ロエベ PR&Advertisingアドバイザー 平塚ユカリ氏

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■手柄をあげても嫉妬されないようにする

【TECHNIQUE】自分の仕事と役割を社内に知ってもらう

嫉妬は、お互いの業務への理解が浅く各人同士の仕事の関連性がよく見えないときに、生まれるのではないでしょうか。

私は広報業務を担当しています。仕事を円滑に進めるために、本社の他部門、各店舗など社内の協力が欠かせません。しかし、同じ会社だから協力が得られて当然と考えてはいけません。

例えば雑誌でロエベの商品が紹介されるとき、広報は店舗から商品を借りて撮影することがあります。しかし、お店にとっては商品が傷ついてしまう恐れもあり必ずしも歓迎することではありません。

商品はお店にとって何より大切。まず私たち広報が、それを深く認識することが重要です。そのうえで商品を媒介に掲載することで来客へつなげたい、と相談し理解を得ます。私たちにも売り上げアップのお手伝いをさせてください、というスタンスです。このように説明をすると、ありがたいことに、お店のスタッフも私たちの役割を理解し協力してくれます。

チームとして互いの役割を理解し、成功を喜び合えれば、手柄も皆のものとなり嫉妬は生まれないと思います。そのためにも日頃から広報部門以外の人々に自分たちの立場や業務内容を知ってもらう、いわば社内でのPRが大切になります。

以前私は、同じ会社なのに自分と他のメンバーの考えが一致しないことに悩むことがありました。しかし「他人と自分は違って当たり前」という家族の一言で「しょうがないんだ」と吹っ切れました。前向きに“しょうがない”と思うことで気が楽になりました。同じ会社でも担当部署が違えば考え方も違って当然です。

例えば、自社製品をPRの意味で個人的に使う場合、広報の私は相手の印象に残るよう変わったデザインのアイテムを持ち歩きますが、MD(買い付け担当)から、目立つ商品を持つより売れ筋のシンプルなものを持ち歩いてPRしてほしいと言われたことがありました。

お互いがプロフェッショナルであればあるほど自分の役割に忠実になり違う考え方になるもの。違いを補う工夫として具体的に効果を数字で表現することが大切と感じています。数字は他部門との共通指標の役割を果たしてくれるからです。

広報も営業職と同様、雑誌の掲載率など達成すべき数字を課せられていますが、その事実はあまり知られていません。ですから私は社内の会議などで広報部門の立場や仕事を数字とともに伝え、役割を社内の人に知ってもらうよう努めました。

言葉を重ねて理解し合う努力を尽くせばプロとして手柄を喜び合える、嫉妬と無縁の雰囲気が育まれると信じています。

■幹部と軽口を言える関係になる

【TECHNIQUE】仕事を切り口に積極的に話しかけよ

幹部と話すとなると、どうしても気構えてしまうもの。趣味もわからないし、話すネタがないと思うかもしれません。

しかし、ここは会社の中。幹部が社員に何を求め期待しているかといえば、趣味の話ではなく仕事の話です。

軽口を言うといっても、仕事をしっかりしていることが大前提です。そうすれば会社の一員として幹部に話すネタが生まれてくるはずです。そこから二次的に趣味など楽しい話にも広がり、軽口を言える間柄につながるのだと思います。

私もあまり親しくない目上の方とお話しするのは得意ではありません。とはいえ、待ちの姿勢で話しかけられるのを期待していてはいけないと思っています。

キャリアの浅い20代なら自然に話す機会を待っていてもいいかもしれませんが、キャリアを重ねた30代以上であれば、自分に厳しくなるべきでしょう。

以前、親しくない人と話すのが苦手と、ある方に相談すると「挨拶をされて嫌な人はいない。話しやすい人とばかり話していたら、いつまでも今の自分から変われないよ」とアドバイスされました。

確かにそのとおりで、たくさん話をしているようでも、実は限られた人ばかり。特定の人との関係が深まるばかりで、人間関係は広がっていませんでした。

人間関係を広げなくても、深めているからいいと開き直ってみたりもしました。しかし、それでは成長できないというアドバイスをきっかけに、“広く”と“深く”の両立は難しいのだから、今は広げてみようと考えを切り替えました。

人と会えば言葉を交わすのは自然なことです。相手の人となりがわかるまでは多少無理してでも話をしてみるべきです。

ときにはこちらのやりすぎで相手を困らせることもあるかもしれません。一期一会の気持ちが強すぎて、ここぞとばかりにがんばろうとするから、相手が重く感じてしまうケースです。最近、人間関係は一期一会の気持ちでがんばりすぎるよりは、少しずつ築き上げていくほうがいい、と実感することが多くなりました。

まずは仕事を話題に思い切って話しかける。そこから軽口を言える間柄に発展させていけばいいのです。

■嫌がる週末出勤を頼む

【TECHNIQUE】部下の働き方を把握し理由を説明する

部下がネガティブに受け取りそうな頼みごとをする場面はどうしても避けられません。週末出勤もそのひとつでしょう。

依頼のポイントは明確な説明です。ただ命令するのではなく、なぜ必要なのか、そして週末出勤をすると本人にどうプラスになるのか、伝えるべきでしょう。

広報部門も楽しい仕事ばかりではありません。例えば広報には大量の雑誌に目を通し自社商品の露出をチェックする業務があります。どこに商品が掲載されているかわからないまま、分厚い何冊もの雑誌のページを繰っていく地道な作業。この大変な作業をチームのメンバーに頼んだことがあります。

ここで自分が彼らを労う気持ちは自然に伝わるなどと思い込んではいけません。はっきり思いを言葉にすることが重要です。「大変な仕事だと思うんだけど」と切り出すだけで、「大変なことをわかっているのだな」と印象は違ってくる。そのうえで理由やメリットを説明します。

この作業をすることで、どのようなスキルが身につき、どう成長できるのかを説明すれば、彼らのやる気も違ってきます。実際、大量の雑誌のページを自らの手で繰ることで、雑誌の特性もわかるようになりますし、出版社の方と話すときも話に深みが出るようになるのです。

将来、成長した姿を上司として期待している点を強調する。そして成果が出て彼らの能力が伸びたら、成長を認めて褒めることが重要です。やってよかった、と思ってくれるかもしれません。

ところで、本人にとってのプラスを説明するといっても、それは実は非常に難しいことです。よく「相手の立場になって考える」と言いますが、本当にそんなことができるのでしょうか。

働き方は十人十色。キャリア重視派も家庭優先派もいます。自分がキャリアアップに価値を置いているからといって「この苦しい作業はキャリアアップにつながるから君にプラスになる」と説明しても、空回りするだけです。

「相手の立場になって考える」のはとても難しいことだと思います。ならば、無理に相手の立場になろうとせず、あくまで上司としての立場で、部下の考え方を徹底的に聞き出すことが大切です。

彼らの働き方を理解していれば、仕事の割り振りもスムーズに進みます。働き方に対する彼らの意識や希望に普段から耳を傾けることが、歓迎されない週末出勤をスムーズに頼む秘訣だと思います。

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ロエベ PR&Advertisingアドバイザー 平塚ユカリ
フェリス女学院大学卒業。総合商社勤務後、外資系化粧品メーカー、時計・宝飾ブランドのAD/PRなどを経て現職。

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(ロエベ PR&Advertisingアドバイザー 平塚ユカリ 構成=斎藤栄一郎 撮影=石橋素幸)