アップルに追いついたHTML5
最終的に開発者のハートを捕らえるのは、急発進したiOSではなく、スピードは遅いが安定したHTML5なのかもしれない。
アップルのiOSのマーケット・シェアがグーグルのAndroidに押されている状況の中、iOSとAndroidの両プラットフォームに対応する手段として、開発者のHTML5への興味も徐々に高まってきている。
Vision Mobileによる最新のデベロパー・エコノミックス・レポートによれば、開発者におけるAppleのマインドシェアは2013年1月の56%から52%へと減少している。その一方でHTML5は、1年前から2%ほど増加し52%という結果になった。
これによって我々が学ぶべきなのは、今や時代はマルチデバイスであり、開発者は自分の好みのプラットフォームだけに専念してはいられないということだ。
先進国では未だにiOSが君臨
アップルのiOSが完全に勢いを失ったわけではない。iOSには忠実な開発者達が多く、59%もの開発者がiOSを優先プラットフォームとして位置づけている。
HTML5はどうだろう?52%の開発者が対象には挙げているが、最優先のプラットフォームだと捉えている者は誰もいない。
最新のSencha調査によれば、モバイル開発者の60%以上がHTML5を利用しており、そのうちの75%が2014年にさらにその利用を拡大する予定だという。開発者達の動機はありきたりなものだろう。マルチプラットフォームの世界では、開発者達は平均5つの異なるプラットフォームをサポートしている。HTML5を利用するのも、優先度が高いというよりは単に需要があるからなのだ。
Vision Mobileのレポートでは、実際HTML5は好まれる最優先プラットフォームとしてはBlackberryにすら遅れをとっている。
新興市場では状況が異なる
以前にも書いたことがあるが、アップルは裕福なマーケットにおいては支配力が強い。しかし南アジア、南米、中東やアフリカではiOSは1位のAndroid、2位のHTML5に続く第3位となっている。
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10億人以上のユーザーがいるとされている中国を含めると、アジアの主要マーケットの規模は北アメリカとは比べ物にならないほど巨大だ。ここではAndroidが46%の開発者の支持を集め、iOSは28%となる。アフリカだとiOSはさらに減少して9%となり、Androidは47%だ。
アップルは、タブレット出荷においては依然として他社の追従を許さないマーケットシェアを誇っている。しかしタブレットはアプリケーション開発者にとってはあくまで二次的なデバイスだ。アプリ開発者の83%がタブレットを対象としてはいるが、この解像度の端末を最優先とする開発者は12%ほどしか存在しない。大多数の開発者(57%)はタブレットをスマートフォンに次ぐ二次的なデバイスと見なしているのだ。
開発者の収入に関しては、iOSがAndroidやHTML5を大きく上回っている。iOS開発者の1アプリあたりの月間平均収入は500ドルから1000ドルであり、Android開発者の収入(1アプリあたり月間平均100ドルから200ドル)に大きく差をつけている。またこの点においては、HTML5もAndroidを追い越している。
興味深いのは、HTML5開発者は実際に高収入層(1か月当たり5万ドル以上を得る開発者)と低収入層(1か月当たり1つのアプリで500ドルから1万ドルを得る開発者)において、iOS開発者より結果が良いことだ。
つまりHTML5は開発者にとって、ハイエンドとローエンドの両方を抑えるには最良の手段なのかもしれない。
HTML5と長期戦略
今後、より多くのモバイル・デバイスが新興市場に投入されていくとともに、AndroidとHTML5へのシフトは進むと思われる。ネイティブのiOSまたはAndroidのエクスペリエンスがユーザーと開発者の両方に好まれるという事実は変わらないだろうが、複数のデバイスタイプをサポートすることはますます難しくなっていく。
HTML5を最優先とする開発者はまだ26%しかいないが、今後も第二の選択肢としての需要は高まるだろう。もしこれからもiOSとAndroidが開発者の最優先プラットフォームとしての人気を二分していくことになれば、第二の選択肢としてのHTML5のシェアはますます拡大することになる。結果的に、確固たるポジションを獲得する可能性もあるだろう。
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トップ画像:codepo8(Flickrより)
その他画像:Vision Mobile
Matt Asay
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