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●「椅子に座る」のは身体に悪いって!?
日本マイクロソフトは12月11日、「アーロンチェア」などの製品で有名な米国の家具メーカー、ハーマンミラーの日本法人と共同で、「ハーマンミラー×マイクロソフト 〜ハイパフォーマーの仕事環境マネジメント〜」と題したユーザーセミナーを開催した。

このユーザーセミナーは、"的好奇心の冒険の場"をコンセプトに創設された「アカデミーヒルズ」の会員向けに行われたものだ。会場となった東京都の六本木ヒルズ「六本木ライブラリー」には、キャリアアップや教養を深める知的探究心豊かな方々が来場。みな、高い生産性を引き出す仕事環境のマネジメントに興味津々だ。

まずハーマンミラージャパンの福田怜美氏が、この十年来で大きく変化している働き方や働く環境の変化について講演を行った。昨今、デスクトップPCはもちろん、ノートPCやタブレット、スマートフォンを利用した仕事も増え、ある種「パソコン依存」ではないかと述べ、人によっては睡眠時間以上の時間を、ワークスペースでの作業に従事しているという。

1つの対比として、ベッドや枕といった寝具には寝心地を求めて投資するにも係わらず、ワークスペースの環境整備に対する投資は後手に回っている現状があるのだそう。それゆえか、約7割の人々が仕事中に、身体的疲労やその症状に悩まされているとのデータを示した。

ここで皆さんに、自分がデスクワークを行う時の姿勢を思い浮かべてみて欲しい。全体的に前傾姿勢で猫背になり、身体を小さくして作業しているのではないだろうか。福田氏によれば、その姿は"お猿さん時代に逆戻り"と表現。永き時間を経て進化を遂げ、二足歩行に最適化された現代人の骨格には、そもそも座るということは身体に悪いのだという。

海外ではMSD(筋骨格系障害)として疾患と認知されている、オフィスワークによる肩こりや腰痛などの大半は、姿勢の悪さに起因しているそうだ。最適なデスクワーク姿勢を実現すればこうした症状は改善できると、オフィスワーカーには嬉しい言葉も。

人間が直立していると、背骨のラインは自然なS字カーブを描くのだが、座った姿勢ではS字カーブになりにくい。背骨のラインに極力ストレスを与えないようにするには、適切な座面の高さや、うつむきがちにならないモニタ位置のセッティングといった工夫が必要だ。これはノートPCを常用する場面にも当てはまる。

だからといって、椅子やデスク周りの環境を一新させるのは難しい、という人も多いことだろう。福田氏は、「背もたれに寄りかかって背伸びをする」、「モニタ画面が低ければ電話帳などで高さを出す」というように、ちょっとした工夫で実現可能なものから取り入れていくと良いのではとアドバイスする。身体的な苦痛を伴うデスクワークでは、高い生産性を続けるのは困難と実感している人も多いはず。多少の環境改善によって、今まで損なわれていた本来のパフォーマンスを発揮できるようになるかもしれないのだ。

●「エルゴノミクスな仕事環境」を科学的見地から検証
次いで、日本マイクロソフトの北川美由紀氏は、マイクロソフトが提案するエルゴノミクスソリューションと題する講演を行った。「電車のつり革、今と昔では形状が異なることにお気づきでしたか?」と切り出し、来場者にとって身近なエルゴノミクスの例を紹介。

そして、人の手・指・手首の可動域に最適化したキーボードのフラッグシップモデルとして、マイクロソフトの「Sculpt Ergonomics Desktop」を取り上げた。人間が手を机の上に置いたとき、自然にハの字になるように、キーボードも一直線ではなくハの字形状になっている。さらに、フラットなキーボードではなく、中央部分が盛り上がったドーム状のカーブを描き、非常に先進的でエルゴノミクスに則したデザインなのが特徴だ。

また、マイクロソフトが独自に調査した「Healthy Computing」というインフォグラフィックをもとに、長時間のPC操作を行う92%の人々が、PCの使用に伴う疲労を感じているというデータを示す。にもかかわらず、エルゴノミクス製品は利用していない人が多いという調査結果を公開した。

辛さを感じながらも現状を打破できないという、オフィスワーカーには悲しい現状が見せつけられた…。

ここで、マイクロソフトのWindowsタブレット、Surfaceを取り出す北川氏。ハーマンミラーのフローモニターアームにラップトップマウント、エンベロップデスクにSculpt Ergonomics Desktopという、エルゴノミクスな組み合わせを例に挙げた。身体的負担を軽減したデスクワークに加え、外出時などの機動性も併せ持て、ハイパフォーマーに最適なソリューションのひとつになるのではと締めくくった。

最後に登壇した早稲田大学理工学研究所の三家礼子氏からは、エルゴノミックな環境が本当に疲労の軽減に寄与しているのか、科学的側面から行った、実験結果が報告された。被験者がもっとも心地よいであろう作業環境から、もっとも劣悪なのではというものまで、全部で4つのコンディションを用意し、筋電(筋肉がこわばっているかどうか)を測定。

数値的にもエルゴノミックな環境は有用と示されたが、何より目を見張ったのが、被験者の各コンディション環境下における姿勢の違いだ。エルゴノミックなコンディションではストレスが少ない姿勢なのに対して(先の講演でハーマンミラージャパンの福田氏が述べたように)、もっとも厳しいコンディションでは窮屈な猫背でいかにも首や腰にストレスが掛かっているように見受けられた。

また、「わずか10分間の作業でもエルゴノミックな環境は疲労軽減の効果を実感できた」、「特に椅子による疲労度合いの違いは顕著」などと、多くの被験者が訴えたというアンケート結果も印象的だった。

その後、先の登壇者3名と、アカデミーヒルズ六本木ライブラリーでアドバイザーを務める小林麻美氏をモデレータに、パネルディスカッションが行われた。エルゴノミクスを取り入れるなど仕事環境の整備という面で、日本はまだまだ欧米と比較して後れを取っている現状や、今後HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が身近になったら、ひょっとしたら椅子は必要なくなるかも、といった話題で盛り上がりを見せた。

また、12月20日より、「ハーマンミラー×マイクロソフト ハイパフォーマーのためのエルゴノミックソリューションキャンペーン」が実施される。これは、ハーマンミラーの「プレミアムエルゴノミックセット」(フローモニターアーム、ラップトップマウント、エンベロップデスク)購入者に先着50セットでマイクロソフトの「Sculpt Ergonomics Desktop」を、「コンフォートセット」(フローモニターアーム、ラップトップマウント)購入者に先着300セットで同じくマイクロソフトの「Sculpt Comfort Desktop」をプレゼントするというもの。

(渡部仁)