マイクロソフト(MS)が批判の多い人事評価制度「スタックランキング」の廃止に動きだした。管理職が一定の割合の部下を「落ちこぼれ」に分類しなければならないシステムだ。

 一方、ヤフーはこの評価方法で社員をふるい分け、600人程度をリストラする計画らしい。

 MSの最新版のスタックランキング制度では、管理職が部下に5段階の評価をつける(1が最高)。統計的に1から5までの比率を設定して配分する相対評価だ。つまり設定した比率を満たすため、それなりに頑張った部下にも最低の評価をつけなければならない場合が出てくる。

 MSはこのシステムを賞与の査定のほか、リストラにも使っていた。詳細は明らかではないが、2回連続で最低評価になると解雇されるようだ(ヤフーも同様の方式だろう)。

 MSの人事部門を率いるリサ・ブラメルは先週、社員宛てのメールで人事考課の新方針を明らかにした。個人の実績だけでなく、チーム全体への貢献を評価すること、管理職から部下に適切なフィードバックを与えるなど社員の能力の育成・開発にも力を入れること、賞与については一律の査定をやめ、各部門の管理職が予算の範囲内で部下たちに適切に配分できるようにすること......などだ。

 そもそもMSのスティーブ・バルマーCEOがスタックランキング制度を導入したのは、ゼネラル・エレクトリック(GE)で成功した制度を参考にしたからだ。この制度は大所帯になった企業のスリム化には有効な方式とされる。MSは既に目標レベルまで人員を削減できたが、ヤフーのマリッサ・メイヤーCEOはこれから本格的に大ナタを振るう構えのようだ。

 ヤフーの管理職はメディアに宛てた匿名のメールで「決められた比率に合わせるために、頑張っている部下を最低ランクにしなければならないのは、非常につらい」と訴えている。

 GEのジャック・ウェルチ前CEOは公正な論功行賞が可能な評価方法としてこのシステムを導入したが、強引な「足切り」になると批判する声も多い。人事コンサルタントのディック・グロウトによると、導入した企業も短期間で廃止するケースがほとんどとか。批判派に言わせれば、縁の下の力持ち的な社員が切り捨てられかねず、社員の士気を低下させる悪しき制度だ。

[2013.11.26号掲載]

トーマス・ハレック