StackMob なき後、モバイルクラウドはどのように統合されていくのか

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モバイル時代、クラウドサービスは急成長しているが、市場が成熟することによって統合されるだろう

Stackmob CEOのタイ・エーメル

StackMob は失われた。PayPal は StackMob を買収した後、すぐさま StackMob のサービスを停止して、同社のチームとツールを自分たちのインフラに統合した。だがこれを MBaaS (モバイルバックエンド・アズ・ア・サービス)業界に携わっている人に話したところで、あまり驚かれはしないだろう。

StackMob は2010年に、クラウドベースのバックエンドシステムにソフトウェアを結びつけるため、アプリ開発者向けに完全な開発者用スタックを提供する事業を開始した。2011年1月に iOS の開発用スタックの提供を開始し、その年のうちにアンドロイドにも対応した。しかし、2014年2月には姿を消し、PayPal の開発ツールとチームに組み込まれることとなった。

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StackMob の消失は BaaS 業界における試金石だと言えるだろう。Parse、Kinvey と並んで、StackMob はモバイルミドルウェアの時代を代表する人気の新興企業だと思われていたからだ。こうしたミドルウェアはモバイル開発者にとって、バックエンドの専門知識なしでクラウドの機能をアプリに追加するための助けとなっていた。

StackMob、Parse、Kinvey はどれも開発者に的を絞って立ち上げられた。しかし時が経つと、各企業は開発者に向けて販売することは基本的に無理であること気づいた。個人の開発者には資金がないのだ。そして、企業の開発者には予算を管理する権限がない。従って、開発者を中心としたアプローチを拡大できる可能性はなかった。

そこで、3社は資金のある顧客に目を向けることにした。各ブランドや企業である。

Parse は、モバイルソリューションを必要としているブランドに開発ツールを提供することによって成功を収めた。Kinvey と StackMob は企業に向けたアプローチを選んだ。ここで、StackMob は製品の収益化に最も苦労することになり、企業に売り込む経路を見つけ出すことができなかった。結局 StackMob はビジネス化に失敗したのだ。

疑問の残る決定と、初期における上層部の対立もあいまって(社長であり、StackMob 立ち上げ時の従業員でもあったプーヤン・サレヒは、立ち上げから間もない2011年に会社を去った)、StackMob は熟しすぎた実のように、木から落ちてしまったのだ。PayPal が買収の申し出を手土産にやってきたとき、CEO のタイ・アメルは面目をつぶさずに幕を引き、いくばくかの収入を得て StackMob のチームに新しい仕事を与えられるという最高の機会を得たのだった。これがサンフランシスコのベンチャー・キャピタル新興企業が消えた経緯である。

Parse も買収されたが、その方法は全く異なっている。Parse の功績(開発者コミュニティとブランドを結ぶこと)は、開発者をプラットフォームに呼び寄せたがっていた Facebook に対し、多大な貢献を果たした。Parse のサービスはまだ残っており、Facebook のサポートを受けているため、すぐには消えそうにない。

Appcelerator の CEO、ジェフ・ヘイニーは次のように述べている。「マーク・ザッカーバーグは開発者を安い価格で Facebook に確保し続けることを望んでいたし、Parse は企業にはたいして興味がなかったから相性は最高だった。私も開発者から収益を得るのはとても難しい(というか無理だ)と思っていた。開発者自身も収入を得るのに必死で、独立していようが企業で働いていようが、基本的に予算がない。開発者に価値を与えるだけでなく、収益化しなければならないというところが難しい。多くの企業はその方法がわからず、Parse や StackMob もそうした企業のひとつだったと私は思っている」

Parse の共同設立者、イリヤ・スハール

Kinvey はまだ独立した会社(今年中には買収の話が出ると多くの人が思っているが)だ。同社は実際に財布のひもを握っている企業の出資者とやり取りをすることで、企業に売り込む方法を見つけ出した。Kinvey は今週、新製品の Dedicated BaaS を発表した。これは様々な標準化されたインフラで企業用のアプリを構築する、モバイルバックエンドサービスを提供している。Kinvey にはゲーム・ショー・ネットワーク、ジョンソン・エンド・ジョンソン、マッコーリー銀行、Aetna、ビブラム、Womack Machine Supply Company などのクライアントがいる。

