エース温存!夏の勝負はすでに始まっている!! 

言葉をかわす岡本と立田

 大和広陵の立田 将太(3年)、智辯学園の尾田 恭平(3年)。両チームのエースは共に、このゲームのマウンドに上がらなかった。

 夏の奈良大会のシード権を獲得した後の準決勝。両チームとも、いかに夏にダメージを残さず戦うか。エースが投げないということは、そういう意味を示していた。

 ゲームは1回裏二死走者なしから、智辯学園の3番岡本 和真(3年)の先制本塁打で幕を開けた。2回以降も大和広陵先発・山田斎登(2年)の四死球の多さを突いて、攻め立てる智辯学園。しかし、完全に攻略しきれず、1点ずつしか取れなかった。

 結果的に相手投手が代わった7回に3点を挙げて、コールドゲームに持ち込んだものの、智辯学園ナインの姿に笑顔は少なかった。

 「立田が投げてこなくて残念な気持ちはチームみんなが思っていること。その立田が投げてきていないのに対して、これだけしか点を取ることができなかった。変な所でアウトになったり、チームとして隙が出てしまった」とチーム全体の気持ちを代弁した岡本。

 チームの隙を象徴する場面が2回の攻撃だった。3つの死球などで1点を取り、なお二死満塁という状況で2番廣岡 大志(2年)がファーストへのファウルフライを打ち上げてしまった。直後の守りで、小坂将商監督は廣岡を下げて、サードに清水 聖也(2年)を起用した。

 チームとしての攻撃を考えた時、廣岡が繋げば、ビッグイニングにできるチャンスで最も得点が期待できる3番岡本に回すことができる。逆にアウトになってしまうと、次のイニングは先頭打者が岡本。相手投手や守備陣にとっては、一発だけを警戒すれば良いわけで、こんなに守りやすい状況は他にない。

 もう一つ、繋ぐ意識を見せたバッティングをするだけで、例えアウトになっても、相手に与える脅威は大きくなると言えるだろう。

 一方、敗れた大和広陵。エースで主将の立田は、ファーストを守りながら夏に対戦するイメージを膨らませていた。「打たれていた球は甘いコース。そういう甘さが出たら、打たれるなと思いました」。

 この日のゲームで投げたかったかを問われた立田はこうも答えた。「投げたい気持ちはありましたが、一番の勝負は夏。相手もVTRとかで研究はしてくると思うが、体感をさせたくない。それが一番相手にとって良い材料になる。やはりそれだけは避けたかった」。

 シードを獲得したことで、夏に当たるのは準決勝以降。勝負はすでに始まっている。

(文=松倉 雄太)