「右脳派」「左脳派」は都市伝説だった! 人に“利き脳”はない:研究結果

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“Silhouette Illusion” by Nobuyuki Kayahara

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あなたは自分が右脳人間か左脳人間かをご存じだろうか。判別テストをやったことのある方なら、上記のGIF動画を知っているかもしれない。このダンサーが時計回りにスピンして見えれば、ひらめきやフィーリングを重視するクリエイティヴな右脳人間。逆に反時計回りならば、事実や秩序を重んじる論理的な左脳人間という判別だ……。さて、あなたはどちらのタイプだっただろう? 



スピニング・ダンサーと呼ばれるこの動画は、実はシルエットの視覚的曖昧性を利用して作られた錯視動画であり、脳タイプ判別のためのものではない。しかし面白いことに、時計回りにしか見えない人もいれば、反時計回りにしか見えない人もいる。なかには、方向が常に変わって見える人もいるはずだ。この動画、いつしか右脳左脳判別に使用されるようになったようだが、果たして動画の見え方ひとつで、自分のおおまかな性格や“利き脳”を知ることなど可能なのだろうか?



従来の研究では、大半の人において言語処理は左脳、視覚空間の処理は右脳に側性化(つまり片半球)に特化したつながりがあることが明らかになっている。性別でみると男性は女性よりもわずかに片半球の機能的結合が多いことで知られ、利き手もある程度そのつながりに影響する。では右脳・左脳特有の結合におけるわずかな違いが、個人における性格、もとい“利き脳”を生み出すのだろうか? また子どもが成長するにつれ、この結合パターンに変化はみられるのだろうか? 





Left and right brain functions photo from Shutterstock


そこで検証に乗り出したのは、米ユタ大学のジェフ・アンダーソン博士。今回、ジャーナル誌『PLOS ONE』に掲載された論文では、国際神経画像データ共有イニシアティヴ(INDI)の機能的磁気共鳴映像法(fMRI)データを利用し、安静時の脳の機能的結合状態を7,266の関心領域(ROI)に分けて分析するという、興味深い調査が発表された。アンダーソン率いる研究者チームは、7歳から29歳までの被験者1,011人の安静時の脳の結合状態を分析。これにより右脳半球・左脳半球の側性化を、子どもから大人まで徹底的に調べ上げようという試みなのだ。



しかし残念ながら、研究チームが得た結果は、上記の“脳タイプ判別”に反するものだった。



「脳の機能が左右で分かれているのは紛れもない事実。言語はたいてい左脳で処理され、注意は右脳で処理されることが多い。だが脳のネットワークにおいて、どちらかの半球がより多く使用されるということはない」と、アンダーソン博士。



7,266におよぶ関心領域を綿密に調査したあとでも、個人の右脳または左脳ネットワークに、結合量や使用量の偏りはみられなかったそうだ。また、片半球の機能的結合は、子どもよりも大人の方がわずかに多いという結果になったが、これまでの研究に反し、男女の違いはみられなかった。



人間の性格は確かに脳で発生するが、それを右脳・左脳の機能に関連づけてシンプルに判断するには複雑すぎるということなのだろう。もしかすると性格というのは、脳のシグナルの強さや片半球の結合状態では決まらない可能性もある。われわれは論理的な人がクリエイティヴになれることを知っているし、その逆もまたしかり。スピニング・ダンサーがどう見えたにしろ、人は左右偏りなく、すべての脳を使っているのだ。






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