日本は世界2位のLTE普及率を活かせば観光立国も夢じゃない? 2020年東京五輪までにできる対策

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LCC(格安航空会社)の台頭で海外旅行はすっかり気軽に行ける時代になった。そして今や海外旅行にスマートフォンを持っていくのも当たり前となった。

海外で国際ローミングやレンタルしたWi-Fiルーターなどを利用して、日本に戻ると、「なんて日本の通信環境はすぐれているんだろう」と改めて感じる人も多いのではないだろうか?

●世界第2位のLTE大国 ニッポン
実は、日本の通信環境は今や世界でもトップクラスなのだ。2013年のThe Global mobile Suppliers Associationの発表によると日本はLTEの普及率が21%と、堂々の世界2位となっている。また、2Gサービスは既に数年前に終了し、地下鉄の車内でも3GやLTE回線が自由に使えるという世界の国からみれば夢のような通信インフラを実現しているのだ。

●訪日客はLTEの恩恵をうけられない?
ところが、この優秀なインフラを訪日した観光客は自由に利用することができない。訪日客向けの目立ったサービスが無いのが今の日本の観光ビジネスの実情だ。

●空港でLTEプリペイドSIM購入は世界の常識になりつつある
観光を国内産業の主力の1つにしている香港やシンガポールでは、空港などでLTE対応のプリペイドSIMカードを簡単に購入することができる。SIMフリーのスマートフォンやiPhoneを持ち込めば、現地の安価な料金でLTEの高速回線を利用できる。

このように空港で現地のプリペイドSIMカードが購入できるのは、アジアやヨーロッパの旅行者の間では今では常識となっている。台湾やバンコクの空港では到着ラッシュと重なると通信キャリアの店舗前はプリペイドSIMカードを求める客で長蛇の列ができるほどだ。またロンドンの空港ではプリペイドSIMカードの自動販売機まで設置されている。


バンコクの空港では、旅行者は空港到着後すぐにプリペイドSIMカードを購入できる


●日本の観光ビジネス発展を遅らせている現在の旅行者向けサービス
ロンドンの空港にプリペイドSIMカードの自動販売機があるからといって、日本でもプリペイドSIMカードの販売気を設置できるかといえば、少々疑問だ。プリペイドSIMカードは犯罪に利用される危険があるからだ。そのためロンドンの例のように自動販売機で販売するのは日本では難しいだろう。

しかし、日本にはせっかくの高速な通信インフラがあるというのに、訪日した外国の方が利用できないのは、日本に観光ビジネスの発展に大きなデメリットとなり、日本のイメージを著しく悪化させるだけに、実にもったいないことだ。


ロンドンは自動販売気でもプリペイドSIMを販売、日本ではさすがに難しそうだ


●先進国で韓国と日本だけが遅れている?
ちなみに世界中でプリペイドSIMカードの購入が自由にできない国は、先進国では日本と韓国くらいだ。その韓国でも、ソウルの空港では通信キャリア3社が旅行者にわかりやすい場所に出店し、スマートフォンやルーターを簡単にレンタルできるように配慮されている。

一方、日本の空港は大手のレンタル携帯電話会社がルーターなどを訪日客向けに貸し出しているが、訪日客にとっては、どの会社が使いやすいのかなど分かりにくいというのが実情だ。

●世界に誇れるLTE通信を旅行者に提供できれば日本も観光立国へ
日本は昨年、訪日外国人旅行者数が年間で1000万人を超えたが、2020年の東京オリンピックを控え、年々大幅に来訪客が増えると予想されている。その来訪客に日本の文化を知ってもらうだけではなく、進んだ通信環境を利用してもらうことは日本の観光ビジネス、観光立国への大きなチャンスとなるだろう。

例えば、旅行者専用のプリペイドSIMカードを用意し、機能はブラウザとFacebook、Twitterのみとしたり、有効期限を1週間などに限定したりすれば、犯罪への転用も抑制できる。

日本が世界に誇れる国内のLTE通信環境の素晴らしさをアピールし、観光立国となるためにも、訪日客向けの「旅行者専用プリペイドSIMカード」などを空港で簡単に買えるようにしてもらいたいものだ。


山根康宏