小林さんお気に入りの1枚。新潟で発見した外蛇口。「凍結防止の器具がついていまして、このタイプの外蛇口をもっと見つけたいですね」 ※撮影:小林智也(外蛇口鑑賞家)

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普段はなにげなく見過ごしている物でも、一度気になると、気になってしょうがなくなることがある。そんな中、ある時期から「外にある蛇口」=「外蛇口」が気になり、写真を撮り続けている”外蛇口鑑賞家”がいる。一体、外蛇口の魅力とは何なのか?外蛇口鑑賞家の小林智也さんにお話を伺った。

――こういう質問をするのは私自身、生まれて初めてなので、敢えてお聞きしますが、元々、外にある蛇口がお好きだったんですか?
「いや、そもそも、外蛇口には全く興味がなくて、事の発端は3年前に参加した大山顕さん主宰の写真のワークショップです。街を歩きながら1つの題材だけを撮っていくというものだったんですが、浅草を歩いていて外にある蛇口がミョーに気になりまして…。それ以来、ずっと撮り続けてます」

――それで、外蛇口が好きになったんですね。
「いや、これもまた『好きか?』と聞かれると答えに迷うところでして、とにかく『気になる』んです。気になるから、探して撮り続けてるんです」

小林さん自身、「好きでもないのに気になるというのは、思春期の頃の恋愛のような甘酸っぱい感じになってしまうんだけど、こればかりは仕方がない」と分析する。

――何枚くらい撮ってますか?
「約3000枚です」

――3000枚!?
「まわりの知り合いも、私が外蛇口の写真を撮っていることを知っているので、例えば建設中のスカイツリーを見に行った時でさえ、『おい、あそこに、外蛇口があるぞ!』と教えてくれるほどです。本当にありがたいですね」

小林さんはおもいきって、「外蛇口」にまつわる冊子を制作してコミケ等で販売したところ、200部がほぼ完売。夏に向けて第2弾を作るかも…とのことだ。

●超不思議!「外蛇口センサー」

街を歩く度に、どこかに外蛇口がないかが気になるという小林さん。
「不思議なことに、歩いているうちに『このへんに外蛇口がありそうだな…』と、外蛇口の気配を感じられるようになりました。駐車場や、こぢんまりした居酒屋を見つけると、外蛇口が呼んでいるような気がしまして」

小林さんには、まさに「外蛇口センサー」がついているわけである。

●(おそらく)史上初!外蛇口の分類

ひと口に「外蛇口」といっても、6つのパターンに分類されるという。そこで、小林さんにそれぞれについて解説していただいた。(PCでご覧の方は、下の方の“関連写真”と照らし合わせながらお楽しみください)

【タイプその1】 よくいる子

小林さん「文字通り、よく見かける蛇口です。地面から出ている支柱に蛇口がつけられているもの。最初は見つける度に『おお!』と思っていたんですが、あまりにも見かけすぎるので、最近は驚かなくなりました。ただ、中には、見えないようなところに隠れてる外蛇口もありまして(写真参照)、これが見つけられるようになったら、外蛇口マスターですね」

【タイプその2】 やんちゃな子

小林さん「建物の壁から唐突に出ているタイプです。『外にありさえすれば、それでいいんだろ!!』な感じが伝わってきて、すごくやんちゃっぽいです」

――やんちゃだけど、かわいく見えますね。母性本能をくすぐるような外蛇口です。…いや、ちょっと言いすぎかもしれないですけど。
小林さん「……・。」

【タイプその3】 箱入り娘

小林さん「地面に蓋があって、その下に隠れているタイプです。いつもは、箱(蓋の下)に隠れてるけど、ふとした拍子にうっかり顔を出します。その奥ゆかしさにうっとりしますね」

小林さん曰く、ピッタリと蓋が閉まっていると、中に蛇口があるかどうかがわからないそうだ。蓋をあけると、蛇口ではなくて水道メーターだったりするので、油断はできないとのこと。


【タイプその4】 ガテン系

小林さん「工事現場でよく見かけるタイプです。『水道がなかったら困るから、ありあわせの部品を使ってつけといたんだよ!』という、やっつけ感満載の荒くれ者達です。水道管や蛇口など、ありあわせの部品をつなぎ合わせて水道を設置するものの、全ての工事が終わる頃にはひっそりと姿を消してしまうのも、ガテン系ならではですね」

確かに、工事が終わる頃にはなくなってしまうと思うと、はかない気がする。

【タイプその5】 ソトジャグチモドキ

小林さん「新種の生物みたいな名前になっちゃいましたが、蛇口部分がゴッソリと、なくなっているタイプです。いわゆる廃蛇口ですね。ただし、単になくなったものと、近くに新しい外蛇口を作ったため世代交代したものとがあります。支柱は残っているため、遠くから見ると外蛇口があるように見えますが、近づくと蛇口自体がないことに気づいてションボリします。まぁ、珍しいものなので、いいんですけど」

【タイプその6】 フリーダム!

小林さん「自由すぎてどのタイプにも入らないタイプです。(PCの方は)下の関連写真にある、斜めの配管もすごいことになってます。後ろの壁が緑で、シマシマの管が緑・赤・白というカラフルさです。なぜ、こんなにグニグニしてるのかも謎です」

●そんな、小林さんの悩み

すっかり外蛇口を楽しんでいる小林さんだが、ある悩みがあるという。
「公園には水飲み用の蛇口もありますが、あれを『外蛇口』の仲間に入れるかどうかで悩んでいます。どうも、あれだけは“何か”が違う気がして…」

果たして、小林さんの悩みに対して、結論が出る日はくるのだろうか?

●外蛇口へのこだわり

また、小林さんには外蛇口に対する、ちょっとしたこだわりがある。
「見た目がシンプルな外蛇口が良いですね。たまに、上の部分を鳥の形にしているものがありますが、余計なことはしないでほしいっていう思いがあります(笑)」
外蛇口に余計な装飾をしている外蛇口管理者は、今すぐ、元に戻してあげてください。

さて、ここまでくると、読んでる方の頭の中に一つの疑問が湧き上がることだろう。その疑問とは…
「果たして、小林さんは、普段は何をされているのか?」

実は、普段は通信関係のお仕事をされている。いわば、お仕事でデータをつないでいる小林さんが、水をつないでいる外蛇口に興味をもったというわけだ。(←ちょっと強引でしたね)

外蛇口といえば、存在が当たり前すぎて目立たないが、我々の生活には欠かせない重要な物だ。中には建物の陰に隠れて、全く光を浴びない外蛇口もある。小林さんはそんな外蛇口を見つけては、今日もスポットを当てているのだ。外蛇口も、さぞかし喜んでいることであろう。(取材・文/やきそばかおる)


●外蛇口ドットコム
http://sotojaguchi.seesaa.net/