人材多様化こそ創造性を生む - アクサ生命の「ダイバーシティ」取組みを聞く

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グローバル化が進む中、企業の中でも、国籍や人種の枠を超えた人材の多様化が進んでいる。

今回は、そうした人材の多様化を意味する「ダイバーシティ」に積極的に取り組んでいるアクサ生命の執行役兼人事部門長の岩崎敏信氏に、ダイバーシティの意義や取組み状況についてインタビューした。

――あらためて「ダイバーシティ」の意味するところを教えていただけますでしょうか?性別、国籍、年齢、障害など、変えようのない個人の属性に対しての差別や偏見をなくして、あくまで本人の能力などをベースに、その能力をフルに発揮してもらえる組織を構築することであるととらえています。

例えば、新卒採用か中途採用かを分けて考えることも、差別や偏見の一種だといえます。

なぜなら、新卒か中途採用かは、入社した時点で決まっており、本人にとってはどうしようもないことだからです。

そういった考えを全部なくして、個々人の属性にとらわれずに能力にフォーカスして対応していくことが、「ダイバーシティ」といえるのではないでしょうか。

――なぜ「ダイバーシティ」が重要視されるようになったのでしょうか?かつてIBMが経営不振になった時に、異業種のRJRナビスコからルイス・ガースナーという人が経営者となり、「ダイバーシティ」を推進したのが有名です。

当時のIBMの社員は全世界に数十万人もいました。

ガースナー氏は、属性にとらわれない人種や国籍を超えて人材を登用する「ダイバーシティ」を推進することで急激に業績を回復させ、それが一つの成功事例となって、「ダイバーシティ」という考えが世界に知られるきっかけとなったといえます。

それが2000年前後のことで、米国の場合は、アファーマティブ・アクションなどの動きもあり、性別や人種に応じて、それぞれ一定割合を採用しなければならないということになりました。

――なるほど。

米国から「ダイバーシティ」が広がっていったのですね。

日本でも、米国の影響を受けて「ダイバーシティ」に関し、女性管理職を一定割合以上にするといった、数値目標を設定する企業も一般的になりました。

ただ、欧州では、数値目標を掲げるといったことはあまりなかったのです。

それは、あくまで、属性にとらわれずに能力をみていくという考えと、性別や人種などの属性ごとに一定割合以上にするといった考えが、必ずしも同一ではないからです。

――米国流の属性比率を重視する考えと、「ダイバーシティ」のとらえかたが少し違うというわけですね。

では、アクサグループでは、いつごろから「ダイバーシティ」に取り組んできたのでしょうか?2006年です。

株主には米国の資本家もいるわけですから、経営層がフランス人の男性ばかりというのはよくないなど、株主からの要望もありました。

また、欧州の中でも、北欧の国々は閣僚の一定割合を女性にするなどの動きもあり、アクサグループとしてもダイバーシティに取り組まないわけにはいかないと。

ただし、先ほども申し上げましたが、グループとしては、ある属性ごとに一定割合以上にしなさいということは掲げず、あくまで、属性にとらわれずに能力を見ていくという基本理念に沿った方針をとってきました。

――なるほど。

数値目標より、理念を重視しているのですね。

では、日本のアクサ生命においてはどうでしょうか?これまでは世界のアクサグループ全体について話をしてきました。

アクサグループはダイバーシティに関する枠組みを世界のグループ各社に提案し、それを受けて、各拠点で実践するというやり方をとっています。

トップダウンではなく、グループ全体でベストプラクティスを共有するとか、そういうやり方です。