長崎県民におなじみの旧グラバー住宅がもう一つあった
この旧グラバー住宅、長崎にしかないと思いきや、じつはもう一つあるのだ。場所はグラバーの故郷であるスコットランド・アバディーン。ここにはグラバー家のファミリーホームが立ち、「スコティッシュ・サムライ」の呼び名とともに彼の功績がたたえられている。スコットランドにあるグラバー住宅とは、一体どのようなところなのか。
今年で築150年を迎えた長崎の旧グラバー住宅は、グラバーの息子・倉場富三郎からグラバーと縁が深かった三菱重工に売却され、その後長崎市に寄贈されたが、アバディーンのファミリーホームも三菱重工が手に入れた後、三菱重工により現地の自然歴史保護協会グランピアン・ジャパン財団へ寄贈され、アバディーン市が管理している。
グラバーは21歳の時、英国から上海を経由して来日した。長く続いた鎖国がようやく解かれたこの時期、開港地では多くの外国人が貿易で一旗揚げようと活動していた。数ある外国人商人の中でも、なぜグラバーは日本に溶け込むことができたのか。
英BBCスコットランドは、グラバーを扱った番組内において、心遣いができ律儀で控えめだったグラバーの性格と日本人の性格が似ていたことが、グラバーが日本へ溶け込めた理由の一つではないかと言及している。加えて当時の日本は、文明開化のもと様々なものを英国から吸収しようとしていた。グラバーは正しい時に正しい場所にいた、時代が求めた男だったのだ。
貿易商以外にも、伊藤博文や井上馨らの英国留学を仲介するなど、グラバーは日本の近代化に貢献した。その考えは今もアバディーンに残っている。来期で17回になる「トーマス・ブレーク・グラバー・スカラシップ」は日本とのビジネスに興味ある大学生もしくは大学院生の、日本滞在援助を行う奨学金だ。同プログラムでは、夏期3週間を長崎でホームステイしながら、現地の学生やビジネスパーソンと交流する。
グラバーが開いた日本とスコットランドをつなぐ架け橋は、今も両国で新たな出会いと交流を育んでいる。
（加藤亨延）
