抜ける。

 

力投を見せた永谷(履正社)

 9回表、履正社は内野ゴロの間に1点を加え、8対4。勝利へ向けて大きな1点が入ったと思ったが、このままで終わらないのが東大阪大柏原の怖さである。

 9回裏、マウンドの永谷は全力投球。身体を反って、上半身主導のフォームから一気に振り下ろす速球は常時140キロ〜145キロを計測し、さすがと思わせるストレートを見せていた。

しかし東大阪大柏原打線は永谷のストレートにしっかりと対応をしていた。2番吉田壮が直球を捉え、中前安打にすると、3番古川が右中間を破る二塁打を放ち、無死二、三塁のチャンスをつかむ。永谷も負けじと直球で押していき、4番富井は最速144キロのストレートで見逃し三振に打ち取ると、5番中山の犠飛で1点を失い8対5となるも二死までこぎづけた。 ここで打席には6番住谷。

住谷は追い込れたものの、永谷のスライダーが高めに浮いたのを見逃さず、左中間を破る二塁打。東大阪大柏原打線がじわりじわりとその差を詰めていく。

 この当たりに動揺してしまったのか、永谷は先ほど本塁打を放った7番島野には四球を出し、二死一、二塁に。こうなると流れは東大阪大柏原に。続く8番松田が高めに入る直球を見逃さず、タイムリー。東大阪大柏原が最大6点差あったゲームをついに振り出しに戻し、試合は延長戦へ突入した。

 永谷は直球の勢いは十分だった。しかし、この回は直球中心の配球で、相手からすれば、狙い球が絞りやすかたた。また全力で投げていく中で、たまに威力が弱いストレートが高めに浮くことがあり、それを東大阪大柏原打線が見逃さなかった。

 延長10回はともに無得点で、迎えた延長11回表、一死一、三塁のチャンスを作り、9番永谷の場面で、スクイズを選択。しかし投手正面のゴロとなり、失敗。二死一、二塁となって、1番井上が低めに入る変化球を救い上げて勝ち越しとなる3ランホームランを放った。

 その裏、永谷は9回の投球を反省して、130キロ後半の速球、スライダー、カーブをコーナーへしっかりと投げ分ける投球で、東大阪大柏原打線を抑えてベスト4進出を決めた。

 履正社にとってはかなり苦しい試合展開だった。特に永谷は9回を守る難しさをより実感した試合ではないだろうか。ただ良かったのは同点にされてからも気落ちをせずに、サヨナラを阻止し、延長10回から頭を切り替えて、サヨナラを許さなかった。来年のドラフト候補として期待される永谷にとって今回のような苦い経験は永谷をより大きくするはずだ。

(文=河嶋 宗一)