21世紀にこんな事件があるの？ 驚きの交通事故とは
新聞を開けば交通事故の類はよく見かける。ニュースでも頻繁に中継するし、特に目を見張る記事でもないだろう。ではこんな交通事故はどうだろうか。
「市場で買い物をした帰宅途中、突然ゾウが道路に飛び出し、踏みつけられて圧迫死」
東南アジアのベトナムではしばしばこのようなニュースが流れる。21世紀のグローバル社会において、何とも信じがたい記事だ。まだ、日本から遠く離れたアフリカで起きたニュースならば頷くことはできるだろう。しかし、日本から飛行機で僅か6時間程度の場所でこのような事件が起きているのだ。
ベトナムと言えば首都ハノイ、そして南部最大都市ホーチミンを真っ先に思い上げることだろう。近年は著しい発展を遂げ、大型ショッピングセンターや高級マンションも次々と建設されている。しかし、ちょっと郊外に目を向けると、そこはまだインフラ整備すらされていない、森林に覆われた地が広がっている事実もある。
特に中部地方はまだまだ開発が遅れており、山岳地帯では少数民族が下界と離れてひっそりと暮らしている。
話は変わるが、ベトナム中部のクアンビン省という田舎町では2003年に「フォンニャ国立公園」という場所が世界遺産に登録された。広大な敷地の中にはアジア最古、4億年以上前にできた岩山が並ぶ大地が広がり、付近にある鍾乳洞はまだ調査中にも関わらず、世界でもトップクラスの全長があると言われている。
この国立公園は未開拓地域であり、そこに棲息する動物といった類はいまだ調査中なのだ。専門家によると、数十種類の新種が発見される可能性もあるとのことだから驚きである。コンクリートジャングルと呼ばれて数十年が経つ日本ではまず考えられないことだろう。
そんな大自然の恵みを享受しているベトナムだからこそ、先に紹介した事件もたびたび発生するのだ。
ベトナム中部では野生のゾウがまだたくさん棲息している。普段遭遇することはないが、食料を探してか、時折ゾウが町に出てくることによって、このような被害者が出る。
また、中には「2年前に野生のゾウに夫を殺された女性が、復讐のためにそのゾウを見つけだして殺そうとした。が、返り討ちにあい女性は死亡」などといったニュースも聞いたことがある。ちなみにこれらの事件はベトナム人にとってはあまり珍しくなく、新聞の片隅に小さく掲載されるに留まっているのだから、これまた驚きだ。
まさかゾウと交通事故を起こすとは、嘘のような話ではあるが、当地の人々にとっては深刻な問題なのであろう。
また、余談だが世界に野生のトラは3200頭いると言われている。その内の30頭はベトナムに棲息している。近いうち、「会社からの帰宅途中、野生のトラに噛み殺されて、男性1人死亡」などという記事もお目にかかれるかもしれない。
（古川悠紀）
