3Dプリント10選:今、3Dプリンターで何が作れるのか?
なんでも生成できる機械と人の好奇心が出会った時、可能性は無限に広がる
1983年にチャック・ヒルが3Dプリンターを発明してから、30年の月日が経っている。その間我々はまるでフィクションのようなこの技術を生かし、科学からアートに至るまであらゆる可能性を開花させている。
まだ一般に普及するまでには至っていないものの、この30年間で3Dプリント技術は大幅な進歩を遂げ、数々の実用的な製品を作り出すことができるようになった。もはや小物類やおもちゃだけではないのだ。
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これまでの製造技術と比べてしまうと、3Dプリントは時間とコストの面であまり実用的ではないように思われがちだ。しかし残されたわずかな課題ばかり取り上げてしまうと、3Dプリントのこれまでの功績と今後の可能性を見失ってしまう。
そこで、これまでに3Dプリンターで製造された素晴らしいモノ10選を紹介しよう。
人体の各部位
米国の科学者たちは既に、耳、腎臓、血管や骨など、人体のあらゆる部位の3Dプリントに成功している。通常3Dプリンターではプラスチック樹脂が使われるが、これらの部位はジェル状の細胞を使う「バイオプリンタ」により作り出されている(骨は例外的にセラミック製の粉末から生成される)。
この分野の技術革新が進めば、いずれ患者の体にピッタリ合った骨片や皮膚片、あるいは腎臓をバイオプリントできるようになるだろう(現在でも3Dプリントされた肝臓は実在するものの、正常に機能するものはない)。
いずれ3Dバイオプリント技術で人の手足までも生成できるようになるかもしれないが、100ドル以下のプラスチック製の義肢なら既に、3Dプリンターを使って数時間程で製造可能だ。
ピザ
NASA から資金提供を受けている3Dプリント・プロジェクトでは、実際に食べられるものを生成している。この組織は宇宙に滞在する宇宙飛行士たちのために、3Dプリントの食料品を研究しているのだ。
通常3Dプリンターは一種類の素材のみを使う。しかしこのピザ・プリンタは複数のカートリッジを備えており、ピザ生地、チーズ、ソース等を同時にセットすることが可能だ。
YouTube の動画でその行程を実際に見ることができる。
チョコレート
3Dプリンターのカートリッジに液状のチョコレートを入れると、未来的なデザートの可能性が無限に広がる。コンピューターが処理できるものならどんな文字でも絵でもプリントして食べることができてしまうのだ。
「Chocedge」は数千ドルで買えるチョコレート専用3Dのプリンターだ。お菓子の3Dプリントは意外にも競争が熾烈で、今年の1月には大手菓子メーカーの Hershey Company が 3D Systems と提携し、あらゆる3Dプリントの菓子を手掛けると発表している。この提携によってより未来的な Hershey’s Kiss チョコレートが生まれる可能性もあるが、それよりも3Dプリンターを工場の作業員に置き換えることによる製造プロセスの効率化が実際の狙いであろう。
洋服
3Dプリントされた洋服はまだ店頭には並んでいないかもしれないが、ファッションショーでは既に登場している。昨年のとあるイベントでは、モデルのディタ・ヴォン・ティースが世界で初めて、完全に接合された3Dガウンを披露した。このガウンは3,000以上の継ぎ目で繋がっており、ディタの体にぴったりフィットするように作られている。
3Dプリントされた洋服はどんな体型にも対応できるので、今のオーダーメイドを遥かに凌ぐ可能性をもたらすことだろう。ただし、ディタほどスタイルに自信のある人でなければちょっと躊躇してしまうかもしれないが。
楽器
3Dプリントされた部品から完全な楽器、あるいは楽器の一部を作り上げることができる。既に購入可能な Odd ブランドの3Dプリント・ギターは、ユニークなルックスと良質な音源を売りにしている。MITメディアラボの研究者アミット・ゾランは実際に使えるフルートのプリントに成功しており、ドイツの EOS はポリマー製のバイオリンを生成した。
問題があるとすれば音質だ。3Dプリントされた楽器は今のところあまり音質が良くない。特に通常の楽器と比べてしまうと明らかだ。ソロで活躍するバイオリニストのジョアナ・ロンコは、一般的なバイオリンと3Dプリントされたものを TED アムステルダムのカンファレンスで演奏しているが、観客は明らかに普通のバイオリンの音色を好んでいた。
自動車
Urbee2 は車というよりはジェリービーンズのような外観をしている。実は Urbee2 は、世界で初めて3Dプリントされた部品のみで製造された自動車なのだ。
この三輪自動車は、現在販売されている自動車より燃費が良く値段も安いが、エンジンとモーターの出力が合わせて23馬力しかないため、高速走行に難があるだろう。
Urbee2 の発明者達は、2年以内にこの車でアメリカを横断したいと考えているようだ。しかし課題は山積している。今のところ Urbee2 は、米運輸委員会の安全基準を全く満たしていないのだ。
拳銃
3Dプリンターで生成できるものの中で、最も物議を醸すのはおそらく拳銃だろう。一番最初にプリントされた拳銃は26歳の男性コディ・ウィルソンによって作成されたもので、彼はそれを Liberator と名付けた。
今では3Dプリンタを持っていて、インターネット接続ができる人なら誰でも拳銃をプリントすることができてしまう。もちろんプラスチック製の拳銃だが、FBI によればこの Liberator は、人の臓器を打ち抜くのに十分な性能を持ち合わせているという。
FBI が Liberator を自分たちでプリントしてテストした際には暴発したというが、ウイルソンは Liberator を実際に撃つ映像をインターネットに投稿している。米国では今のところ3Dプリント拳銃を規制する法律はないが、各地方議会は禁止する方向で動いているようだ。
ドローン
3Dプリンターという破壊的技術が、さらに破壊的な技術を生み出す。その例が3Dプリントされたドローン航空機だ。
サウスハンプトン大学の研究者達は、3Dプリンターで大量生産が可能なドローン航空機 SULSA(Southampton University Laser Sintered Aircraft)を開発した。最高時速90マイル(140キロ)で飛行できるこの航空機は、約30分間飛行を続けることができる。
ドローン航空機の機体はネジなどの留め具を一切必要とせず、プラスチックの部品を使っておよそ10分で完成する。その飛行は圧倒的に静かで、人に気付かれることはまずないという。
アダルトグッズ
当然かもしれないが、3Dプリンターと聞いて人々が真っ先に思いつくものの一つがアダルトグッズである。アダルト業界は既に、3Dプリント技術でディルドやバイブレーター等のアダルトグッズを生成し、販売している。中にはかなりカスタマイズされた製品(閲覧注意)もあり、チェルシーのとある店では、個人のスキャンデータをプリントしてオーダーメイドのアダルトグッズを作ってくれる。
そもそもインターネットが普及したのはアダルト業界のおかげだ。そのアダルト業界が興味を持ちだしているという事実は、3Dプリンターの今後の可能性を示唆しているともいえるだろう。
3Dプリンター
そう、3Dプリンターで3Dプリンターを生成できるのだ。
RepRap と名付けられたこのプリンターは、自分自身を複製することができる。RepRap はオープンソースで、ソフトウェアも無料で使える。インターネットで最初の親機となる RepRap を購入すれば(500〜600ドルで買える)、次から次へと RepRap をプリントすることができてしまうのだ。
画像提供: Subhashish Panigrahi、Albert Sanchez、3dilla、Southampton University、RepRap
Lauren Orsini
[原文]