Kinvey のスラビッシュ・シュリーダルは次の用に述べている。「BaaS ベンダーの最初の3社は、モバイル開発者にとって非常に便利な機能を持つ魅力的なプラットフォームを構築した。3社は、シードと シリーズ A の融資を通して700万から800万ドルの資金を調達している。しかし最終的に、個人の開発者のためにバックエンドの問題を解決するだけで長期間のビジネスを作り上げるのは非常に困難である。特にシリーズ A までの資金しか調達していなければなおさらだ。ビジネスを構築する市場は企業にある。企業と取引ができずに進み続け、資金調達にもがいて結局買収された StackMob のケースでは、サービスも停止することになってしまった」

市場力学はどのように BaaS を統合するか

モバイル産業の成熟は多くの指標によって表されている。

モバイル・エコシステムを風船のような物だと考えれば、企業とサービスが成長し、人気が出ると次第に統合され、縮小し始めるというサイクルがあることを理解できるだろう。この過程で、多くの模倣者が頭を抱えて独自の隙間産業を作り出すか、または品質の悪さゆえにつぶれていく。モバイル界を率いるリーダーやその候補者が決まってくるにつれ、市場力学が収まりのいい方に動き出していくのだ。

モバイル業界ではこうしたことがよく起きている。モバイル業界は幅広い技術とビジネスの寄せ集めであり、そこにはあらゆるものが含まれる。デバイス製造業者、クラウドのプロバイダーとサービス、アプリストアとその開発者向けのミドルウェアや分析などのリソース、アンドロイドや iOS のようなプラットフォーム、携帯電話会社、接続性、セキュリティ…とまだまだ続く。こうしたあらゆるビジネスは、モバイル・エコシステムを作り上げるバケツのようなもので、変化の激しい業界において市場の原動力となる傾向がある。

BaaS の分野で目にしてきたものは、市場が定義づけられ、けん引力を獲得し始め、やがて統合されていく姿だ。「初めの3社」以外にも、FeedHenry、Kidozen、AnyPresence、Applicasa、Tiggzi、Sencha.io などの MBaaS の新興企業が進出し、競争に参加している。Appcelerator はサンフランシスコを拠点とする Cocoafish を買収してモバイルクラウドサービスの競争に参加したが、ここ数年は個人開発者とは対照的な、企業向け開発に焦点を当てている。

同時に、最大のプレイヤーもバックエンドの競争に参加したがっている。Google は開発者向けのアプリエンジン・クラウドプラットフォーム(および Google ドライブ)を持っており、フルサービスのバックエンドに取り組んでいる。Microsoft には Azure とOneDrive(旧 SkyDrive)がある。そして、Apple には iCloud がある。

市場のトップからは、作成したアプリを動かすため、クラウド構造向けの簡単なツールを開発者に提供するよう圧力がかかっている。BaaS の企業は、テクノロジーの巨大産業とこれらのバックエンドを統合することで協力しているようだが、その一方で本質的には彼らと競争している。モバイルクラウドサービスに取り組む新興企業が20社以上いること、StackMob のように脱落あるいは買収される企業が出ていることを踏まえると、市場は統合されるのに十分なほど成熟していると言える。

「これまでに言及した他の企業も途中で脱落するか、関連のある者同士互いに争うことになるだろう。ベンチャー・キャピタルから資金を得ている企業の道筋ははっきりしている。大きく成長するか、消える(あるいはつぶれる)かだ」とヘイニーは言う。

Oracle、IBM、RedHat、VMWare、SAP など、従来のクラウドやインフラのプロバイダーも存在する。これらもモバイルに少し手を出して企業にサービスを提供しているが、Parse や Kinvey のように100%モバイルに専念することはしないだろう。おそらくIBM がもっとも近いところにいるが、そのモバイルビジネスモデルは、モバイルに特化しているというよりは、企業全体にまたがるクライアント・コンサルタント・セールスに近い。

モバイルと BaaS 分野の成熟につれて、統合はさらに進むことになるだろう。私はこの事態を2011年後半と2012年初めに予測したが、市場力学の時系列はこの6か月以内に起きた動きと一致している。企業やブランドから収益を得る術を知っている Appcelerator や Kinvey のような企業は競争を長く続けることができるが、FeedHenry や AnyPresence などの二番手は、才能とツールを必要としているモバイルに飢えた企業に貪られてしまう可能性が高い。

Dan Rowinski
[原文]