二死一、三塁!その先の対策!! 

3安打完封の宮田康喜(姫路南)

 0対0の5回表。姫路南は二死二塁から9番福本晃次(3年)が左中間を破る二塁打を放ち、1点を先制した。

 これを守りきったのが先発の宮田 康喜(3年)。威力のある直球と、スプリットなどの変化球を織り交ぜて、加古川北打線から、内野ゴロの山を築いていった。

 背番号1の左納 悠貴(3年)と宮田の二枚看板が武器の姫路南。加古川北相手の先発にどちらを立てるか。吉本純也監督は考えた。「足を意識する相手だったので、宮田の方が合っているかなと思って、先発を決めました。牽制もうまいですし」。

 宮田は1回、2回とパーフェクトに抑える。3回に四球で初めて走者を背負った際、加古川北はバスターエンドランを仕掛けてきた。やはり予想した通り、機動力は注意しないといけない。

 8回まで2安打に抑え、相手の足をできるだけ封じていた宮田に、勝負の場面が訪れたのが9回だ。

 一死から加古川北の1番住江元(3年)に二塁打を浴びた。続く2番敷名大史(3年)には四球を与え、同点どころか逆転サヨナラの走者を出してしまった宮田。3番吉見哲也(3年)のライトフライで、二塁走者の住江が三塁に進み、二死ながら一、三塁と守り手にとっては修羅場の場面となった。

 ただ、マウンドにいる宮田の表情は柔らかい。試合中にずっと見せていた笑顔を、この場面でも見せていたのだ。そして、キャッチャーの福永と共有していた読みがあった。「相手は二、三塁にしてくる。あえて走らせようと思いました。二、三塁にしてからが勝負」。

 宮田の読み通り、途中から4番に入っていた波戸将平(3年)の1球目に、一塁走者の敷名がスタート。キャッチャーの福永はあえて投げずに、盗塁を決めさせた。二、三塁の想定ができていた守備陣。一打逆転サヨナラ負けの状況にも慌てることなく、バッター勝負。宮田は、波戸をセカンドゴロに打ち取り、見事完封を果たした。「楽しく投げられました」と試合後も常に笑顔で答えてくれた宮田。吉本監督も、「ナイスピッチング」と讃えた。

 9回の姫路南サイドの心境を想像するに、あえて走らせるというのは、『策に引っ掛かってくれた』とポジティブに捉えることができたようだ。見た目は大ピンチでも、守り手の考え方一つで大ピンチではない。そう考えれば、時として、走らずに一、三塁で攻められた方が、守り手にとっては想定外で嫌だったのかもしれない。

 勝負の奥深さが垣間見えた、9回の攻防だった。

(文=松倉 雄太)